■生産性向上策 2(No.121)

    前回に引き続き,間接の生産性向上について考える。

  人の生産性を上げる方法

技術経営とは? 4 (MOT人材とその育て方)で述べているように,人の生産性はミッション(役割),スキル(技能),モチベーション(やる気)の三つが重なった部分で最も力が発揮されるといわれている。

したがって,この三つを如何にして重ねるか,と云うことを考えれば良い。つまり,人の持っているスキル(技能)が上手くミッション(役割)と重なりある部分の仕事が与えられないか,或いは逆に,ミッション(役割)に応じたスキル(技能)を持ったリソースをあてがうか,そうしたスキルを身につけて貰うか,要するに重なり部分を大きくすることである。これは,ひいては自分の得意なスキル(技能)を仕事に活かせることで本人のやる気を益々上げることに繋がる可能性がある。或いは,仕事に非常に興味があってモチベーションの高い状態の人が居れば,自分のスキルを上手く活かすことを考えたり,足りない部分は他の人に補って貰う事を考えたり,この三つの重なりを有効に大きくしようと考えることもある。

リーダになる人は,生産性向上を目指すならば,思いつきで効果が上がる手身近な方法を列挙するのではなく,こうした人の特性を十分理解した有効な方法を検討して欲しいのである。三つの要素を如何にして上手く重ねるかを考えることは容易ではないが,上手く見つかれば非常に効果が上がる方法である。そのためにも,管理を考えるのでなく,人のやる気をどのようにして導き出すかをまず考えて欲しいものである。そうすれは,単に仕組みややり方の改善ではなく,真に効果のある方法が見つかるはずである。

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この重なりを大きくするために,リーダが先ずやらなければならないことは,ミッション(役割)を明確にさせることである。簡単なようであるが,部下が確実に役割を理解していなければいけない。組織の下で仕事をしているのだから,役割は判っているはずと思い込むのは間違っている。その時の状況によって優先される事項が変わったり,或いはリーダの思いと部下の思いにギャップがあったりと,簡単なようでも,いざと云うと役割が明確になっていないことがよくある。これが明確でないと,スキルやモチベーションと云っても,違った役割で活かそうと考えていたのでは,決して生産性が上がることはない。仕事に役割,具体的には明確な目標を与え,その目標達成に如何にスキル,モチベーションを活かそうと努力できるようにさせるか,である。

  付加価値をどれだけ付けるか

生産性向上を見方を変えると,付加価値を如何に上げるか,と云うことになる。つまり,インプットに対して仕事をすることによって生み出された成果物,即ちアウトプットが如何に大きくなっているか,と云うことである。労力を一杯掛けたとか,一生懸命残業までして頑張ったとか,自分の使った仕事量の大きさが必ずしも生産性と比例するとは限らない。

もちろん,濡れ手に粟のように何もしないで,利益を得ようとするのは論外であるが,自分の仕事量ではなく,付加価値,即ち相手が認める価値を如何に多く創造するかである。もちろん,生産性と云われる以上,付加価値を付けるためにいくら労力を払っても構わないことではない。同じ仕事量でも,付加価値を大きくすることである。

付加価値を云々すると,果たして自分たちの仕事の付加価値が正しく測れ,見えるような形になっているのか?と疑問を抱く人もいるだろう。そう簡単に付加価値が見える形で表すことは容易ではない。それを見ようとするならば,自分の成果物が顧客,又は後工程を担当する人にどれだけ喜ばれ,ありがたく思われているかを見るのが一番確実である。顧客が歓迎しないような成果物は,付加価値が少ないことであり,ひいては生産性が上がっていないことになろう。

生産性の指標はいろいろなものが使われる。生産性と云われるだけに効率が問題にされる。基準のアウトプットに対する掛かった工数などが用いられる。ただし,ここで気をつけなければならないのは基準のアウトプットである。このアウトプットが自分たちの勝手な基準になっていないか,よく見る必要がある。自分たちは十分なアウトプットと見なしていても,顧客から見ると何でもないアウトプットの数値の場合がある。やはり基準は顧客が認める付加価値に密接に関連したものが使われるべきである。そうしないと,独りよがりの生産性向上を目指すと云う,過ちとまでは行かないまでもおかしな数値が社内を独り歩きしていることがある。


間接の生産性向上は難しいテーマである

果敢にチャレンジして生産性向上(付加価値を上げる)をやってみよう

[Reported by H.Nishimura 2009.06.08]


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