■課題解決法2 5原則シートを活用する
5原則シートとは,トヨタにおける品質改善の手法の一つで,なぜ,なぜと問い掛けることで,真の原因究明に役立て,その原因を対策することで再発防止を図ろうとするものである。
品質問題の原因究明
トヨタを初め,殆どの自動車メーカでは,品質に対して非常に厳しくされている。それは,人命に関わる問題に発生する可能性があるからであり,品質は最優先事項である。それだけに,使われている部品一つひとつにまで,品質管理が徹底されている。だから,納入部品に不良が見つかったら,その原因を徹底的に洗い出し,同じ不良が起こらないように処置徹底される。
不良を起こす原因は,二つの側面から検討される。一つは,その不良が起こった原因そのものの解明である。なぜ,そのような不良が発生したのか,その真の原因を追及するものである。製造での作り込みの凡ミスから,設計ミスに到るまで,広い範囲に亘って検討される。もう一つは,例え工程内で不良が発生したとしても,なぜ,流出して出荷されたのか,その流出した原因は何かを追究する。こうした,「発生原因」と「流出原因」とを区分して,徹底的に解明するものである。
そのツールとして5原則シートと云うものがある。各々の原因を,なぜ,なぜ,と5回繰り返して問い掛けるのである。不良品を発生させた納入業者は,再発防止策として,この5原則シートに則り,真の原因追及を行い,その根本的な原因に対して対策を打つことで,再発防止を誓うことが義務づけられている。非常に厳しいルールである。
しかし,見方を変えれば,このような厳しい品質要求を突きつけられた納入業者は,それを乗り越えることで,自社の品質レベルが上がり,自動車メーカにも喜ばれると云うメリットを享受できるのである。
下図は5原則シートそのものではないが,考え方としての展開は次のように行われる。
対策案は,第4,5事象の深いところにある原因に対する回避策や除去策から,改善案を検討する。しかも,その対策が,確実に実施でき,再発防止に繋がっていることが重要である。
どんなところで実際に使われているか
自動車メーカの不良発生における再発防止策に用いられているのは上述したが,品質向上は自動車メーカに止まらないので,いろいろな企業が,同様の5原則シートを利用している。
このやり方は,いろいろな場面で使われている。例えば,品質問題が発生したときの原因究明。自動車会社の品質管理はこれが徹底されている。納入業者が品質問題を発生させると,早急な対応はもちろんのこと,対処し終わった後も,「五原則シート」などと呼ばれ(呼び名はいろいろあるが),品質問題が起こった原因究明を,なぜ,なぜと5回繰り返して全てを洗い出し,それらの原因が確実に再発しない対策が取られているかどうか,その報告書を提出しないと対策完了にならないようなシステムが出来上がっている。自動車はこのような方法でも品質向上が図られている。
品質問題はいろいろな場面,設計段階,量産試作段階,製造工程などで発生するが,こうした場合にも,関係するメンバーが集まってこの,なぜ,なぜを繰り返し,衆知を集めることで,再発防止や関係者への教育を図っている。
このやり方は,品質問題に限らず,何かの事象を詳しく分析しようとしたとき,自分一人でも可能であるし,またメンバーが集って検討する場合にも利用できる効果的な,しかもみんなが同じレベルでできるところが優れている。
5原則シートの考え方を有効に活用しよう
[Reported by H.Nishimura 2013.03.04]
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