■大企業の品質問題 7 (No.570)
今週もデータ不正の品質問題が話題になっている
新聞紙から読み取れる品質問題
神戸製鋼のデータ不正問題に関して,トップが辞任に追い込まれた報道がなされている。大きな記事になっていたので,その内容を詳しく読んでみた。受注獲得と納期達成を至上命題とする風土があったと結論づけされている。また,神戸製鋼以外の素材メーカでも,品質検査が現場任せになっていて,データが手入力できるなど,不正防止体制が徹底されていなかったとの報告である。
また,品質検査担当者が処分しきれないほどの仕事を受注したことなどが品質不正の伏線になっているとの報告で,再発防止策を各社が採っているが,データ改ざんができない自動検査システムの導入や,品質検査員の増員,さらには本社,親会社の品質体制強化などが上がっている。
一般向けに書かれているので,分かり易い再発防止策の表現かもしれないが,品質管理の専門家でもない技術屋にとっては,何ともありきたりな対処法としか映らない。そもそも品質管理を少しでも学んだ人にとっては,起こった症状に対する対処法で,もぐらたたきでしかなく,一時凌ぎでしかないものとしか思えないのである。もし,新聞で書かれている内容でしかないとしたら,これが再発防止策なのかと目を疑いたくなる。
抜本対策になっているか?
品質管理を少しでも学んだ人ならばすぐに判るが,品質対策は起こった症状に対する対応策は一時的なものであって,真に問題を解明し,抜本的な対応をしないかぎり,また同じようなことが(出てくる症状は異なっているかもしれないが),起こる可能性が大なのである。新聞を読む限りでは,抜本的な対応がなされているとは感じられない。
このホームページにも述べているが,品質管理の重要な手法として5原則シートがある(5原則シートの活用を参照)。これは,課題解決の一つの手法で,問題点を掘り下げるときに役立つものである。この狙いは,起こった症状に対して,如何にして根本的な原因に辿り着けるかを助けるものである。こんなものと思われるかも知れないが,品質管理を徹底的にやるならば,こうした地道なやり方を蔑ろにしないことである。
もちろん,一昔時代に活用されたものなので,現在の現場では使われているかどうかは定かでないが,原因を掘り下げる方法としては優れた一つの手段であるには間違いない。今回の対策が目先の対処法でしかないと述べたのは,このような根本的な原因を追及した結果の対策とは思えないからである。
要は根本原因を究明することが重要であり,先ず対処することを優先させることは必要なことではあるが,対処法が再発防止策ではなく,根本原因に対する解決策が一番大切なことであることを忘れてはならない。マスコミの報道を読む限りでは,不具合を起こした症状の奥底にある要因が解明されているとは理解しがたい。もちろん,トップが頭を下げ,辞任するまでに追い込まれているのだから,会社を挙げて対応されているのだとは思う。
一般受けする表現しかできないので,単純な再発防止策しか示していないのならばよいが,どうも日本の優れた品質管理の真髄を判っていない人達が対応しているのではなかろうかと危惧するのは私だけだろうか?品質管理は一朝一夕で変えられるものではない。品質意識が末端まで行き届くことが必要で,そのためには現場を統率する中間管理職の意識改革が不可欠な様な気がしてならない。
品質管理にはスマートな方法で対応できる方法は無い。一歩一歩の地道な品質意識が素晴らし品質を作り上げるのである。自分の持ち場での品質確保とは何かを一人ひとりが見極め,努力を積み重ねて初めて,誇れる品質が確保されるのである。こうした職場にいち早く変革し,嘗ての日本品質を取り戻して欲しいと願う。
再発防止策に異議を唱える!!
[Reported by H.Nishimura 2018.03.12]
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