■安倍長期政権が終わって (No.660)
安倍総理が遂に退陣された。持病の悪化が理由だが,長い間ご苦労様でした。ただ,成果を誉め讃える報道もあるが,負の遺産も大きい。それらを顧みる。
外交の成果
トランプ大統領を始めとして,主要国の大統領,及び首相には対等に亘って外交を行い,各国より尊敬の念を持って讃えられた功績は,歴代首相の中でも秀でている。長期安定政権(7年8カ月)だったことが幸いしたことも大きかったようである。
それまでの歴代総理は,短命であったこともあり,海外の主要国からの信頼は薄く,軽んじられてきた。次々変わる総理に約束を取り付けても,約束が守られるかどうかが判らず,信頼されないのは当然の結末である。その点,安倍総理は米国だけでなく,イランなど米国と対立する国にも出掛け,中を取り持ってきた功績は大きい。
私が色々説明するまでもなく,外交に於ける安倍総理の功績を称えない人はいない。
一強による弊害
安倍一強による弊害は,色々な場面で展開された。政党政治を標榜し,官僚の人事権までも官邸が握って,政治主導の政治を行ったことは,一つのやり方でこれ自体を非難はするものではない。しかしその一方で,官邸の思うままに動く官僚が取り上げられ幅を利かすようになると,誰もが官邸の顔を伺った行動に走り出したことである。
そのことが,官邸に意見を言う,或いは反対を唱える人は表舞台から姿を消し,官邸の我が儘な振る舞いが横行することになってしまった。自民党にはいろいろな意見があって,その中から認められたことが行われる政党だったのが姿を消し,官邸に対して異を唱える政治家が居なくなってしまった。独裁政治とは云わないまでも,官邸官僚が主導権を握ることとなり,国民の声が反映されない政治が行われてきた。
その結果が,アベノマスクに象徴される,国民からそっぽを向かれるようなことが起こってしまった。新型コロナ感染拡大防止策も,前代未聞の出来事とはいえ,後手後手に廻り,打つ策が尽く効果を発揮しなかった。専門家会議の意見を尊重すると言いながらも,官邸で先に決めておいて追随させるようなことも目についた。
倫理観欠如の宰相
安倍首相の最も気になる点は,トップの人間としての倫理観である。組織では忖度は当然のこととしてある。しかし,度の過ぎた忖度は見苦しい。政権の私物化とも云われ,これまでの政治の泥を塗った感は否めない。倫理観とは社会生活において人として守るべき道理で,人間の基本である。トップがこの有様では日本が危ない。
モリカケ,桜を見る会など疑惑に対する説明が殆どされず,有耶無耶にされてしまっている。国民の納得どころか,疑惑感が払拭されないままである。この最大の要因は,安倍総理の倫理観であって,新人などに高い倫理観を持って仕事に当たるようにと訓辞する前に,自分の倫理観を胸に当てて考えてみていただきたい。
前にも記述したが,上になるひとはノブレス・オブリージュや李下冠を正さずと云った高い倫理観が無くてはならない(No.529)。そうでなければ,部下に高い倫理観を求めることが無意味になってしまい,これまでの安倍政権で行われた,文書改竄や書類の廃棄と云ったことがまかり通ることになってしまう。こんなことが堂々と行われる政権を信頼はできない。
これすべて,トップの高い倫理観さえあれば防げることであって,廻りがどうであろうとトップの人間としてきっちり判断すれば,組織は正常化されるはずである。これができないのが,安倍総理である。
安倍政権からの改革を次に望む!!
[Reported by H.Nishimura 2020.09.07]
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