■新製品開発 7 (No.412)
新製品開発の続き。今回は市場ニーズと技術シーズの融合について述べる。
市場ニーズと技術シーズの融合が重要
これまで市場ニーズ開発志向か,技術ニーズ開発志向かについて述べてきたが,企業によってその特質があり,市場ニーズ開発か,技術シーズ開発か,どちらの方法が良いという訳ではない。部品・材料開発など素材開発に力を入れている企業は技術シーズに特長を活かし,顧客とのインターフェースを重視し,顧客の声を製品化している企業は市場ニーズ開発にその特長を活かすことになる。
市場で製品が受け容れられるには,市場ニーズと技術シーズが上手くマッチした状態である必要がある。即ち,一方的な市場ニーズだけの開発では,それに対応できる技術(シーズ)が無ければ実現が不可能であり,他方,技術シーズだけの開発では,その製品が市場で喜ばれるかどうかが不明である。つまり,どちらか一方的な開発では,市場・顧客に受け容れられる製品にはなり難い。如何にして,その融合した製品に仕上げるかどうかが,製品が成功するかどうかに掛かっていると云って良い。
つまり,下図に示すように,市場ニーズ開発志向か,技術シーズ開発志向か,とは,開発の進め方を示しているだけで,商品化されて市場に受け容れられる商品は,市場ニーズと技術シーズがマッチした領域でしかない。つまり,開発の進め方は違っていても,如何に両者を融合した領域に持ち込めるかどうかに掛かっていると言って良い。独自コア技術力は一朝一夕にはできず時間が掛かるものであることに対し,顧客ニーズは固定されておらず移ろいやすいものであることを十分理解しておくことが大切である。
両者を融合すればよいと云ってもそう易々とできる訳ではない。例えば顧客ニーズ開発志向において,顧客ニーズを的確に把握したとしても,商品化目標は定まっても,それを実現する技術が伴わなければならない。持てる技術を駆使できる場合は,いち早く開発に着手し,商品化に漕ぎつけるリソースを注ぎ込む決断が必要であり,競合他社との開発競争になる可能性も高い。目指す市場が拡大する方向であれば,競合他社と切磋琢磨することで,大きな市場を創出できるが,常にそうだとは限らない。狭い市場だと,無益なコスト競争に陥り,お互いが疲弊することだって起こり得る。
また,独自のコア技術が活かせ商品化を目指そうとする場合でも,顧客ニーズの適合するには,当初想定していたもの以上の技術力が必要なことも多い。魅力あるコア技術でも,商品化して顧客に承認されるものにするには,コア技術のみでは不十分でプラスαの技術が必ず必要となる(前述のキャズムでも解説済み)。したがってコア技術をより活かせる技術を補強しなければならないが,自前で困難なケースでは特長ある技術を持った企業とアライアンスする必要もある。それに素早く対応して商品化を実現させることがカギとなることが多い。このように,両者の融合にはいろいろな壁が立ちはだかるものである。
産学協同プロジェクトと云うものがある。これは大学などの研究機関で開発された優れた技術を,企業によって実用化させようとするもので,お互いの特長を活かしたプロジェクトである。つまり大学などの基礎研究など優れた技術から生まれた技術シーズを量産化技術(設計・製造技術,生産技術など)を有した企業が市場ニーズを的確に把握して,そのニーズに合致した製品化に漕ぎつけるものである。
(続く)
技術シーズと市場ニーズの融合したところにしか商品は生まれない
[Reported by H.Nishimura 2015.02.16]
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