■製品品質と技術者 1 (No.364)
品質第一と云う言葉はよく見聞きする。企業の中では,必ず何処かで見掛ける。品質が一番大切であることをスローガンにした言葉である。技術者にとって製品品質を確保することは重要なことで,製品開発に不可欠なことである。どんな素晴らしい製品ができても,品質が確保できないようでは製品開発ができたとは言えない。ここでは技術者にとって製品品質とは何かを考えてみる。
品質第一とは
品質第一をスローガンに掲げている企業は多い。その通りで品質が重要なことであるには違いない。本質を究める15でも述べたことだが,物づくりにおいては,QCDと云って,Q(品質)・C(コスト)・D(納期)が重要なファクターで,その中でも,品質が最重要視されている。ただ,品質第一と云うと他の二つC(コスト)とD(納期)を度外視しても品質が大切だと主張する人もいる。特に,品質を担当している人は品質第一を御旗の御紋のように技術者に迫って来る人もいるが,物づくりの基本はQCDのバランスが無くてはならないと思う。
品質第一の裏側
実際,品質第一が盛んに叫ばれる裏側には,品質問題で重要な過失を犯してリコール問題になったり,品質問題で顧客から見放されたり,或いは出入り禁止処分を言い渡されたり,何らかの経営に負担を与えてしまったケースがよくある。経営者に成り代わって,品質責任者が全社に品質が第一であると大号令を掛けるのである。
或いは,自動車メーカのように,事故が人命に関わる製品を作っている製造業では,品質が企業の生命線で,これが担保できないようでは製品として市場に受け容れられないことがある。こうした製造現場では,作業員一人ひとりの品質意識が重要で,日頃から徹底して品質第一の思想を身体に染み込ませるようにされている。日本のメーカは末端の作業員まで統率がとれている。
最近でも,チョットした品質問題と軽んじて,取り返しのつかない品質の大問題に発展するケースもある。品質の捉まえ方が消費者と生産者では大きな違いがあり,ネット上などあっと言う間に情報が広く伝達されてしまうので,慎重に取り扱うことが必要である。品質で企業の信用が一気に失墜するケースは後を絶たない。信用を築き上げるには長い年月を要するが失うのは一瞬である。だから,生命の危険を伴う企業だけでなく,殆どの企業が品質第一をモットーにしているのである。
技術者自らが品質第一を叫ぶな
それでは技術者の立場に立って,品質第一をどのように考えれば良いのだろうか?企業のモットーだから,品質第一を重要視する気持は良いが,品質担当者と一緒になって,品質第一を周りの人々に叫んでいるようでは,技術者失格である。失格とは失礼な言い方だが,創造することが使命である人間が品質を第一と考えること自体がナンセンスであると言いたい。
最初から,品質の良い確実なものをと云う硬い発想では,新しいものは生まれない。多少のリスクを冒して新しいものに挑戦するから創造が生まれるのであって,挑戦無しに創造はできない。品質が確実なものとは,既に確立されたバックがあるからであって,不確実なものにはその時点ではまだ品質は確保されていない。新製品開発などは,第一歩はその段階である。
最初にリスクを含んだ新製品が発見,或いは発明され,それが次の段階で,確実に再現されるようになり,更には,一つではなく量産化に即した物づくり方法が検討されて行く。そうした過程の中で,安全性が確認され,品質の良いものに作り上げられて行くのである。もちろん,その過程でQCDのバランスが検討される。だから,最初の第一歩を歩むべき役割を担った技術者が品質第一を叫ぶようでは,その企業の発展には疑問符が付く。
(続く)
製品品質について技術者の果たす役割を考えてみよう!
[Reported by H.Nishimura 2014.03.17]
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