■課題解決法10 戦略的思考法で解決を図る
課題解決の方法として,最後に戦略的思考法を紹介する。課題解決と戦略的思考とは,なかなか直接的には結びつかない。課題解決と云えば実務者がやることであり,戦略的思考と云えば経営者や企画者がやることと捉えがちである。ここでは,課題解決に戦略的思考がどのように役立つかを説明しよう。
大局的見地から(全体最適)
戦略的思考と云うと難しそうに聞こえるが,大きくどっしりと構えて解決を図ろうとするものである。課題を解決すると云うとすぐできる目先のことに視線が行くが,できることに直ぐ手を付けるのではなく,自分のできる範囲を狭めず,全体を見て一番良い解決策は何かを考え,それに則って解決を図って行く方法である。
自分のできることからやろうとすると狭い範囲でやりやすいが部分最適になり,ときには全体最適から外れることもある。一生懸命頑張って解決ができたと思っても,全体から見れば解決に繋がっていないことがある。だから,解決策を実行する前に一度じっくり見定め,全体最適になっているかどうかよく把握してから行動すべきである。
課題の抽出で一段上の立場で考えてみると述べ,その重要性を説いたが,課題を抽出するだけでなく,解決のときも一段上の立場で判断し行動することが,視野を広めた大局的見地からの行動となり効果的なのである。すぐに誰もができることではないが,中堅クラス以上になれば,必ずこうした大きな視野で見ることを心掛けて欲しい。
ストーリーを考える
問題が起こったときは素早く対処することが求められるが,課題は出会い頭に解決するものではなく,じっくり考えて解決すれば十分なものが多い。つまり,課題をどのような方法で,いつまでに,誰が実施するか検討した上で,最善策を行動に移せばよい。それには,一連のストーリーに沿った流れがある。
解決の筋道を考えると云うことは,冷静に物事を見ている証拠であり,理に適った論理的に矛盾の無いように進めることができる。それは最善かどうかはやってみないと判らない部分はあるが,少なくともベターなやり方であることには違いない。問題が起こったときのように素早く対処することは無いとは言ったが,解決のスピードは必要である。最善策をと頭で考えてばかりでなかなか行動に移さないのは良くない。ベターと思った施策は直ぐに実行すべきである。
ストーリーができると云うことは,先の見通しも十分考慮したものでしか成り立たない。つまり,課題解決をその場のやりくりではなく,ゴールに向かった筋道の出来上がった中での行動であり,大きくブレることがない。そこには,着実な一歩一歩が刻まれ,その積み重ねがゴールに到着する。それがストーリーなのである。
また,ストーリー性があることは,小手先の解決より抜本的解決を考えていることである。その場凌ぎでは無いにしても,解決するだけで済ませようとしていると,もぐら叩きのように次々違った課題が持ち上がり収拾が付かない事態になることもある。そうならないためにも,じっくりと考え抜本的な解決策になるような検討をすることが重要である。戦略的とはこうした抜本的なことをきっちりできるようにする考え方である。
考え抜く,そして行動へ
戦略的思考と云うのは,難しく考えることではない。課題に対して,一側面からだけでなく,いろいろな角度から検討して解決に当たることで,最も効果的,確実性の高い,合理的な解決策を選ぶことである。そのためには,思いついた解決策でなく,先ずはいろいろ考え抜くことで,それらを整理してまとめ,行動に移すことである。
この考えを整理し,まとめる段階の思考は,当に戦略的に思考することであり,こうした練り上がった考えを繰り返すことで,それが益々磨かれ,素晴らしい解決策へと繋がって行くのである。それには,上述したように,大局的見地から良く観察し,ストーリー性のある流れができるようになって行くのである。
戦略的に考えられるようになれば一人前である
後は行動が伴えばよい
[Reported by H.Nishimura 2013.04.01]
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