■職場の問題点と解決策(その3) 業務の外部委託 3 (No.470)
外部委託のメリットを打ち消すような問題が山積していることを認識しておく必要がある。
技術の継承が不十分(ノウハウの蓄積ができない)
本来,正規の社員がやるべきところの仕事を外部社員に委ねているのだから,その仕事の技術的な部分やコツ,ノウハウと云ったものの蓄積ができなくなってくる。もちろん,肝心な技術やノウハウの部分は委託していないから大丈夫だと云う意見も尤もなことであるが,技術はトップの重要な部分は,下から積み上げられた技術に支えられて成り立っているのであって,トップの技術さえ死守すれば安心だと云うわけには行かないところがある。
経験を積んだベテランから見れば重要な部分さえ押さえておればと思われるかもしれないが,若手のこれから中心となって活躍してもらわなければならない技術者にとっては,全てが新しい経験であり,下支えするものを経験してこそ,重要な部分の意義も正しく認識できるのであって,きっちり技術を継承しようとするならば,全体を把握してこそ成り立つものである。下支えの技術を長く経験する必要はないが,一度は経験しておくべきものである。
ノウハウと云うものは,完成したものだけではなかなか判らない。地道な努力をする過程で修得できることが多い。即ち,完成された技術を継承しようとしても,一定レベルの技術は引き継ぐことができても,それに付随するノウハウなどは,実体験して体得するものも多く,外部委託をしている状態では,外部社員へ流出してしまうことになる。こうして技術の継承が上手くできないことが起こっている。
また,技術の組織力を高める意味でも,正規の社員で構成された方が優っていることは間違いない。それを一部といえども外部委託に委ねていることは,人件費のコストメリットとのバランスから,やむなくそうしているに過ぎない。技術者自らが進んでそうしようとしている訳ではない。技術者としては,技術組織力で勝負をしている以上,組織力を高めることをやりたく,若手技術者の育成は重要だと認識している。
技術は一朝一夕で蓄積できるものではなく,長い期間を掛けて蓄積でき,継承されながらレベルアップされるものである。しがたって,外部委託することは,マイナス要素である。もちろん,アウトソーシングとして,コアコンピタンスをしっかり持ちながら,持てない技術を外部から取り込む方法はあって良い策の一つである。それは,技術の全てを自前で賄うのも良いが,専門性の高い部分を上手く外部の力を借りる方法であり,これは明らかに労働力を外部に求める外部委託とは違って,高い技術をアウトソーシングするのである。これは技術の組織力を弱めるものではない。
外部委託者が変わる毎に都度教育で,リーダに負担が掛かっている
外部委託は契約で成立しており,長年契約していて固定されているケースも多いが,外部委託者が変わることはよくあることである。契約業者は固定でも,担当者が変わることは珍しくない。10人以上が同一外部委託業者の場合は,委託業者にリーダが居て,そのリーダが新人の教育などをするが,リーダが居ない少人数の外部委託の場合は,正規社員であるリーダが新人教育をすることになる。
新人の教育なのでそれほど負担は無いと云うものの,余分な仕事であり,それがしばしばあるとなると時間が取られることになり,正規社員の新人の教育ならば将来的にも役立つことになり,長い目で見るとそれなりに意義があるが,外部委託者に対しての教育なので,組織強化にもならない。ただ,仕事を任せる以上やらねばならない仕事になる。
私の経験した派遣先では,職務分掌的な業務マニュアルもなく,見様見真似で覚えて行くしかなく,判らないことは逐一派遣先のリーダに聞くことになり,その対応に煩わした記憶がある。そのとき感じたのは,効率的でなく,業務マニュアルでもあれば,それを基に仕事が進められ,それによって派遣先のリーダの負担も軽減できるのではないかと。結果的には,私が派遣先の業務マニュアルを作成し,私以降に派遣される人には,その業務マニュアルを基に仕事を始めてもらうようになった。
そのときの状況は,マニュアルの重要性4で詳述しているので,参照していただきたい。
外部委託のデメリットを如何に解消すべきか!!
[Reported by H.Nishimura 2016.03.28]
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