■なぜ,考えることができないのか?(思考力不全) 1 (No.189)
以前に,なぜ行動できないのか(行動力不全)について,いろいろな状況での説明をしたが(No.152〜No.157),今回は,それ以前の状態に近い,行動する前の「考えること」についての状況を見てみよう。
先ず最初に,このようなことはあなたの周囲で起こっていませんか?
@一生懸命頑張っているが,成果が上がらない。
Aすべてが後手に廻ってしまっている。
B業績が上がらず,将来が不安で仕方がない。
C方針,方向付けがよく変わる。
D社員のやる気が上がらない。(モチベーションが低下している)多分,全てではなくとも,一つ二つは自分を含めて身の回りで起こっていると感じている方が多いのではないかと想像しています。
そこで,こうしたことがなぜ起こっているのだろうと考えて見ると,行き着くところに「思考力不全」(考えることができていない状況)が浮かび上がってくる。これは所謂,十分に考えずに行動しようとしている,或いは何も考えずただ黙々と仕事に励んでいる状況であり,こうしたことは,20年以上昔の高度成長期ではそれでもみんなが幸せを感じることができていた。ところが,昨今の低成長時代では,こうしたことでは,先行きが危ういことが起こることも予測される事態になってきている。そこで,どんな問題点があるのかを列挙してみることにする。
ここでも,先に述べた「行動力不全」同様,開発工程に於ける順序で述べても良いが,技術部門だけでなく,会社全体で起こっている,或いは組織で起こっているなどの状態もあり,ここでは,「会社の文化・風土」「組織・チーム」そして「個人」と,このような分類で,各々で起こっている状況を述べてみることにする。
【会社の文化・風土・習慣】
1.幹部・上司が考えて行動しようとしていない
@上司の行動がメンバーの行動を左右する
会社幹部をはじめ,直属の上司が余り考えずに行動するタイプの人だと,それが会社全体,或いは組織に伝わり,メンバーもそれほど考えずに済ませてしまうことが多くなる。特に,高度成長期の上司には,皆に沿って進むことしかできないタイプが残っている。残念ながら,これは古い,大きな組織には未だに厳然と残っており,横並び意識(競合がやろうとしていることを非常に気にしながら,同じようなことをしようとしている)が強いためである。そうして今の地位を築いてきたのだから仕方がないとも言える。
古いから悪い,若いから良いと云うことではなく,自分の考えを十分練った上で行動しようとしている上司は意外と少ないのが実態である。その大きな理由の一つは,変化・流行に敏感で,それに追随することで満足(?),或いは十分だと思っていたり,それだけで精一杯と云う幹部・上司も少なくはない。もちろん,変化のスピードの速さもそれに輪を掛けている。しかし,必要なことは,変化が激しい,スピードが速いからこそ,よく考えて行動しなければ,間違いを起こし,大きくは会社存亡の危機にも瀕することが起こるのである。
こうした環境に居ると,人は安きに流れ,考えなくて済ませてしまおうとしがちで,こうした幹部・上司の下では,考えようとする人も育たないことになってしまう。
A方向を良く見定めて行動に移すのが上司の役割
自分たちの進むべき方向を指し示すのは上司の役割であるが,それができるには洞察力を必要とされる。しかし,その洞察力を十分持ち合わせない上司が多い。特に,昨今のように低成長で,先行きが不透明な時代には方向性を見定めるのは非常に大切なことである。行き当たりばったりのやり方では時代のスピードにも乗り遅れることになる。
先行きを推し量るには,必要な情報の入手とそれを分析して判断することが求められる。特に,昨今のように変化が激しい状況では,なかなか先読みすることがベテランでも難しい状況である。それでも普段から考え抜く訓練を積んでいると良い仮説が立てられたり,或いは必要としている情報が入ってくる場合がある。考えていないとそうしたこともできないし,情報も入ってこないし,或いは見過ごしてしまうことになる。
行き先が明確になることは,メンバーに安心感を与える。また,常日頃からしっかりした判断を下している上司の下では,メンバー自身も不安感に襲われることなく,ゆったりとした気持ちで自ずと先読みをしようと考える習慣が付いてくるものである。そうした風土の下では,先読みして洞察力を働かすことがどれだけ自分たちを楽にする,或いは有利に仕事ができるかを心得ている。
(続く)
思考力不全に陥っていないか,じっくり反省してみよう!!
[Reported by H.Nishimura 2010.10.04]
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