■開発現場の悩み・問題点を解く 9 〜部下に関する悩み〜 (No.316)

プロジェクトの遅れをひとまずおいて,違う話題(現場の悩み)に移ろう。

次に,話題にするのは人間関係の悩みである。先ず,部下に関する悩みから始めよう。

  部下が思い通りに働いてくれない

仕事は一人ではできることが限られており,仲間や部下と共にすることが殆どである。したがって,仲間や部下と協調しながら進めることが大切である。先ず,そうしたときの悩みは,自分の思いと部下の考えていることが食い違っていて,なかなか思い通りに部下が働いてくれないことがよくある。もちろん,育ちや環境が違った者が集まっているので,意思疎通に微妙なズレが生じることはしばしば起こることである。

部下を持った以上は,仕事に対して的確な指示を部下にしなければならない。部下の役割をきっちりと伝達することが先ず第一である。この役割が曖昧なままだと,当然部下は役割に従って仕事をするので,その結果も望み通りのものでは無いことが起こる。自分自らが行うのではないので,多少の早さの違いは生じ,遅れが目立つといらいらすることになることがある。遅れを以て,できないと決めつけてしまうことさえある。

役割に対する部下のスキルもよく見なければいけない。役割に対するスキルが十分付いていないのに,仕事を与えてもムリな場合がある。もちろん,すべてスキルが伴った仕事を与えればよいが,必ずしもそうでない,チャレンジしてもらわねばならない仕事だってある。こうしたチャレンジングな仕事を与えて初めて人は成長する。だから,部下にやらせてみることは大切なことである。ただ,見守る心の余裕が無くてはならない。こうしたストレッチを繰り返すことで,部下が育っていく。

部下の成長を伴う好循環はいつも生まれる訳ではない。むしろ,思い通りに動いてくれない思いをする方が多いと云ってもよい。部下の性格もよく見ながら仕事を与えることである。積極果敢な前向きな性格の部下には,多少背伸びをした仕事を与え,逆に与えた仕事をやっとこなす消極的な性格の部下には,仕事量を多からず少なからず適量にして,確実にできる自信を付けさすような方法でもよい。こちらの思いが通じないのは,コミュニケーションが十分取れていないことが多い。

部下が思い通りに仕事をしてくれないことで悩みかけたら限りがない。むしろ,思い通りにはなかなか行かないもので,それを思い通りにできるようにさせるのが上司の仕事だと思えばよい。思い通りにできないのは,こちら側の部下を扱うスキルが不足しているからだと思うぐらいでよい。もちろん,中には怠け者が居て,どうしようもない部下もたまには居る。そうした場合のみ,特別扱いすればよい。それ以外の部下は,思い通りに動かせるようにするのが上司に与えられた役割だと認識しよう。

  部下に恵まれない

上司を選べないように,部下も選べることは少ない。プロジェクトなどで,スキルを持った人を集めて仕事をする場合以外,通常の組織では,これまでの延長で組織が作られるので,部下を選べるようなことはない。したがって,そのときの部下に恵まれる場合と,そうでない場合とがある。しかし,恵まれないからと云って仕事をしない訳には行かない。

先ずは,仕事に対する役割分担を明確にして,担当を明確にすることである。そうして割り当てた担当でも,役割を十分果たせないと思われる部下も出てくる。そうしたことを承知で,部下の指導の強弱をつけるのがよい。つまり,役割を任せるられると思われる部下は,自由に伸び伸びとやらせ,途中経過の報告程度で済ませ,役割が果たせないと思われる部下には,ある程度付きっきりで指導するようにする。そうすれば,できない部下も,指導を受けながらの仕事となるので,大きく外れることは無い。そうして全体の調和が取れればよい。

これまでの経験からは,部下に恵まれたこともあり,そうでないこともしばしばあった。つまり,巡り合わせで,自分がどのような仕事を任せられているかである。全体で重要な仕事をしている場合は,優秀な部下に囲まれることが多いし,重要ではない仕事を担当した場合は,優秀な部下は付けて貰えない。そのように割り切ってみると,仕事はすべて重要なものばかりではなく,巡り合わせで変化するものと思えばよい。

だから,部下に恵まれないことをくよくよすることは良くない。恵まれない部下に対しても,仕事に対してはきっちり役割分担を示し,その能力に応じて,少しでも成長するような仕事を与えていれば,少しずつ良くなるものである。自分自身の仕事にも幅ができてくるようになる。部下に恵まれないから仕事ができないと云うのは言い訳けをしていることが多い。自分に与えられた試練を乗り越えることも大切なことなのである。

部下の特徴は様々で,仕事と合っていないのでスキルが十分活かせられていないこともある。まず,部下の性格や持っているスキルを把握し,モチベーションが高まるような仕事をさせるのが一番良い。合致する仕事が無ければ,職場を変えてあげるのも一つの選択肢である。モチベーションがどうしても上がらない部下には,役割分担を明確にして,仕事を与えやらせる方法で指導するのもやり方としてはあり得る。

  部下が育たない

部下を育てることは上司としての重要な役割である。組織力を高め,ライバルとの競争に打ち勝つことは,資本主義社会では企業が成長する基本的な役目である。

部下がなかなか思い通りに育ってくれない悩みは多い。組織で仕事する以上,部下の頑張りが組織の力となる。そこで部下が育ってくれることが,即ち組織力が強くなることになる。しかし,上司の期待通りに育ってくれる部下は少ない。育つ部下はどんな上司に当たっても育つ人である。そうではない一般人をどのように育てるかが上司としての役割であるが,これがなかなか難しい。

先ずは部下に対して,その役割を明確にすることである。仕事での役割を果たすことに専念させる。それが無事に達成できれば,次の段階に挑戦させる。役割が果たせないようであれば,悪い点を指摘して直させる。或いは,良い点を持ち上げ自信を持たせて,達成できるような指導をする。こうしたマンツーマンの指導ができればよいが,上司としても忙しくなかなかそれだけに注力することは難しい。つい,適当に指導する程度に留まる。

ここが大切で,どこか全力を注ぐことがあれば,部下の方も真剣に対応せざるを得なくなる。そのような機会を作ることである。ずっと繰り返すことは無くてもよい。部下が目覚めるきっかけを作ればよいのである。中には何度指導しても思い通りにならない人も居る。それは仕方がない。組織という大きな中では人も様々で,すべてが上司の思い通りにはなってくれない。あっさり諦めることではなく,何度かのトライを試みて,ダメな場合は本人の自覚を待つのではなく,半ば強制的な指示命令で仕事をしてもらうしかない。

あなたは良い部下に恵まれていますか?

部下を思い通りにコントロールできていますか?

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[Reported by H.Nishimura 2013.04.08]


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