■転機 9 職場異動 その7 (No.440)

その後,全社の取り組みの一環として,日本経営品質賞(JQA:Japan Quality Award Committee)があり,社内研修として講習会が催され,各事業部から選抜された者が研修を受講した。研修は第三段階に分かれ,第一段階はいわゆる日本経営品質賞の基礎的な内容,そして第二段階までは社内研修があり,JQA推進リーダとしては,外部でのJQAの講習会を受講して,アセッサーの資格を認定されるプログラムになっていた。丁度,その頃は技術部門と云うより,企画部門にいたため,その推進リーダとなるべく講習会を受講し,アセッサーの資格も得ることができた。

  日本経営品質賞とは

一言で言うのは難しいが,基本理念として,変革を行う全ての組織が持つべき共通の価値観,基本的な視点として,4つの要素が取り上げられている。それは,@顧客本位,A社会との調和,B独自能力,C社員重視である。これらを@顧客から見た品質,Aリーダシップ,Bプロセス志向,C対話,Dスピード,Eパートナーシップ,Fフェアネスなど素晴らしい経営を実現する7つの経営要素を重視した考え方に基づいている。

「卓越した経営をめざして」と題されたアセスメント基準書があり,その基準書に準じて,カテゴリーが8つあり,各々6段階(AAA,AA,A,B,C,D)の評価,更にその内訳として各段階に+−があり,合計11段階の評価をすることになっている。各カテゴリーに重みが付けられており(年度で若干変更あり),それらを点数評価することになっている。

一般的な経営評価で,考え方など理論的なものがしっかりしていれば高得点になるのと違い,活動結果としての経営成果が40%程度を占めるため,実際の経営成果が出ていないと高得点にはならない仕組になっている。各カテゴリーのフレームワーク構成を下記に示すが,経営全般を自己評価するには優れた手法である。

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  重要成功要因とは

これまで,あまり聞いたことは無かった言葉であったが,この日本経営品質賞に於ける考え方で,非常に重要なキーワードとして「重要成功要因」がある。これは組織の理想的な姿として目指す姿を描くが,これを実現するために本質的な課題や,成功するための要因を仮設として設定することが求められている。

つまり,理想的な姿に到達する手段・要因を組織内で共有して,その仮設を実現するためにみんなで協力し合って組織改革を進めようとするものである。これは,理想と現実のギャップを埋めるために何を為すべきかを明らかにしたもので,この重要成功要因を的確に見つけ出し,明確にすることが成功する秘訣となる。

重要成功要因については,課題解決法7.2重要成功要因を見つけ出す を参照

  JQA コンサルタント

JQAの推進者はアセスメント基準書に基づいたアセスメントをする役割を担うが,主な役割は,経営コンサルタント的なものになり,経営者の対する助言,提案など,組織内にある問題点をえぐり出し,その解決策を担当者からの自発的な提案を引き出し,改善に向けた活動を援助することになる。

もちろん,この活動はトップ自らが率先垂範しないかぎり,JQA推進者の力だけでは進まず,全社的な取り組みとして,事業部長など経営責任者向けに講習会もあり,会社としてトップダウンでの展開となっていた。だから,JQA推進者は事業部長直轄の位置付けにあり,指揮命令は事業部長からなされる仕組ができあがっていた。

技術だけでなく,いろいろな経験をしていた私には,その知識をさらに充実させる機会であり,各組織毎にアセスメントに沿った手法でみんなで議論して考えて貰い,或いは改善のヒントを与え,対話を通じて解決策を導き出す手引きをするなど,コンサルタントの手法も駆使するようになった。ファシリテーターとしての技法も勉強する機会に恵まれ,会議などのまとめ役はもちろん,重要課題の解決のリーダシップを発揮することができ,大きな自信に繋がって行ったのである。

また,この機会を通じて,純粋な技術ではなく,技術経営の重要さを改めて知らされ,新技術開発に没頭することも技術者にとっては重要なことであるが,そのバックには経営に裏打ちされたものであることが必要で,より技術を磨くためにも経営的なセンスを同時に持つ必要性を感じたのである。こうしたことを通じ,技術に対する幅広い視野から物事を見,考える力が付いてきたのである。

JQA(日本経営品質賞)を通じ,技術経営を学び実践する機会を得た

 

 

[Reported by H.Nishimura 2015.08.31]


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