■新製品開発 4 (No.405)
新製品開発の続き。市場ニーズ開発志向と技術シーズ開発志向について述べる。
市場ニーズ開発志向
市場ニーズ開発志向とは,市場・顧客の要望を聞き入れ,新製品を生み出そうとするもので,新製品開発には欠かせないやり方である。特に昨今のように,製品が豊富に出回っている状況下では,顧客のニーズに沿った製品をタイムリーに開発することで,販売増を狙うやり方が増えている。
市場ニーズを的確に,タイミング良く捉えることは,製品開発に於いて必須要件である。市場・顧客が何を望み・期待しているかをしっかり捉えるマーケティングは営業活動の基本中の基本であり,営業部門はこれらの情報を的確に開発部門に伝達する役割を担っている。この市場ニーズを基に,それにマッチした製品を開発することは,市場の需要に応えることであり,一般的には即販売に繋がることが多い。ただし,市場ニーズは固定されたものではなく,日々変化していることから,マーケティング時期と開発完了時期のズレで,市場ニーズが変わってしまうこともあり得るので,ある程度先読みをした市場ニーズであらねばならない。
市場ニーズを的確に把握することは重要で,これまでの著名人がいろいろな手法を編み出している。その代表的なマーケティング分析ツールとして,3C,4P,5Fなどの手法が考えられている。
*3C分析:顧客(Customer),競合(Competitor),自社(Company)の観点から市場を分析する
*4P分析:製品(Product),価格(Price),プロモーション(広告宣伝)(Promotion),流通(Place)の効果的なマーケティングを検討する
*5F分析:新規参入業者,代替製品,競合企業,供給業者(仕入先)の交渉力,買い手(顧客)の交渉力などが競争要因となるここでは,この分析ツールの詳細は省略するが,営業部門は,いろいろな情報を集め,それらを整理して独自の市場ニーズ分析を作成し,的確なニーズの把握に努める。もちろん,営業部門のみならず,開発部門が自らの情報を基に,分析ツールを活用することもある。ただ,あくまでも分析ツールであって,情報を上手く整理できるだけで,如何にして正確な,且つ的確な情報を収集するかは,収集能力や収集方法によって大きく左右される。最後に開発を決めるのはあくまでも関連部門の合意や,或いはトップの意志・判断に依る。
市場ニーズ開発志向では,顧客のニーズに対する反応は非常に良いが,顧客ニーズになっていないもの,例えば潜在顧客ニーズ(ウォンツ)までも捉えることは難しいことが多い。今ある製品をより安く,より便利にと云った改良には向いているやり方である。それは着実に販売を伸ばすやり方であり,どの企業も顧客ニーズを追い求めることを止める訳には行かない。
ただ,市場ニーズはどの企業でも,調査分析すれば,同じような答えになることが多い。市場が高度成長しているときは,それでも良かったが,低成長時代となると,他社との差別化が優位になる条件となり,素早く開発しても,直ぐに追いつかれてしまう結果となり,低価格競争に陥ってしまう危険性を孕んでいる。だから,市場ニーズだけを追っかけて開発していたのでは,十分とは言えず,やはり自社独自の技術開発が伴った優位な商品ができないと苦しい。
市場でのヒット商品は,市場ニーズを上手く捉えたものが多い。ただ,市場ニーズを的確に分析して生まれたと云うよりも,優れた天才肌の人が閃きで,市場ニーズを感じ取り,それに合致した製品化をしたものが多い。もちろん,天才肌といえども,自分の頭の中で,分析し,予測し,導き出されたものであるには違いない。つまり,市場に対する感性が他の人より敏感で,柔軟な発想ができ,より研ぎ澄まされた発揮能力を有しているのだろう。
次は,技術シーズ開発志向について述べる
市場ニーズ開発志向はどの企業でも行っているものである
[Reported by H.Nishimura 2014.12.29]
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