■課題解決法8 リスクを管理する

リスクとは,目標に到達する道程の中で,その行く手を阻む可能性が潜んでいる要因である。したがって,このリスクを事前に予測し,未然に防止できれば,阻害要因が除去され,スムーズな道程が約束されることになる。つまり,このリスクを事前管理することが,課題を未然に解決することになるのである。

  リスクとは

リスクとは,厳密には「ある事象の変動に関する不確実性」を云い,結果,利得がある場合と損失がある場合の双方含めてリスクと云われるが,通常一般的に用いられる「リスク」とは,損失が発生する場合のことを云う。

リスクは安全との概念とも大いに関係し,「安全=リスクが小さいこと」とも云える。ここでは,リスクは危険性を意味する。

また,リスクマネジメント(リスク管理)と云って,ハザード(危害の発生源又は発生原因)や損失を予め,回避するか,もしくは低減させ,これにより想定外の損害を少なくするものである。経営管理手法として,プロジェクトマネジメントなどでは広く使われている。

  リスク管理のやり方

リスク管理は,事前管理と事後管理,つまりリスクが潜在している状態と顕在化した状態で各々対策をすることが必要であるが,事前管理がより重要であることに違いはなく,リスク管理と云えば事前管理のことを指す場合が多い。この事前管理について説明すると,先ず,リスクの抽出である。今後,予想される事象で目標達成に対してマイナスとなる事象を挙げる。ここでは,重要か否かはさておき,想定される事象をすべて挙げる方がよい。

次に,リスクの評価をする。リスクは,今後発生する恐れのある事象なので,その発生する確率が高いか,低いかを推測する。一方,発生した場合,その影響度が大きいものか,小さいものかを推測する。そして,重要度として,この二つを掛け合わせたものを定義する(重要度=発生度×影響度)。

そして,この重要度の高いものを優先して対策を考える。ここでは,具体的な対策案が重要で,誰が,いつまでに,何をするか,などを明らかにしておくことが必要で,その期日までにできたかどうかのフォローも重要となる。リスクとして挙がったものをすべて対策するに越したことは無いが,通常,重要度の高いものを選んで,必要最小限の対策は必ず行うようにすればよい。また,事前対策が必ず必要とは限らず,事後処理(発生した都度)の対応で十分と云うものもあっても構わない。

  リスク管理は難しい

ただ,よく言われることに,リスク管理をすることが決まっているのでやる,と云ったことがある。形式上,リスク管理をやっている,或いは,フォーマットが決められているので,それに記入している,と云った場合がある。リスク管理表に記入することが目的になっていることがあるが,これは全く意味がない。

起こるかも知れないことを予防するので,起こらなかったら何の成果もでないように見える。だから,上手くリスクを回避しても,評価してもらえないことがあり,モチベーションが上がらないこともよくあることである。

プロジェクトでよく見かけるのが,課題管理とリスク管理が並行して行われているが,実際に行動に移っているのは課題管理ばかり,と云うケースである。課題は,顕在化している事象なので,対策しないといけない使命がある。したがって,やらざるを得ない状況に陥る。一方,リスク管理は検討することも(重要度まで評価すること)結構面倒で,ついつい放置されがちになる。リスク管理をやらなくても,起こるときは課題となって顕在化するので,その時点でやればよい,と云う考えである。

実際,プロジェクトマネジメントを行っている場面で,リスク管理が上手く廻っているケースは多くはない。裏返せば,それだけ難しいことでもある。やれば効果はあることが頭では理解できていても,現実できていないことが多いのである。上手く成功裡に終わったプロジェクトは,大抵リスク管理が上手く廻っていることが多い。

  未然防止の有効性

リスク管理のことを述べてきたが,課題解決にどのように役立つかを述べておこう。

課題とは,目標必達に不可欠な現状とのギャップで,それを乗り越えなければならない。これらの課題はリスクではない。リスクはその進路を妨げる事象で,発生するかどうかは判っていないものである。つまり,リスクが発生すれば,その事象に対応することが不可避となり,課題以外にリスクとして起こった事象を追加して対策しなければならない。そこでは,リソースが割かれる。

リスク管理は,この発生するマイナスの事象を未然に回避,又は低減させようとすることで,未然に防止しようとすることである。通常一般に,物事は起こってから対応策を検討するより,事前に予防することの方が容易で且つ仕事量は少なくて済む。つまり,未然防止を務めることで,リソースを有効に活用する施策なのである。

リスクが発生しなかったら,余分な仕事をしたことになるではないか,と云う考え方もある。確かにその通りであるが,それは結果論であって,如何に効率よく仕事をするかであって,リスクをすべて対策してリソースをそれに充てると云うのではなく,重要度の高いものを選定して行うので,バランスを十分考慮した行動である。仕事は結果オーライではなく,仕事のプロセスが大切であり,そうした意味からも,リスク管理をきっちり廻せた進め方がベターなのである。

リスク管理が十分できているやり方は,課題解決に対しても,スムーズに行われているケースが多いのである。

リスク管理を確実にやろう!

リスク評価をして,重要度の高いものを対策しよう!

 

[Reported by H.Nishimura 2013.03.25]


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