■新製品開発 1  (No.402)

新製品は市場の要求(ニーズ)と技術の要素技術開発(シーズ)が上手くマッチしたときに生まれる。

  製品開発と部品開発

先ずは電子部品の技術開発を経験したことから,部品の新製品開発について述べてみよう。電子部品もいろいろな種類があるが,汎用部品とカスタム部品では開発のやり方が大きく違う。ただ,どちらも部品単独では市場に出ることは限定され,通常は製品に組み込まれて,その役割を果たす。つまり,製品開発側のニーズがあって初めて役割を果たすことができる。その背景には,市場の要求(ニーズ)があって,そのニーズに応えるような製品開発があり,この製品性能を出すために必要な部品が求められる。

  汎用部品の開発

一般電子部品はあらゆる電気製品に搭載されている。したがって,部品メーカが違っても,同じ部品性能を出すことが求められ,各電子部品で形状・性能などが規格化されている。そのため規格外の部品を作っても売れず,如何に品質の安定したものをより安価に提供できるかが一番のポイントになる。汎用電子部品は一般的には大量生産で,人手を介するよりも機械化することで,安定した部品を供給することができる。設備産業と云っても過言ではない。

規格があると云っても,時代の流れがあり,同じ性能で小型化,或いは同じ大きさで高性能化など,新製品開発は留まるところを知らない。通常は,目的に合致した要素技術開発が先行して行われ,その開発目処を基に,各電子部品の開発ロードマップなるものが作られる。ここでの重要な開発は,材料開発など一般的には表舞台に登場しない(製品が脚光を浴びるのとは対照的に)地道な要素技術開発が行われている。この要素技術開発を疎かにするようでは,決して良い電子部品は生まれない。

もちろん,自前で材料開発を行う企業もあれば,材料はアウトソーシングする企業もあるが,要となる材料開発は自前で行っている企業が多い。つまり,ノウハウや特許の塊のような部分はコアコンピタンスとして自前で行い,競合他社と差別化を図っている企業が多いのが実態である。だから,日本の電子部品は世界に誇れるものになっている。外国の企業が真似ようにも,材料,設備,工法など技術の結晶と,それを扱える優秀な技術者が容易に揃わないからである。お金で買えない部分である。

部品に要求される材料は簡単に産み出されるものではない。ノーベル賞で脚光を浴びた青色LEDの開発でも,材料開発に相当な時間を要することからも,材料開発が如何に時間の掛かるものかは容易に想像できる筈である。得たい目標は明確でも,その材料を開発するのには一からの開発で,失敗が殆どである。思い通りに材料開発が進むことは少ない。むしろ,何か間違ったり,失敗したときに突然予想を覆す結果が現れることがある。それを見逃さないことも重要で,執念深く,諦めない努力が良い結果に導いてくれることになることがある。

技術者の多くは,特に最近のソフトウェア開発を行っている人は,開発とはプロジェクトマネジメントなど,きっちりプロジェクトを管理し,狙い通りにスムーズに行き着くことが最良だと思っている。しかし,それは製品開発,ソフトウェアなどの開発など,組み合わせて新しい性能を産み出す技術には非常に有効なやり方であるが,材料開発など,創造性と云うと大袈裟だが,先が見通せない開発では,一般的なプロジェクトマネジメントは役立たない。プロジェクトマネジメントを有効に活かすとすれば,マイルストーンなど指標を置いて,その時点でその先へ進むか止めるかの,GO-NOの判断を的確に行うことだろう。この判断は非常に難しい。

マイルストーンでの判断は,開発技術者と経営者で大きく分かれるのが一般的で,開発技術者は,何とかものにしたい一心で,あと少し頑張れば結果が出ると主張するし,経営者はいつまで無駄金を注ぎ込むのかと結果が見えない開発に中断を宣告する。実際は,企業の中での開発は,経営者が許してくれないといくら技術者が熱心でも開発の継続はできない。開発しているときの環境が大きくものを云い,資金に余裕があり,多少のムダを許す雰囲気のある中でこそ,世間に注目されるような材料開発が行われると云っても良いだろう。実際,開発経過や使った時間と資金などから,経験則で経営者が判断することは概ね間違っていないと云っても良いだろう。

こうした地道な要素技術開発をバックに,汎用部品開発は進められる。そして部品側から(機器の)製品開発側にその開発ロードマップを示し,製品開発側もそのロードマップを基に,製品の小型化や高性能化など,製品が目指すものを開発計画に盛り込む。例えば,いつ頃にどれだけの小型化の部品が開発でき,それらを使って製品の小型化を目指すとした開発計画である。このように,部品屋と製品開発屋の共同作業的な意味合いを以て,並行開発が行われることもしばしばある。

もちろん,すべての電気製品がそうかと云えば,必ずしもそうでない場合もある。昨今のように自動車にも多くの電子部品が搭載されており,機械よりも電子化が進んできている。その採用過程においては,安全重視の電装品には,最新の電子部品より,一時代前の成熟した部品が搭載されるケースが多かった。随分昔の話になるが,ディスクリート部品(リード線の足がついたもの)から,チップ部品への移行時など,ラジオやテレビなど家電製品への搭載が行き渡った後で,自動車用にはインパネ(計器類)などからチップ部品が搭載されるようになって行った(初めてインパネのコントローラに,抵抗・コンデンサなどのチップ部品を搭載した経験より)。それから徐々に増え,現在では,エンジンコントローラなど自動車の機能のメインに,多くの小型チップ部品が搭載されている。高信頼性の汎用部品群である。

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汎用電子部品には日本の素晴らしい技術が組み込まれ,あらゆる分野で利用されている

 

[Reported by H.Nishimura 2014.12.08]


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