■新製品開発のスピード 5 (No.449)
5.何で差別化を図るか?−−−コアコンピタンス
コアコンピタンスの重要性
顧客の求めているものをより早く商品化するためには,ある一定以上の技術力が必要である。市場での競争は熾烈で気を緩めるといつの間にか競合他社が一歩先を進んでいることは珍しいことではない。それに負けじと慌てて商品化し先手を取っても,独自の技術力が入っていない商品では,すぐ追い抜かされ,二番手に利益をさらわれてしまうことだって起こり得る。
即ち,日頃から独自の技術力を磨き,いざと云うとき,その技術力を活かすことが競争力に繋がる。オリジナリティある固有の技術力を持ってこそ,他社に差別化が図れ,易々と追い抜かれるようなことを回避できるのである。開発のスピードとは,一番手になることはもちろん,それを維持でき創業者利益を得られてこそ,スピード競争に勝ち得たと云えるのである。
そこで重要になってくるのが,コアコンピタンスが保有できているかどうかである。これは技術力の核たる部分で,このコアコンピタンスでもって市場で競争しているのであり,市場で優位に立てている場合は,このコアコンピタンスが強く効力を発揮し,他社を差別化できているのである。逆に,コアコンピタンスが弱いと差別化が図れず,優位に立てないのである。開発のスピード競争に裏には,こうした地道な努力の積み重ねによって蓄積された技術力が厳然と控えているのである。
では,どうすればコアコンピタンスが蓄えられるか?従来は会社独自の強い技術があり,その技術をコアとして技術の裾野を拡げ確固たる技術に仕上げ,他社を寄せ付けない強さがあった。それはハードウェア中心の技術であり,地道な技術蓄積が差別化の原点であった。ところが昨今の技術では,もちろんハードウェアで同様の部分は残っているものの,ハードウェアの技術をソフトウェア技術でカバーできるようになってきており,ソフトウェア技術ではハードウェア時代にあったような大きな差別化の壁が無くなってきている。即ち,容易に追いつくことができるようになってきている。
したがって,このようなソフトウェア技術を有することが技術力になってきている。しかも,このソフトウェア技術は膨大な人件費を必要とし,開発費が膨らんできていることから,自社で全てを賄うのではなく,外部勢力を利用した開発になっている。つまり,外部勢力を含んだ大規模なソフトウェア開発を取り仕切る,即ち,ソフトウェア技術のマネジメントが技術者の重要な仕事になってきている。ソフトウェアの規模は大小様々で,大規模になればなるほど,マネジメント力の差が成果に大きく出るようになってきている。
ここでは一言でソフトウェア技術のマネジメントと表現したが,ソフトウェアのアーキテクチャーから最終の製品化までをマネジメントしようとすると経験も要し容易にできることではない。一般的には,プロジェクトマネジメントと称してソフトウェア開発をする上では必須の要件になっている。(プロジェクトマネジメントは別項目で解説) このプロジェクトマネジメントを上手くできることが,技術者にとって最重要な技術で,技術者はこれをマスターしなければならない。単にマスターすることは技術者として必要な要件であるが,独自の管理手法として確立させることは差別化できる要件にできることにもなる。
或いは,別な角度から云えば,プロジェクトマネジメントを上手くできるスキルを身に付けることは,ソフトウェア開発における開発管理がスムーズに行え,大規模な工数を有意義にロスを少なくできることであり,ソフトウェア開発で発生しがちな後戻りや,バグによる市場クレームの発生を未然に防止し,開発のスピードアップに繋がることになる。開発管理と表現すると管理手法的な要素が強いが,顧客要求を把握して要件定義に落とし込み,システムを組み上げる巧みな技術を必要とする技術者冥利に尽きる技術要素が詰まった部分を構築することなのである。
こうしたソフトウェアのプロジェクトマネジメントは一般化され,開発システムとして確立しているが,実際の開発に於いてはなかなか理論通りには行かないことが多い。したがって,各々の企業が固有の技術力を発揮して独自の開発プロセスを構築されているが,そのプロセスがコアコンピタンスになるまでには到っていない。差別化がなかなか難しい点は否めないが,こうした開発プロセスで差別化ができるようなやり方が確立すれば,ソフトウェア技術の一つのコアコンピタンスになるのではないかと考えられる。その中でも,海外部門を活用したオフショア開発にまだまだ改善の余地があり,低人件費としての活用だけでなく,社内開発と同様,品質の安定した開発プロセスがシステムとして構築できれば,有効な開発手法の一つになろう。
ソフトウェア開発にはまだまだ改善の余地が残っているのでは?
[Reported by H.Nishimura 2015.11.02]
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