■技術者の育成 3  (No.540)

技術者はその特徴から,与えられた課題に対しては探求心が旺盛,且つ新しい事への挑戦意欲など,課題解決に向けて持てる能力を遺憾なく発揮できる人は多い。黙々と課題に取り組む姿は,技術者としてのやる気の表れでもある。その反面,将来に向けた課題を抽出しながら,多くの人を使って物事を進めることは,やや苦手だと云う人も結構多い。

  課題解決ができること

技術者の仕事は,企業に入ると上司から与えられた課題に対して,それを如何にして解決するか,やり方を指導されながら育ってゆく。与えられた課題が大きなものであれば,仲間と担当を分担しながら,お互いの進捗具合を報告し合い,最終的なゴールを目指す。或いは,独り単独で与えられる課題もある。いずれも,目標とするゴールは明確で,日程も与えられたもので進めることが殆どである。

もちろん,事務方のように,規則ややり方が決まっていて,手順に沿ってやれば自然と完了するものではなく,多くは初めて経験するもので,課題の解決に向けては先行事例を調査したり,新たなアイディアを駆使したり,創造力を活かすような仕事である。力ずくでやり遂げなければならない仕事もあるが,目標と日程は与えられたものである。

こうした仕事が続くと,技術者として,上手く知恵を働かしながら,効率よく仕事を進めるコツを覚え,与えられた課題に対して,その目標達成と,日程を遵守することの大切さを学ぶ。そうしてだんだん大きな課題や難しい課題に挑戦して行くようになって行く。このように技術者として育成されながら,成長して行くものである。部下の居ない技術担当者としては,これができれば先ず一人前に近いと言える。

しかし,入社して数年が経つと,年下の技術者も増え,正式な部下でなくとも,数人のグループで解決すべき課題を与えられ,そのリーダ的な役割を果たさなければならない仕事になってくる。つまり,自分独りの仕事ではなく,部下と一緒になって進めて行く課題解決で,プロジェクトリーダとして指揮をとって進めることに変わってくる。独りの仕事がグループとなっただけで,技術者として仲間と協力しながら進めることで,何とかやり遂げる人が殆どである。

中には,一匹狼的な単独でしかやりたがらない技術者も居るが,そうした技術者に対しては,グループとしての課題を上手く分担して,独りで解決するような課題を与えるなど,上手く組織として力になるやり方をリーダが配慮するなど,技術者として活かすことを考えればよい。こうした技術者は,部下を持つリーダ的な仕事をさせるより,専門的なことを深掘りさせる専門家としての能力を活かす道を与えて,組織としてのパワーアップを図ればよい。

  課題抽出の難しさ

与えられた課題を解決するだけでは,技術者として成長して行くにはまだ物足りない部分がある。それは,与えられた課題だといつまで経っても上司からの指示がなければ仕事が進められないことになってしまう。つまり,与えられた課題を如何に効率よく,他人よりも素早くできるようになったと雖も,技術者としては未だ半人前に近い状態である。

技術者とは,未知に対する挑戦する部分がいろいろな場面で遭遇する。それを自分で見極め,ゴールに向けた課題を明確にして,切り拓くことが重要な役割である。ところがこれができず,常に上司に課題を与えられているようでは一人前の仕事ができていないことである。もちろん,若いときはそれでも十分であっても,いつまでもこの状態に留まっているようでは,それ以上の成長が見込めない。

口で言うのは簡単なことであるが,課題を的確に抽出することはそう容易なことではない。常に問題意識を持ち,ゴールに向けて何を果たさねばならないかを意識することは,誰もができることではない。降りかかってくる問題に対処するのは当然で,技術者としては日常茶飯事のできごとであるが,先のゴールを目指すには何をすべきか,その課題を整理でき,部下や仲間と共に解決を図って行く能力が問われるのである。

経験したことやルールに則ってやる仕事ではなく,殆どが初めて経験することではあるが,日程通りに的確にゴールにたどり着けるプランを作成することは,リーダにとって重要な役割である。リーダになれば誰でもができると云うわけではない。リーダになる前のリーダを補佐する立場にあるときから,訓練し経験を積むことで,最初は課題が多すぎて整理が十分できなかったり,或いは当面の課題しか浮かばず,先の見通しが不十分な状態だったりと,的確な課題を見つけることに苦労することが多い。

しかし,そうした経験を積み慣れてくると,少しずつ全体像を把握することができるようになり,これまで見通せなかった先のゴールに対する課題も明確にできるようになってくる。もちろん,ゴールへの道程の難しさによって,課題の大きさも変化し,或いは内部・外部環境の変化にも常に左右されるので,その対応を余儀なくされることはしばしば起こる。

このような技術者として,リーダ的な役割を果たせるように成長して欲しいと願うのは,大小問わずどんな企業にあっても幹部は願っているものである。

課題解決法については,別途コーナーを設けてあるので,一読していただきたい。(課題抽出・解決法

 

課題解決型から課題抽出型へ

 

[Reported by H.Nishimura 2017.08.07]


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