■振り返り(反省)について 2 (No.087)
振り返り(反省)の続きを考える
内容(How)
振り返り(反省)の内容は様々なものがある。
普通一般的には,反省会などと云うと悪かった点ばかりを挙げることが多くなってしまう。だから,敢えて振り返りと云う場合がよくある。この振り返りでは先ずは,大きくは良かった点,と悪かった(改善すべき)点について列挙することになる。良かった点は,上手く行った理由をつきとめ,それが継続してできるようなシステム,或いはプロセスにまでなっているかどうか,を見極める必要がある。逆に悪かった(改善すべき)点に関しては,これもなぜ拙かったのか,その主原因を究明しておかないと,単なる事象の裏返しだけですませるようなことをしては役に立たない。それには,なぜ,なぜ,と繰り返し問いかけることが重要で,その事象の本質はどこにあるかを突き詰めて考えておくことが必要である。振り返り(反省)をするとなると,あれもこれもと数を多く出すことが必要と思っている人もいるが必ずしも数の多さは関係ない。数よりも質,つまり的を得た振り返り(反省)ができているかどうかが最も重要である。つまり,何を振り返るかである。ただ漫然として振り返るだけだと,自分たちの言い訳けや愚痴を言い合うだけになってしまうことにもなる。多くのメンバーで振り返りをやる場合は,特にリーダは,これだけはきっちり振り返りが必要だと思われる本質的なものをきっちり突き止めておき,議論されるようにしておくことが重要である。広く,多くの意見を集めてやることも重要だが,本質的な点を逃してしまうようなことになってはならない。特に悪かった(改善すべき)点の,どこにキーポイントがあって,それさえ直せば二度と同じような失敗が防げることが解明できたならば,それ一つでも重要な振り返りである。再発防止策が具体的に取れ,誰が見ても二度と起こらないと安心できる内容が入っておれば十分である。
振り返りにはいろいろなスタイルがあるが,若い不慣れな人だけで振り返り(反省)をやると,あれもこれもと一杯振り返り内容が出てきて,肝心のキーポイントがどこにもない,所謂,総花的な振り返りになることがある。ベテランに,「ところで再発防止,二度と起こらないと云える根拠は」と聞かれると,まともに応えられないことがよくある。これらは,本人たちが悪いのではなく,振り返りの意義,目的,そしてやり方を十分教えていない責任者,指導者の方に問題があると云える。
こうした若い人には,次のようなことを理解させることが必要である。
○振り返りの意義,目的 : 特に悪かった(改善すべき)点の最も重要なポイントがどこにあったか,主原因を解明すること。
そして,その事象が二度と起こらない対策(再発防止策)が仕組み上で出来上がっているか
○やり方 : 上記目的を果たすため,重要事象から主原因を見つけ出すまで徹底的に掘り下げること振り返りは,多くの場合,人が起こした失敗なので,原因を追及していくと,「ある特定の人のやり方が拙かった」など,個人の問題に及ぶこともあるが,個人の問題をとやかく言い出すと,気まずい関係ができてしまう。したがって,あまり個人攻撃になるようなことは避けた方が良い。かと云って,原因がぼやけて当たり前のことばかりになってしまうことも良くない。そう考えると,振り返りが仕組みやプロセスの悪さに集中してしまうことが起こる。これは,振り返りに少し慣れた人がやる場合に多い。
ところが悪かった点を仕組みやプロセスだけにしてしまうと,肝心なポイントが脱落してしまい,次のプロジェクトでも同じような失敗に陥ることがある。それは,失敗は人が起こしたことに起因する。つまり,人が失敗するのは全て仕組みやプロセスで解決できるものならばそれでもよい。必ずしもそうではないのである。人の生産性は,@役割・仕組み,Aスキル・技能,B意欲・モチベーションの三つの重なりが大きくなったところで,最も能力が発揮できるとされている。つまり,コンピテンシー(発揮能力)が最大になる。
この図は,技術経営とは? 4 (MOT人材とその育て方)で使ったものである。
この図が意味しているところは,人が何かをやって拙かったのは,この三つの重なりが上手くなっていなかったと考えるべきなのである。つまり,振り返りをやるとき,上の図で示されるモチベーション(WILL)やスキル(CAN)よりも,ミッション(役割,仕組み,プロセスなど)に集中しがちになりやすいが,実際にはそうではなくモチベーション(WILL)やスキル(CAN)にも注目しておくことが大切なのである。確かに,ミッション(役割,仕組み,プロセスなど)の方が,誰も傷つくことなく対処しやすい面がある。しかし,本当に再発防止を真剣に検討するならば,ミッションだけでは済まされない問題があることを知っておこう。特に,リーダの人は,肝に銘じておいて欲しいものである。
指導の場として
一般的に振り返り(反省)は上司が部下を指導する時にもよく用いられる。つまり,何か失敗したことを契機により成長して欲しいと願う親心でもある。また,こうした機会が一番受け止めやすいことも一つの理由である。「拙かったので反省をしなくては」と思っている本人に僅かな手を差し延べることで,十分なコーチングが可能になるのである。
また,部下が失敗した理由を自分できっちり把握できているかを知る機会でもある。事象の表面的なことに左右されているレベルなのか,そうではなく事象の本質を捉えて原因分析ができるれべるなのか,すぐ判る。逆に言えば,部下にとっては自分の実力を上司に試されている場でもあるのである。
振り返りは人の生産性の三要素から振り返ろう
振り返りは自分の実力が試される場でもある
[Reported by H.Nishimura 2008.10.06]
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