■重要課題と緊急問題 (No.125)

プロジェクトの話題を続けているが,今回もプロジェクトの中で起こる話題に焦点を当ててみる。

プロジェクトを進めていると,いろいろな問題点が出てきて,その対応に追われることはよくあることである。むしろ,問題も起こらず順調に進むプロジェクトなどあり得ないと云っても過言ではない。プロジェクトの規模が大きくなるとあちこちで火がつく。そうすると,その火を消すために予定外の時間を採られる。その時間は予定の工数には入っていないけれど,何とか対応しているということになっている。ところが,その問題がどんどん増えていった状態を想像していただきたい。つまり,問題を解消するだけに相当な時間を採られてしまう状態である。このようになると,当初想定されていたタスクが追いやられ,後回しにされていくことになる。つまり,スケジュールの遅れが出てくることになる。

これまでの仕事でこれは重要な仕事だとか,この問題は重要だとか,云われたり,或いは判断したことはあるだろう。また,一方で,これはいつまでにやらねばならないとか,緊急問題なので直ぐ解決しなければならないとか,云った仕事も経験されたことはあるだろう。つまり,前者の重要軸での仕事と,後者の時間(緊急)軸の仕事があり,どんな仕事(タスク)にもこの2軸が存在している。場合によっては,この二つの組合せを用いて優先度を決めたりもしている場合もある。

先ほどのように,いろいろな問題が起こっている場合は,大まかには殆ど時間(緊急)軸で判断して仕事(タスク)をしてしまっている。こうしたケースで一番問題なのは,事業計画やプロジェクトの当初計画で立てた重要課題に対する対応がなおざりにされてしまって,気づいた頃には遅しと云った事態に発生することがないか,と云うことである。時間(緊急)軸の場合,人がゆっくり考える余裕を与えず,有無を言わさずやらなくてはならない。やる方にとっては,緊急で大変だが考えることが無いので楽かもしれない。むしろ,重要課題をどのようにすべきか,どちらから攻めれば上手く行くかなど悩むことはない。また,もっと拙いのは,余り重要でない仕事(タスク)が期限間際になってしまって,重要な問題に化けることである。最初から,しっかり見据えて手をつけておれば,簡単で容易だったことでも,期限間際まで放って置いたがために重要になり,他の人の手を煩わすことまでになってしまうことさえある。

本来,重要課題(問題との区別は課題とは を参照)は,プロジェクトのゴールを目指すとき,絶対に乗り越えなければゴールに到達しないようなもので,片手間にできるものではない。きっちりした計画を基に,着実に実施しなければ実現できないことが多い。それが,緊急問題の多発で後廻しにされる場合がある。これでは,プロジェクトはゴールに到達しない。特に,リーダになる人は,この重要課題と緊急問題の区分を明確にして,特に重要課題が確実に前に進むことに気をつけなければならない。メンバーと一緒になって,慌てふためいて緊急問題ばかりに躍起になっていては,後が大変である。このように,冷静なときに聞くと何でもないことが,いざその場に直面すると,なかなかそうは行かないのが人間である。

重要課題と緊急問題とテーマで区分して示したが,一般的には,どちらも同じ“課題”として表現したり,或いは“問題”として表現される方が多い。だから同じベースで論じたり,或いは同じ土俵での扱いがなされるが,課題と問題で示したように,いくら多くの問題を解決しても,重要課題が解決されない限り,ゴールには到達しないことを,リーダは肝に銘じておくべきである。一般的に,経営で言われる,重要成功要因(Key Factor for Success)をプロジェクトでも明確にさせてゴールを目指すべきである。

*重要成功要因:経営戦略を計画的に実施する際、その目標・目的を達成する上で重要(決定的)な影響を与える要因のことで、経営目標の達成に大きな影響を及ぼす戦略・戦術上の重点な管理項目といえる。



緊急問題に忙殺されると目指すべき目標に到達しない

 

 

[Reported by H.Nishimura 2009.07.06]


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