■スピード感 (No.122)

最近あった話で,なんとなくまどろっこしい感じをうけたのでその話題について考えてみる。

プロジェクトを進める中でなかなか上手く行かないことも多い。ああすれば良い,こうすれば良いとみんなの意見を取り入れながら改善を図っていく。確かに,見ていると徐々に良くなっていることは誰の目でも明らかである。しかし,プロジェクトにとって重要なことは,徐々に良くなっていくだけだはなく,良くなっていくスピードである。徐々に徐々にと云っていて,プロジェクトが終わる頃になってやっと良くなった,と云うのでは困る。つまり,改善されていくスピードが,求められている目標必達に十分挽回可能で,全体として上手く行くものなのかどうかの判断が必要である。これは改善や改革のプロジェクトなどでも同じことが云え,ここで云うスピード感は非常に大切である。

仕事内容でも同じで,例えば上司,或いは上長から仕事内容の改善要求が出たとすると,それをいつまでに改善するかが重要であり,改善方向が見えているから良し,とするのでは甘い。改善傾向が無いのは論外だが,改善傾向が見えてもそのスピードがノロノロであれば改善しているとは云えない場合がある。つまり,目標に対してそれが合致したスピードで改善がなされているかどうかが問題なのである。そもそも仕事とはそう云うもので,いつまでに達成するか否かで,遅れてでもよいのできっちりやって欲しいなどと云う悠長なものはない。Q(品質),C(コスト),D(納期)のバランスが取れていなくてはならない。

往々にして問題がある場合は,元々能力以上の要求を上司や,上長がしていたり,伸びることを期待して能力以上の仕事を課していたりする。そうすると,能力以上なので仕事に遅れが出,さらにはそれに混乱が生じ,自分自身で収拾がつかない場合がある。こうしたとき,自分ひとりで悩むのでなく,先輩や上司に相談を持ちかけたり,ちょっとしたアドバイスを貰うことで改善できる場合がある。自分だけで悩みを抱え込んでいると,そのヒントがなかなか思いつかないのである。まして混乱してパニック状態だとどうしようもない。急がば廻れと云われるように,一度沈着冷静になって,何を為すべきか,止まって考え行動してみることも大切なことである。

仕事が飽和状態で溢れているとついつい緊急事態の仕事を優先してしまい重要な仕事が疎かになる。緊急の仕事ばかりやっていると,スピード一杯に自分は仕事をしているようでも,実は後始末ばかりで何一つ前向きの仕事ができていないことがある。即ち,やるべきことがやるべきタイミングでできていないことになる。これも目標(成果)からみると,全くスピード感を見失ったやり方である。スピード感とは,全体から見てスムーズに目標にどんどん迫っている感じである。一生懸命頑張っているだけでは決してスピード感は出てこない。是非,自分の仕事でスピード感を出してやって欲しいものである。

スピード感はある種,時間軸の話であり,以前時間軸の大切さ(No.105No.106)を述べた。この話にも通じる内容である。時間軸を意識することは自ずとスピードが必要になる。猛スピードである必要は全く無いが,時間軸に沿ったスピードが必要である。時間軸をきっちりもって仕事をしている人は,大略スピード感ある仕事をしていることが多い。いつでも良い,と云った仕事はあまり重要な仕事ではないことが多い。期限,目標が設定され,それが仕事に重要な影響を及ぼす,そうした仕事を知恵を出し,勇気をもって頑張るところに人の成長がある。

昨今の若い人にどうもスピード感が無いのが気にかかるところである。若いときから時間軸をきっちり管理することはなかなか無理にしても,自分が思い込んだことにはがむしゃらに頑張って何とかしようと云う迫力や気力も見られない。狙った獲物はなりふり構わず猪突猛進する,目標目指してまっしぐらに頑張る,こうした若者がだんだん見られなくなっている。何かどこか醒めた目で物事をみることが当たり前になっているように見える。また,それが大人びた良いことであると思っているふしがある。昔は,情熱がほとばしるように頑張る若者がもっと居たものである。それに対して昨今は,誰かに指示されないと動かない,言われたことはそつが無くこなすが,自ら勧んでやろうとはしない。答えがでる仕事には答えを求めて検討することはできても,答えの無いような,或いは正しい答えがどれだか判らないような仕事はなかなかできない。しかし,現実の仕事の殆どは正しい答えなどなく,自らが良し悪しを判断しながら,前に進んで行く仕事が多い。そうした仕事に積極果敢にスピード感もってやれ,と云うのは年寄りの嘆きなのだろうか?スピード感は非常に大切なキーワードなのだが・・

もっとスピード感をもって仕事をしよう

ときにはがむしゃらに頑張ることも大切なことである

 

[Reported by H.Nishimura 2009.06.15]


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