■課題解決法9 仮説検証法を使う

仮設を立て,物事を解決していくやり方は,馴染みの無い方もおられるかも知れないが,通常一般的によく用いられるやり方の一つである。厳密な使い方はしていないことが多いかも知れないが,多分これが答えでは無いかと類推して進めるやり方は,日常生活でもやっていることである。ここでは,課題解決としてどのように使うかを解説する。

  仮設検証とは?

「仮説」とは,「自然科学その他で,一定の現象を統一的に説明しうるように設けられた仮定。ここから理論的に導き出した結果が,観察,計算,実験などで検証されると,仮説の域を脱して一定の限界内で妥当な真理となる」(『広辞苑』第5版)

「仮説・検証」とは,コンサルタントなどが通常用いる方法で,何となく難しいように感じられるが,実はそうではなく,我々自身も無意識に「仮説・検証」を行っている場合も多い。端的に云えば,仮の答えを想定して,それが本当に正しい答えなのかどうかを確かめるやり方である。もちろん,仮の答えなので,正しいこともあれば,間違っていることもある。しかし,一から答えを探して求めるよりは,確実で早い方法なのである。注意しなければいけないのは,仮の答えを正しいものと信じて,それに都合の良い情報だけを取り込んで検証してしまうようなことがあってはならないのである。簡単な説明は以上だが,もう少し詳しく見ていこう。

「仮説・検証」とは,ある課題,論点に対して,仮説を構築し,次ぎにそれを検証する。さらにその検証結果に基づいて,仮説を再設定しそれを検証する。これを繰り返すことで,課題の本質や解決策にスパイラル的に迫っていく方法である。

ここで重要なことは,論点を明確に設定することである。論点の設定が不明確だと,その後の仮説・検証が上手く行かないことが起こる。良い仮説の条件とは,次のようなものである。

  1. 「論点」に対する「仮の答え」であること。
  2. なぜそう思うのか,その理由が明示されているステートメントであること。
  3. 検証,もしくは反証した結果,次の新しい「論点」が見つかるものであること。
  4. 検証,もしくは反証した結果をつなぎ合わせることで,ロジック/ストーリーが構築されること。

  仮説検証のやり方

「問題解決」のステップは,次の3つのステップで行われる。

  1. 問題の特定  : どんな「悪い現象」が起きているか
  2. 原因の深堀り : 表面的な現象から根本原因へ
  3. 打ち手の立案 : 原因に対処する方法を考え実行

ここで重要なことは,「事実(FACT)と論理(ロジック)」で,きちんと論理的につながっていることである。

「仮説・検証」とは,「最も正しい結論」を導き出す方法の一つで,“ある程度の情報を集めてその中からカンで答えを推測し,それが間違っていないと云う裏がとれれば先へ進める”と云うアプローチである。このステップは,次の5つのステップで行われる。

  1. 目 的 : 何を成し遂げたいのか正しく理解する
  2. 論 点 : その目的を達成するための議論のポイント
  3. 仮 説 : 論点に対して現状持ち合わせている情報からのヤマカンの答え
  4. 検 証 : 仮説に対してしっかりとした裏付けをとる作業
  5. 示 唆 : 検証結果から意味合いを解釈する

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目に見えない問題だからこそ,仮説を立てそれを検証するアプローチが必要。そして,「打ち手の考案」に結びつけることが大切で,これを実行して成果が出れば,仮説が正しかったことが検証されるのである。

次ぎに,「打ち手」であるが,表面的な「現象」に手を打つようでは,モグラ叩きで原因の対策案にならない。なぜなぜと根本的な原因を究明し,それに対策を打たなければ効果が出ないのであるが,現実問題,なぜなぜを繰り返すと,風土や慣習,或いはトップの責任などと言ったように問題が深すぎて「打つ手」と目的との間に因果関係が見えにくいものもある。深い問題も譲れるものと,絶対に譲ってはいけないものとを区分して,「打つ手」を考えることが大切である。何故ならば,「行動」によってのみ成果が得られるからである。浅からず,深すぎないところに「打つ手」を考えることが効果的である,と云われている。

「冷静な目」で目的や原因仮説を意識しながら,「全力」で「打ち手」を実行することが最も重要なことである。

  仮説検証の有効性

仮説検証の効用は,先ずは間違いなく仕事をこなすスピードが速くなることである。しかも,仕事の質が高くなることである。さらに,物事の全体像を掴む力が確実に向上する。これらを併せ持つことは,リーダに欠かすことのできない,先を読む力「先見性」,少ない情報で意思決定する判断力,即ち「決断力」が身に付く。

先見力と云うと,特定の人だけが先天的に身に付けている能力のように思われがちであるが,実は仮説と検証を繰り返すことによって身に付いていくものである。少ない情報で全体像を掴むことができると,仕事の効率が格段に上がる。まず,何をやるべきかがはっきりする。

  仮説検証を使ってみる

仮説検証を先ず使ってみよう。あまり難しく考えず,閃いた答えを仮設として置いて,それが答えとして合っているかどうか,調べてみよう。その仮の答えが,正しいと証明(検証)されればそれでよいし,違っていると判れば,改善した答えを次の仮の答えとすればよい。そして,また調べてみよう。

最初は情報が少ないのであやふやな状態である。しかし,あまり失敗を恐れずに仮の答えを見つけよう(閃きを大切に)。それを繰り返していると,だんだん正しい答えを見つけるようになってくるし,たとえ違っていても,次のステップで近づくと思えばよい。きっと,これまでのように,先ずいろいろ調べて(当てもなく網羅的に),それらの情報から答えを見つけ出そうとするよりも,スピードが上がっていることを実感できるはずである。

  仮設を検証してみよう

仮説の検証のための分析のコツは,先ず最小限の要素だけを急いで簡単にやるように心掛けることである。仮説検証には,一般的には,次のような定量分析を使用する。

@ 比較・差異による分析
  最も判りやすい分析で,複数あるものを比較し,その違いがどこにあるかに注目する。 
A 時系列による分析
  時間を追ってどう変化しているかを分析する方法である。 
  時には,長いスパンで見ることによって,気づかなかった実態が浮かび上がることがある。 
B 分布による分析
  相関関係があるのかないのか,あるいは特異点や異常点があるのかないのかを分析するときに使う手法である。
C 因数分解による分析
  問題を要素に分解し,本当の原因に辿り着くための分析手法が因数分解である。 
  問題をどんどん分解してゆき,最後のポイント,最も重要な原因はどこにあるのかを探す。

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  仮説検証のスキルを身に付けるには

最後に,仮説・検証のスキルを磨く方法は次のような方法である。

  1. 常にあらゆることに論点を設定し仮説を考えてみる。
  2. 5WHYを行う(なぜ,なぜを5回繰り返す)
  3. 実際にぶつけて検証する
  4. これらを「自分の頭で考える」こと

仮説検証を活用してみよう!!

仮設検証を使うことで,今までよりスピードアップするはずだ!

 

[Reported by H.Nishimura 2013.04.01]


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