■新製品開発 2  (No.403)

新製品開発の続き。続いて,カスタム部品の開発について述べる。

  カスタム部品の開発

カスタム部品とは,製品側からの形状・性能など部品に対する要望に合致した専用の電子部品を開発するもので,製品固有の部品であって,汎用性を求めたものではない。ただ,一旦開発されたカスタム部品でも,製品開発側から他の用途にも採用できるとして拡がることはある。

カスタム部品の開発は,通常は製品の企画数が予め告げられ,それに応じた設計をすることになり,金型・設備なども企画数を考慮して準備し,生産に対応することになる。しかし,製品の販売が必ずしも企画数と合致することは無く,新たな設備や金型は企画数に応じて価格に上乗せされるので,製品側との最初の段階で明確にしておき,企画数が大きく伸びたときは,企画数を超えた時点で,コストダウンを要求されることがある。逆に企画数に満たないケースでは,設備や金型代を補償してくれるケースもたまにはあるが,概ね次の商売などでの挽回など,うやむやにされ部品側が強く言えないこともある。

キラリと光る特長を持った部品は製品側からも注目され,その部品の特長を活かした製品設計ができ,他社と差別化できる製品に仕上げることができる。他社を圧倒するような差別化できる製品が生まれるケースは少なく,製品開発はどちらかと云えば,他社より1年,或いは半年早く製品化することで差別化するのに必死である。だから,キラリと光る特長がある部品はいち早く,製品に搭載したいと考え,ケースによっては,部品側と共同開発のような体制を作って,部品開発と製品開発を並行して行うこともある。

ただ,製品の開発はスケジュールが決められている場合が多いので,部品開発と並行することはリスクを伴う。したがって,製品開発のマイルストーンの時点で,部品の完成度がどの程度か見極めながら行われることがある。ケースによっては,初期段階は2社で競合させ,予め設定したマイルストーンに於いて,1社に絞り込むようなことも行われる。自動車の電装品などは,しばしば行われており,競合他社の部品開発の状況を把握しながら,競争したことは数えきれない。

ただし,カスタム部品の場合は量産に纏わる金型・設備などの準備もあり,少なくともその手配が必要になる段階までに,1社に絞られ,そこからは量産に向けて,製品側と部品側の共同開発で,部品開発の進捗状況も,逐一製品側へ報告し,製品開発に支障が出ないようにしなければならない。

共同開発に至るまでのカスタム部品の開発側の重要なポイントの一つは,「該当製品の業界に精通していること」が挙げられる。電子部品はいろいろな業界で利用されているので,単に部品の開発設計ができる,と云うだけでは不十分なことがある。該当製品の業界の特質を熟知しておくことが必要となる。それは,部品の使われる環境など,製品側から見た部品を開発設計ができているかどうかが重要であり,これができないと採用されることが難しい場合もある。

前述した2社での競合などよくあることで,この場合,該当製品に精通している開発者が居る方が,製品側からみれば安心できる大きな材料になる。カスタム部品の場合,要求仕様が製品側から提示されるので,性能はほぼ同じようなものができあがる。材料など,特別な特長があり,それが優位になることは当然あるが,両者の性能が互角の場合,もちろん価格・品質は考慮されるが,業界に精通していることが有利に働いたケースはよくあることである。

カスタム部品の開発は,どちらかと云えば製品側からの要求に応じた開発になることから,受け身になりがちで,且つ,普通は製品側が権限をもっていることから,部品側は弱い立場で開発するケースが多い。そうなると,カスタム部品の開発は,ともすれば下請けの開発に陥りやすく,必ずしも理想の部品開発ができず,より良い製品開発ができるとは云えないことも多い。要は,製品開発側が強すぎると,その製品担当者の発想を超えることは無く,部品側からの良い提案があっても通らないので,練り上げられた製品には成り難い。

部品側も下請け根性ではなく,対等までは行かなくとも,共同開発する意気込みで行った方が,結果的には,お互いのメリットが出し合うことができ,製品もよりアドバンスしたものになることが多い。要は製品側と部品側の担当者の意思疎通の良さが重要で,上手く製品側の担当者の顔を立てながら,部品側の主張を上手く通すようなことができれば,仕上がった出来映えは良くなることが多い。それには,やはり経験がものを云う。

 

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カスタム部品は製品側との協調で良い部品,良い製品ができる

 

[Reported by H.Nishimura 2014.12.15]


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