■新製品開発のスピード 4 (No.448)

 4.技術ハードルを超える施策−−効率では解決しないこと

  計画性ある開発計画

前回は開発のスピードアップを図るための効率的なやり方についてのべたが,開発には不確実な要素であるものがつきものである。これは効率を上げることでは解決できないものである。リスクが大きいことが判っているものは,並行開発など余分なリソースの投入もやむを得ない事態も発生する。技術部門の役割でも述べたが(No.344),技術のハードルが高いことに対しては,早い時期から着手することが解決策の一つである。それも,きっちり技術リソースにそれなりの人を充ててやるべきである。

つまり,いくら開発スピードを上げようとしても技術の壁にぶつかってしまうとそこで大きく足踏みを余儀なくされることがある。その壁を乗り越えなければ,次の一歩が踏み出せない。こうした事態は開発をやっていると,時々出くわすことがある。計算通りに進まなくなってしまう事態である。こうした事態を回避するため,事前に察知して予め要素技術開発を行っておくことは一つの手段であるが,先を読むことはなかなか難しく,口で言うほど簡単なことではない。

先見性は必ず当たるものではないので,そのリスクは見込んで,できるだけ早い段階で,環境変化などに対応して軌道修正することも大切なことである。自らの手中でなく,研究所に任せてあるから,と云った他人任せなのが,一番危険性が高い。何故ならば,研究所の面々は,我々開発者よりも市場と離れた位置にいることが多く,顧客の声もなかなか把握できていないことが多い。もちろん,彼らが我々以上に市場に敏感であれば別だが・・。それを期待する方がムリだろう・・・。

こうした技術の壁に対しては,やはり計画性ある開発計画を以て進めることが大切である。自主開発の場合などは,開発商品のロードマップ(商品開発の年次計画)をこの先5年〜10年を見据えて描き,それと並行して,必要な要素技術開発計画が作成されるべきであろう。もちろん,市場の変化は激しいので,毎年計画の見直しは必要であろう。部品開発であれば,開発ロードマップを製品開発者に見せ,その計画を共有した形で進めるべきである。もちろん,ライバルとの競合を考慮して,計画の修正は必要となってくる。

また自主開発商品ではなく,顧客要望に沿った商品開発では,顧客ニーズの把握はもちろん大切であるが,顧客要望も流行があり,その流行に敏感な情報を的確に把握できるシステムを以て,計画的に開発することが一番早く開発できることにつながる。

  新製品開発のプロセスの見直し

新製品開発は各々の企業で作られた開発プロセスに則って進められる。思いつきで開発するようなやり方では,製品品質はもちろん,目標性能を達成するにも時間を浪費することになってしまう。したがって,これまでの開発経験を活かしたルール,新製品開発のプロセスにしたがって開発を進めることになる。しかし,これらのプロセスは過去の財産であって,現状の開発に最適とは限らない。

開発のスピードがアップしているので,これまでの開発プロセスを省略して進めるなどと云った乱暴なやり方でなく,決められたルールも現状に最適なやり方に改善することは必要なことで,何が何でも決められた開発プロセスを雁字搦めに守ることは,反って競争力を無くし,ライバルとの競争に敗れることになることもある。もちろん,これまでの開発プロセスが作られた背景はあり,それなりの理由があるはずである。だから,その背景を知り,理由を理解した上で,違ったやり方で保証できればよいのである。

また,新しい開発プロセスの提案など,世の中の進化にも対応していかなければならない。これまではムリだったこと,或いは不可能だったことが,進化したプロセスで実現できることだってあり得る。或いは,他の力を頼るだけでなく,自分たちの開発のやり方の中で改善ができる点だって見つかるはずである。重要な手抜きは後でしっぺ返しを受けるハメになることが多いが,厳守したやり方を踏襲することも大切だが,見直しのチャレンジも必要な場合がある。

他業種を含め,ベストプラクティスを学ぶことも重要なことである。自分たちの知っている狭い範囲に留まることなく,広く知識を求めることも大切である。いろいろな人の知識は日々進化しており,自分たちが遭遇した問題点の解決にこうしたベストプラクティスを求め,それらを自分たちに合致したものに仕上げて,新たなルールを生み出すことは常にそうしたアンテナを張り巡らしていないとできないことである。

開発のスピード競争は激化してきている

自らの開発プロセスにマッチした改善を

 

[Reported by H.Nishimura 2015.10.26]


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