■新製品開発のスピード 3 (No.446)

  3.開発効率を上げる施策

  ボトルネックの解消

開発スピードは企画段階の立ち上がりの早さに続き,開発設計段階では限られた開発人員で,如何に効率よく進めるかが重要になってくる。その開発効率UPを妨げる大きな要因の一つに,ボトルネックなるものがある。つまり,他のことがどれだけスピードアップできたとしても,ボトルネックになっているところが,そのスピードを制限してしまう。言い換えれば,このボトルネックを如何に素早く乗り切ることができるか否かで,スピードが決まってしまうところである。

過去の反省からも,いろいろなボトルネックが浮かび上がり,その対策を講じて次の開発に反映させなければならないことは言うまでもない。そこで,先ずボトルネックを見つけ出す方法の一つが,全体計画をPERT図などで,仕事を分解し,それらを順序立てて時系列に配置してみると,幾つかの並列な仕事が並び,それらの中から必ず一番時間の掛かるルート(パス)が見つかる。いわゆる,クリティカルパスが現れる。このクリティカルパスを短縮する方策(人員増強・入替,事前準備補強,装置の強化など)を検討することがスピードアップに貢献することになる。

他にも,ボトルネックはリスクの高低にも左右される。ボトルネックは自分たちの一番弱いところなので,リーダは大凡の検討は予めついていることが多い。ただ,それをそのままにしておくか,事前準備を怠らず,いざというときの処置を予め検討しておくかでも,結果に大きな差が生じることが多い。一言でボトルネックと云うといとも簡単なように見えるが,複雑でなかなか厄介なものが多いのも事実である。

  先手の要素技術開発

新製品開発は,必ず幾つかの要素技術が組み込まれて成り立っている。ありふれた要素技術だけであれば,なかなか素晴らしい新製品に仕上がることは珍しく,やはり何らかの新しい要素技術を採り入れることで,新機能が付加された新製品が仕上がる。つまり,要素技術が開発スタート時点で,揃っているか否かで,開発のスピードは大きく左右される。しかし,市場要求の変化も激しく,予め要素技術を開発準備しておくことは難しく,要素技術開発と並行しながら新製品開発をするケースは珍しくない。

裏を返せば,市場要求の動向を素早く察知して,先手を取って要素技術開発を進めることができておれば,開発のスピードアップは確実なものになることを示している。しかし,こうした先手を取った要素技術開発は,ある程度開発技術力に余裕があることが必要で,なかなか中小企業では現実的には難しい。大企業でも,必ずしもゆとりのある開発が進められている訳ではなく,事業に結びつかないような要素技術開発は難しく,継続性も危ぶまれることが多いのが実態である。

また,いろいろな要素技術を保有していることは,開発に於ける自由度が高く,一つの方法だけでなく,二つ目の方法,三つ目の方法が準備できていることであり,行き詰まっても直ぐに他の方策に切り替えることが可能となる。こうしたバックアップがあることは,開発を進める中で,特に未知数への挑戦には非常に心強いものとなり,成功の確率もアップする。事前にはなかなか予測できないリスク発生にも対応ができることになる。要素技術がいろいろあることは,開発する上での引き出しが幾つもあることであり,それらの引き出しを上手く使うことで,開発のスピードアップにつながることがある。

  開発進捗の決断

もう一つ,開発にとって重要なことは,進捗工程での分岐点での素早い的確な判断である。つまり,未知のところを突き進んで行く過程では,いろいろな問題が発生する。それらを如何にスムーズに対処しながら進むかが,重要なポイントであり,どちらを選択するか決断が迫られるケースも多い。こうしたときに,逡巡してなかなか決断できないようでは,余計なロスを発生させ兼ねない。十分且つ確実な情報を掴むまで待てないことも起こり得る。確実な自信に到らなくとも,決断できる勇気を持って進むことが必要となる。

熾烈な市場競争では,的確なジャッジができるか否かで勝敗を分けることになる。その意味で,開発の工程の中に,必ずマイルストーンを設け,次へ進むべきかどうか,的確なジャッジをする関門を予め設けておくことは,有効な手段である。開発の後戻りが起こらない為にも必要なことである。未知の領域を如何に的確に突き進むことができるか否かが成功のカギとなる。

 

開発効率を上げるための普段からの努力を心掛けよう

 

[Reported by H.Nishimura 2015.10.12]


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