■課題を抽出するには
目標を達成するためには,課題を解決して行かなければならないが,それには先ず,真の課題とされるものを確実に抽出しておかなければならない。そこで,まず課題の抽出する方法にはどのようなものがあるかについて解説を始める。
問題と違って,課題は既に現れている現象では無いものもある。課題とは,目指す目標と現状のギャップであることからも判るように,現状がどのようになっているか,それをしっかり分析し,把握した上で,目指す姿とのギャップを探さなければならない。
なぜ,課題が見つけられないのか?
課題とは何かを説明したように,課題は目指す姿(ゴール)があって初めて見出せるもので,ゴールがはっきりしていないようでは,見つからないのは当然のことである。つまり,何をするか,何をしたいか,どのようになりたいかなどの思いがあってこそ課題が見つかるのだから,日頃何も考えずその日暮らしで済ませているようでは課題は見つからない。出くわすのは,ただの問題(トラブル)である。
課題を解決する能力はあるのだが,課題を見つけることは苦手な人がいる。特に,若い人は課題は常に上司から与えられるものと思っている人も多い。企業に入社して直ぐには,仕事でのゴールも決められないので,先ずは与えられた仕事を覚えることから始まる。また,問題(トラブル)は課題とは別に,いろいろな場面で発生するので,その解決に当たることはしばしば起こる。このようにして,課題(問題)を解決することは徐々に身に付くようになる。しかし,いつまでも課題は上司から与えられると考えていてはいけない。課題を解決する能力がついてくれば,次は自ら見つけ出すことが必要なのである。
課題が見つからない理由が幾つかある。その代表的なものを挙げてみる。
1.全体を見ていない
ゴールを描けるのは全体像が十分認識できていることである。つまり,全体像を見ないで目の前のことだけを見ていたり,部分的なことばかりに集中していては,目先の課題や降りかかる問題は見つかるが,肝心な課題がなおざりにされていることになる。
2.(自分独自の)フィルタを掛けてものを見ている
我々は色眼鏡を掛けてものを見ているとは思っていない。素直にものを見ていると思っている。しかし,実際には自分のフィルタを通してしかものを見ていない。それは他人のものの見方や考え方を知って初めて判るものである。このフィルタのせいで,真の課題が見えにくくなっていることがある。
3.小さな窓(自分の経験)からしかものを見ていない
世界に大きく目を向けていると云う人も居るかも知れないが,そういう人に限って,自分の経験からしか物事を見ていないことが多い。つまり,自分が経験した小さな窓からしか物事が見えていないことがよくある。このことは,物事を見える範囲でしか見ていないことで,物事の真実を見逃している可能性がある。
4.答え(正解)があるものとして探す
学生時代から,問題を解いて正解することに慣れ親しんできている。したがって,社会人になっても,正解を求めることに集中する。しかし,物事の正解は必ずしもあるものではない。それなのに,正解を求め続けようとする。だから,いつまで経っても判断できず,彷徨い続けることになる。そこで自信を無くしてしまう人が居る。
これだけではなく,他にもいろいろあるが,的確な課題を見つけ出すことは難しいことが判るだろう。
課題を抽出する重要性
上述したように課題を抽出することは容易ではない。それだけに,的確に課題を抽出できると云うことは,目指す姿(目標)をしっかり持って,日頃から問題意識を持って取り組んでいる証拠でもある。そうした意識で行動が伴えば必ず結果がついてくる。
一般的に言われていることは,きっちりした課題を明確にし,それを確実に実行すれば,目標に対して100点満点にはならずとも近い線に到達は可能である。ところが,そうはせず,思いついたこと(事象)を課題に挙げて,それを実行することに終始していると,その思いついたこと(事象)を解決しただけでは目標に到達しなかったり,或いは方向が間違っていたりして目標と違った方向に進んでしまったと云ったケースがある。
このように課題を明確に設定することは目標を達成するための重要なポイントなのである。課題解決については,日頃からいろいろな問題に出くわすことが多いためか,いろいろな解決策が紹介されている。しかし,本当に重要なのは,的確な課題を抽出することができているかどうかの方である。
真面目に一生懸命努力していても成果の出ていない人の多くは,与えられた課題は的確に処理できるのだが,自ら課題を抽出して目標を目指すことが苦手な人である。中堅どころになれば,益々課題抽出能力が問われることになる。それからあわてていては遅い。明日からと云わず,今日から,しっかりとした課題抽出を行って欲しい。そして改めて,課題抽出の難しさと重要さを学んで欲しい。
次に,具体的な課題抽出方法について説明する。
[Reported by H.Nishimura 2008.08.05]
[Reported by H.Nishimura 2013.02.08 見直し]
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