■もしドラ 開発リーダ編 1 〜マネジメントに出会う〜 (No.221)
もしドラの高校野球の女子マネージャに置き換えて,開発リーダがドラッカーの『マネジメント』を読んだら,として考えてみる。
開発リーダの成り立て,いきなりリーダになるよう任命を受けたがどのように振る舞って良いのか,判っていない状態であると想定する。人気のあった書籍『もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が気になっていたが,今更読むのも何となく気恥ずかしく,原本であるドラッカーの『エッセンシャル版「マネジメント」 基本と原則』を購入して読んだと仮定して,開発リーダとしての振る舞いをどうすべきかを考えることにする。
この本は,2001年12月に初版が発行されている。もともとは,ドラッカーの大部作『マネジメント−−課題・責任・実践』から最も重要な部分を抜粋したもので,21世紀に入り,日本が抱えている課題を解決するにもこの「マネジメント」の考え方が重要であり,ドラッカーとしては,40〜50年前に出た革新的で創造的な勇気あるリーダたちに匹敵する人たちを再び輩出していくことを祈りながら,本書が役立つよう望んでいると記されている。いわゆる組織責任者,即ち,部下を持って仕事をする人にとっては,最低限知っておくべきことが積み込まれている本である。私が持っているのは,2002年2月発行の第5版である。
一番良い方法は,開発リーダなど組織責任者になったのならば,この『エッセンシャル版「マネジメント」 基本と原則』は,B5版の約300頁の本であるので,一読して貰うのが良いのであることは言うまでもない。だが,なかなか忙しい,じっくり読書をしている時間がなかなか無い,或いは,簡単な小説なら読むが小難しい経営本は苦手だ,と云う若いリーダも多いように見受けるので,エッセンシャル版の更にそのエキスの部分を,高校野球の女子マネージャの小説のように,上手く表現はできないかも知れないが,小説では物足りない部分を上手く補って,経営的感覚の少しでも理解して貰えば幸いであると思って,書いてみることにする。
マネジメントに出会う
会社組織で仕事をすると云うことは,個人で仕事をするのと違って,自分一人のスキルが如何に高くても,数人のチームで仕事をするのと比較すると,明らかにチームで仕事をする方が優位である。そのチームとして仕事をする「基本と原則」がこの「マネジメント」に書かれている。19世紀から20世紀に掛けて,世界で著名な企業が多く作られてきているが,一世を風靡しながらも衰退していった企業が多い。その時代には,まだマネジメントと云う言葉すらなく,ワンマンなリーダの下で経営がなされていた。そして,組織的な仕事の進め方であるマネジメントを重要視した考えもなかったのである。そこで会社組織の仕事のやり方(組織運営)を体系的に,まとめたのがドラッカーである。
マネジメントと云うと日本語では「管理」と訳されることがあるが,「管理」即ち,コントロールする意味とは違う。ドラッカーの云うマネジメントは,自分たちの組織の仕事を定義することから問われており,仕事そのものが社会にどのように役立とうとしているのか,また,自分たちの「顧客」とは,誰なのかを問い,その顧客にどのような製品やサービスを提供しようとしているのか,その効用はどのようなものか,それを突き詰めることに始まる。
即ち,組織で仕事をする意義を問うことは,会社そのもののミッション,目指す姿を尋ねていることになる,したがって,自分の所属している会社組織の目指す姿が,仕事を通じて明確になっていて,それに向かって努力・実行することがマネジメントの基本になっているのである。ところが,我々の日常の仕事は,なかなかそうはなっていない。目先の,今日,明日の問題点や課題の対応に追われて,日々過ごしているのが通常で,特にサラリーマンでは,上司の指示命令事項に沿って仕事をしなければならないと云った毎日である。マネジメントなんて云うものは,上の偉い人が考えておれば良いもので,組織責任者と云え,中間管理層ではそれほど縁のあるものではない,と感じている人が多い。
しかし,この本の中を通して語られている内容は,上の経営層の話ではなく,組織を預かっている全管理者層に呼びかけているものであり,少なくとも部下を持った人は,マネジメントとは何かを,高校野球の女子マネージャでさえ,考えることによって,大きな成果を得ているのだから,まして組織責任者と任命された以上,組織としての成果を大きく上げる意味でも,真剣に考えたいものである。
最近は,課長,係長と云った組織責任者の肩書きよりも,リーダ,チームリーダ,グループマネジャなどと云った呼び名が多い。本来,リーダシップとマネジメントは意味合いが違うが,同じような意味で扱われていることが多い。どちらかと云えば,リーダは若手で,マネジャはもう一段上の職が多い。
リーダはそもそも,その仕事のエキスパートで,みんなを率先して率いていく役割を指すものだが,若い技術者が管理監督の教育もなしに,いきなりリーダにされてしまっていることをよく耳にする。しかし,リーダとして部下を率いるのだから,マネジメント(組織運営)は必須要件であるはずである。それなのに,マネジメントのマの字も知らずに,リーダの任を果たそうとしている人が如何に多いことか?これでは,競争に勝てる筈がない。否,競争している相手も同じなので大差ないと云ったところなのか?
マネジメントの意味は奥深いものがある
[Reported by H.Nishimura 2011.05.23]
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