■技術者が持つべき資質 8 創造性豊かなこと (No.463)
第8回目は「創造性」について考えてみる。
新しいものへの挑戦
世の中に貢献する新しいものを産み出すことは,技術者にとって重要な仕事の一つである。世の中の人の暮らしに役立つものであったり,文化の進展に寄与するものだったり,その創造物は様々であるが,顧客の要求に応えるものでなければならない。それが期待以上のものであれば,ときにはヒット商品となることもある。ヒット商品ならずとも,顧客要求を満たす商品化を目指して頑張るのが技術者としての役割である。
これまでも技術者の役割・仕事について述べてきたように,新しいものを創造することが技術者の使命の一つである。即ち,新しいものを創造すると云うことは,新しいことへの挑戦し結果を残すことに外ならない。つまり,これまで先人達が歩んできた道,或いは方法ではない新たな道や方法を見つけ,創り出そうとする行為である。未知への挑戦は生やさしいことではない。しかし,技術者の道を歩んだ以上避けて通ることはできない。新しいことを創造することは,技術者にとってこれほど誇れることは無い。技術者だからこそできることなのである。
もちろん,技術者の役割は新製品を開発することだけではない。技術者として果たすべき役割は様々である。しかし,新製品開発で無くとも,新しいことを創造する仕事は無数にあり,新しいことへ挑戦できる喜びを味わうことができるはずである。つまり,先人達がやったことのないやり方をするのも一つの創造であり,アイディアを駆使して新しい工法を見出すことも重要な仕事である。そんな創造豊かな人間に成長したいものである。
発想豊かなこととの違い
創造性を活かすことができるには,発想豊かなことは必要なことでもある。発想豊かな個性は生まれながらの才能も大きいし,育った環境も影響する。もちろん,その背景には豊富な知識を有しているからでもある。ただ,発想力が豊かだから創造力があるとは言い切れないものがある。発想力は,アイディアであり,想像力で,その着想が素晴らしいのであって,新しいものを産み出す創造力とは一致しない。つまり,発想力は創り出す力までは求めていなく,あくまでも思考であり,考えで十分なのである。
もちろん,新しいものを創造するには,先ず発想することから始まるから,全く発想力が必要無い訳ではない。発想力が豊かで,行動力も伴っておれば,それに優る創造力はない。ただ,発想力が豊かでなくとも,発想を促す訓練方法もいろいろ考えられている。独りではなかなか発想ができなくとも,グループやチームでいろいろ言い合って新しい発想を導き出すこともできる。
ただ,創造力を付けるには,発想のようには行かない。実行力が伴わなくてはならないので,ある程度経験も要する。新しい発想を物に結びつけ,産み出す力であり,頭の中だけの作業ではない。技術者の本領は,思いつきや発想に留まらず,その考えを具体化するところにある。その過程は,考えがすぐ具現化するものではなく,幾多の困難を乗り越えなければならない。
特許・新案の重要性
技術者として新しい物を創造することの結果は,発明として特許・新案の申請に繋がっている。つまり,新しい物を創造したアイディアは,これまで誰もが為し得なかったものである以上,オリジナルな特許性があると云うことになる。特許・新案とは,申請して権利となれば,後から他の人や他社が,そっくりそのまま作ることは権利の侵害となって,使えないものになる。このことは即ち,特許・新案は競合している他社との競争において,有利に展開できる重要な権利となるのである。
昨今は商品がグローバルに展開しており,世界的に特許権争いは熾烈なものとなっている。つまり,如何に早くアイディアを商品化することができるかで,勝敗が決まる。技術立国を表明している日本は,特許・新案権の取得に関しては,世界のトップクラスにある。資源の少ない日本にあっては頭脳を使った仕事が重要で,その代表的なものが知財権(特許・新案権)なのである。
技術競争に於ける日本の立場は,昨今では後進国に追い上げられ,それほど優位な立場ではない。しかし,これから益々知財権に於ける優位性が重要な位置を占めることは明らかで,技術立国たる所以を強化することが最重要である。それには若い技術者が新しいことの積極的果敢に挑戦し続けることであり,日本の技術者の使命でもある。
創造力豊かに技術立国を維持しよう!!
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[Reported by H.Nishimura 2016.02.08]
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