■原価意識 3 (No.335)

技術者の原価意識の続き

  原価構成と価格の整理

原価構成と価格との関係を整理したのが下図である。

wpeC.jpg (22817 バイト)

原価構成は大きく固定費と変動費に分けられ,固定費は数量に関係なく一定であり,変動費は数量に比例して増加する。

原価意識1で示したように,変動費,固定費は下記の通りである。(但し,内部加工費の扱いは事業内容によって変わる)

変動費=購入原価(部品・材料費)+労務費(外部加工費+内部加工費)+賦課費

固定費=間接部門費+償却費(金型・設備費)

上図で示されたように,数量変化によって,一定の固定費の上に変動費が比例して増加して原価が決まって行く。これに対して価格は,原点(0)から数量に比例して増加して行く。

  損益分岐点

上図の原価構成の線と,価格との線が交差した点が損益分岐点となり,これより数量が多いと利益となり,少ないと損益になる。この図は非常に重要で,技術者も常に頭になければならないものである。もちろん,実際面においては固定費が数量に全く関係なく一定で無いこともあるが,基本的な原価構成として,上図をしっかり理解しておくことは大切なことである。

この図から判ることは,損益分岐点が低ければ(数量が少ない方),利益が出やすく,高くなればなるほど利益が出にくいことは判るであろう。数量として何個以上売れば,利益が出るかと云うこともこの図で判る。

損益分岐点を求める式としては

損益分岐点=固定費/限界利益率  又は 損益分岐点=固定費/(1−変動費率)

などであるが,これらを暗記する必要は無い。上図が判っておれば,自然と数式が導き出される。つまり,損益分岐点は売上高と変動費+固定費の2つのグラフの交点であるから,

売上高(損益分岐点)=固定費+変動費 から

   売上高−変動費=固定費 より 両辺を売上高で割って (売上高−変動費)/売上高=固定費/売上高

   左辺は 限界利益率(=(売上高−変動費)/売上高)であるから  限界利益率=固定費/売上高(損益分岐点) だから

 売上高(損益分岐点)=固定費/限界利益率 となる

また一方,売上高(損益分岐点)=固定費+変動費 から

   売上高−変動費=固定費 より 売上高で括ると,売上高(1−変動費/売上高)=固定費 だから 

 売上高(損益分岐点)=固定費/(1−変動費率) となる

このように上図グラフを描くことができれば,損益分岐点は容易に導き出される。つまり,公式の暗記は無用で,内容のあるグラフを理解しておくことである。

損益分岐点の重要性は,その点を求めることではなく,企業活動として利益を上げる策として,@価格を上げる,A購入原価を下げる(安く仕入れる),B間接費用など固定費を削減する,などの方策を確実に実施することである。このとき,損益分岐点がポイントとなり,この点が下がれば利益が多くなることが理解できるであろう。

利益など経営数値は経理に任せてある,と技術者は技術の専念すればそれで十分だとの考え方もあるが,ノーベル賞など最先端の技術者ならともかく,民間企業の技術者,特に現場に近い技術者は,限界利益,損益分岐点など経営の一端を担う数値にも関心を持っておくべきである。少なくとも,部下を持った係長・主任以上の技術者は。

損益分岐点を理解しておこう!!

 

[Reported by H.Nishimura 2013.08.26]


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