■時間軸の大切さ 1 (No.105)
昨今,若い人と一緒に仕事をしている中で,ある限られた時間(期間)内に仕事を終えなければならないのに,時間をオーバーしてしまう,つまり期限切れで終了せざるを得ない出来事に出合っている。やっている本人は決して怠けている訳でもなく,一生懸命やっているが,(気がつくと)結果的には時間切れの事態になってしまっている。このことに関して考察してみる。
若い人がみんなこのような事態に陥っているかと云えば,必ずしもそうではない。特に,時間の配分が良く判っていない人において,発生している現象である。その理由には,仕事内容が本人にとって難易度が高く,時間が読めない場合,時間は読めているのに,ズルズル伸びて時間が掛かってしまう場合,或いは,自分で抱え込んでしまって進めているつもりが,間違った方向へ行っていて,修正に時間が掛かる場合など,様々である。
しかし,仕事はある限られた時間(期間)でできてこそ,仕事をしたことになり,最悪の場合は,契約不履行になってやったことがすべて無駄になる場合だってありうるのである。こうした,仕事と云うものの持つ意味,或いは組織としての役割など,十分理解しないまま仕事に就いている人も多いようである。社会人になった初めに,こうしたことは社会人教育としてなされるのが一般的だが,そうした基本教育を疎かにしている会社も多いのが昨今の実態のようである。見よう見まねで身体で覚えろ,といった具合である。
仕事はルーチンワークのようなある一定の決められたことをやることによって完了するものもあれば,そうではなく一定の決められたフォーマットや,ルールはあるものの本人の裁量でどのようにでもなるものがあるが,後者の場合,自分の裁量であっても,難易度の高いものから低いものまで様々である。また,難易度の低い仕事ばかりしているようでは,成長が見込めないため,上司も仕事を与えるときにある程度難しい仕事もさせるようにする場合が多い。したがって,必ずしも全ての仕事が,時間が読めて,確実に時間(期限)内にできるものばかりではない。
それでは,時間(期間)が読めない仕事をどのように時間配分しながら上手く完遂させるか,それができるかできないかが仕事の出来る人になるか,そうでないかの分かれ目になる。仕事は,一人でやるものもあれば仲間と一緒にやらないとできないものもあるが,いずれにせよ自分に与えられた仕事の範囲は決められることになる。この仕事に範囲をどのようにしてやり遂げるかである。通常一般には,仕事内容を細分化して,これをいつまでに,ここまでやり終える期限をいつに,と予測しながら計画を立てる。計画もしないでただひたすらやるだけと云う人もいるが,得てしてこうした人のやり方は上手く行くときもあるが,往々にして時間(期間)切れになる場合が多い。
つまり,仕事を細分化して,途中で進み具合のチェックを入れることが重要なのである。思い通りに進んでいる場合はよいが,遅れている場合は挽回できるかどうかの検討が必要である。或いは,途中経過の内容を上司に報告してチェックしてもらうことも重要である。自分では思い込みがある場合があり,上司など他人のチェックではそうしたことを防止できる。或いは,上司や先輩からアドバイスを受けることもできる。確実に一人でできる自信のある場合は別だが,普通は中間チェックを上司にしてもらうのが良い。しかし,現実は上司も忙しくしていて,十分チェックしてもらえないことも多い。そうした場合でも,上司でなくても相談できる先輩,仲間が居ると随分違うのである。
また,人によっては性格的に自分でまとめきってからでないと,他人に見せたくない,と云う人も居る。途中の中途半端な状態を見せたくないとか,まとまっていない状態で見せるのは恥ずかしいとか,中途半端だといろいろ指摘ばかりされて余計に仕事が増えると思っているとか,その人の性格や経験を基にいろいろな思いが交錯する。しかし,通常は最後まで一人でやってから報告するのでは,途中でチェックして貰った場合に比べ,修正などに必要とする時間は余計にかかることが多い。つまり,その人にとって安易な仕事であれば,それでも時間差は殆どないが,難しい仕事ほど,その時間差は大きい。しかし,そのことを知らずに,以前は大丈夫だったからと安易に判断すると大きな失敗をしてしまう。
一度失敗をすると人間は学習するので,同じ失敗は繰り返さないことが多い。常に,事前要望策が気になって,早め早めにチェックをしてもらうようになったり,自分でマイルストーンを定め,それ以上遅れると危険信号なので,その前に上司や先輩に相談するなど工夫を凝らすようになる。これが普通一般の人である。
ところが,同じ失敗を繰り返す人も中にはいる。いわゆる時間軸が欠落している人である。こうした人は,自分の失敗の原因が良く判っていない場合が多い。今度は出来るはずだ,と意欲だけはあるが,なかなか思い通りにならず,殆ど同じような失敗,つまり時間(期限)切れで中途半端な状態で仕事を終えざるを得ないことが起こる。仕事の配分が良く判っていないし,先が読めていない人である。
仕事と云うものは,必ずしも全く同じことが繰り返されるのではなく,そのとき,その状態で起こることも違う。そうした変化を読みながら,時間軸をもって是正しながらやり遂げるのが仕事である。ときには自分の仕事の前に完了していないとこちらの仕事が進まないようなこともある。前の人の責任だから自分は責任がない,と云う訳にはいかないのが仕事である。自分の仕事が予定通り行くように,前の人の仕事をコントロールするのも,或いはやり方を変えるように提言するのも自分の仕事なのである。時間軸の欠落している人はこうした機転も効かない。(続く)
仕事の中で時間軸を持って当たることは,非常に重要なことである。
[Reported by H.Nishimura 2009.02.16]
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