■抽出法5 一段上の立場で考えてみる
冗談半分に,社長になったつもりで考えて見ろ!などと云われたことがある人も居るだろう。一理ある説得方法である。
見えないものが見えてくる
「もう少し視野を広げて物事を見ろ!」と言われたことのある人も多いことだろう。我々はつい,自分の範囲でしかものを見ていないことが多い。それが当たり前で,毎日の生活に支障はない。深く考えることもない。しかし,課題を見つけるときには,普段見ているものだけでなく,見えないものを見ることが必要になってくる。
そうしたとき,よく言われるのが,「一段上の立場に立って考えて見ろ!」である。通常我々が目にしている光景でも,高台に上がると普段見ている光景とは違ったものが見える。同じように,物事も一段上の立場に立つと見えるものが違ってくる。つまり,遠くまで見える(即ち,視野が拡大する)ことになる。上司が的確な指示を部下にできるのは,このように立ち位置が違うので,見ている世界が広いからである。
このように一段上の立場からは,日頃考えていることでは気がつかないことを教えてくれる。視野が広がっただけ,全体から物事を見ることができる。つまり,目先のことだけでなく,少し先のことまで見通しながら物事を見ることになる。そうすることで視点が変わり,課題を見つけやすくなる。物事の重要性が広い視野で判断できるようになる。
逆の立場で考える
上司からいろいろと指導を受ける。しかし,指導を受けてばかりでは,指示待ちの受け身の姿勢になってしまう。ある程度経験を積めば,自分で考えることが要請されるようになる。課題抽出も自分自らが行わねばならない。上司が的確に課題を与えるのは,単に経験が豊富なだけではない。常に,自分たちより上の立場,単に職位が高いと云うことではなく,高所から全体像を見ているから,的確な指示ができることは上述した。
そうであれば,自分も一段上の上司の立場で物事を考えて見ればよい。直ぐに誰でもできるわけではないが,これも訓練である。逆に,部下に課題を与える側になって物事を見てみよう。そのためには,全体像の把握はもちろんのこと,ゴールとのギャップも的確に把握しなければならない。普段からの考え方を一掃して物事を見なければならない。このように,逆の立場で,新たな感覚で物事を見れば,普段何気なく見ていた物事でも,違った様子が見えるようになってくる。
また,部下同士の何気ない会話にも関心が行く。同じ物事を見るにも,これまでと違った角度から見ようと試みる。同じ仲間に指示をしようと考えると,それだけでもいろいろな情報を収集したり,これまで以上の勉強もするようになる。このようにものの見方に幅ができるようになってくる。立ち位置を少し変えることが,新たな視点を生み出すことを実感できるはずである。
全体を俯瞰する
一段上の立場に立つと云うことは,一段高い場所から見ることで,全体を俯瞰することができ,視野が広がることを意味している。全体からみるで説明したように,全体を俯瞰することができれば,自ずと全体の重要な課題が浮かび上がってくる。
また,情報収集して分析しようとしても,すべての情報が的確に集まることは少なく,欠損している部分があることが殆どである。こうした欠損部分を気にしすぎず,全体を俯瞰して見渡せば,欠損部分が補われて重要なことが明確になることが多いのである。
自己成長につながる第一歩
自分で課題を見つけることができるようになることは,成長する足掛かりである。これまでは,上司の指示に従うことしか出来なかった人間が,自立し始めるきっかけである。そのために,一段上の立場に立ってみることは,容易なことではないが,貴重なことを教えてくれるはずである。こうしたことができる人は,仕事が的確で,みんなからも認められる。
一段上の立場で物事を見ることは,やがて自分がその立場に立つ訓練でもある。こうした機会を通じて,自らの殻を破り,次のステップへの成長の足掛かりとして欲しい。
一段上の立場に立った見方を訓練しよう!
[Reported by H.Nishimura 2013.02.18]
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