■抽出法7.2 重要成功要因(KFS:Key Factor For Success)を見つけ出す
重要成功要因は,目指す姿(ゴール)に到る道程を見つける,有力な方法の一つである。
重要成功要因とは?
この言葉は,経営戦略を検討するとき,目標・目的を達成する上で,重要な(決定的な)影響を及ぼすと思われる要因のことで,経営戦略・戦術の上で,重点的な管理項目とされるものである。
経営は企業全般に亘る内容であるが,技術的な観点からも,重要成功要因を見出すことは,目標必達を目指す上で,必須要件である。技術者として,管理技術などで学ぶことからは少し外れているが,このやり方を学んでおくことは必要なことである。
課題とはの章で説明した目標と現状のギャップから抽出する主要因を課題と説明したが,重要成功要因もこの課題に相当する。つまり,この重要成功要因を乗り越えれば,目標(めざす姿)に到達できるのである。この重要成功要因をきっちり見つけ出すことが,成功する秘訣なのである。
重要成功要因の見つけ方
バランス・スコア・カードに,4つの視点があり,各視点ごとに,目標,業績評価指標,ターゲット,具体的プログラムが設定される。
財務の視点 財務的成功は,何を目指すべきか 顧客の視点 お客様に喜んでいただくためにはどうすればよいか 業務プロセスの視点 お客様を満足させるために,どのように業務プロセスを改善するか 学習と成長の視点 長期的観点で人材をどのように育成し,組織の能力を高めるか
*バランス・スコア・カードとは:キャプランとノートンが1992年にハーバード・ビジネス・レビューに発表した業績評価システム
このバランス・スコア・カードの手法を使って,上記4つの視点から経営戦略を考えると良いとされている。この4つの視点から整理されたものの因果関係を明確にし,各々の評価指標を明らかにして目標の必達を目指すことになる。このことは即ち,重要成功要因を決めることにつながる。
また,SWOT分析と云う方法があって,これも重要成功要因を見つけるために用いられる一つの方法である。
S:Strongth 強み
O:Opportunity 機会
W:Weakness 弱み
T:Threat 脅威
このSWOT分析では,内部要因(強み,弱み)と外部要因(機会,脅威)に分けて,各々の視点で関連する事柄を列挙する。こうして整理したものから,重要課題を抽出するのである。
さらに,具体的なやり方として,先ず外部環境の機会と脅威を調べて,その上で,内部環境としての強みと弱みに分類した方が判りやすく,マトリクス分析として後に戦略を考えるときにも,機会があって,自社の強みのある部分を活かして戦略とするのが良いとされている。ここではSOWT分析の詳細はこれまでとし,この中から重要成功要因を抽出するものに利用することを検討するに留める。
O:Opportunity T:Threat S:Strongth ここから戦略を W:Weakness
重要成功要因の活用
課題を抽出する方法として,重要成功要因を使うと云う方法は殆ど紹介されていない。それほど,重要成功要因と云う言葉や意味が,経営戦略を検討する場合に用いられる用語として定着している。
しかし,ここで敢えて課題抽出の方法に挙げたのは,技術者としても広く経営知識の観点からも考えて欲しいからである。経営・戦略と云うと技術者からは遠く,企業トップの幹部や企画などの一部の人が考えることと思われているかもしれないが,その手法はよく理解して,課題解決に当たっては大いに利用すべきであると考えたからである。
重要成功要因と云う言葉の響きは,技術者としてもよく理解できる筈である。経営戦略とまでは行かなくとも,技術戦略を考えることが必要なことは間々ある。だから,こうした経営手法もよく理解しておくことは,必要なことである。純技術的な観点は得意でいつも使っていても,こうした経営的観点で物事を見る機会は少ないかもしれない。しかし,利用できることとできないでは,物事を見る幅が違ってくるのではなかろうか。是非とも,活用してみて欲しい。
重要成功要因の利用をマスターしよう!!
[Reported by H.Nishimura 2013.02.22]
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