■課題解決法1 なぜなぜを繰り返す
問題を解決するには,原因を究明しなければならない。いろいろな原因究明の分析手法があるが,最も基本的な,かつ最もよく用いられているものに,「なぜ,なぜを繰り返す」と云うものがある。
なぜ,なぜを繰り返す有効性
問題とは,一つの事象(現象)である。明らかになっている現象から,その中に潜む原因を探し出さねばならない。そこでまず考えるのが,その問題の事象(結果)に対する原因を探すことである。そうすると幾つかの原因が見つけ出される。これらが原因だからすぐ対策を検討して処置をする,と云うのは些か性急すぎる。と云うのは,確かに問題の事象(結果)に対する原因には違いないが,これもまだ現象に過ぎないことが往々にしてある。つまり,社会現象は,数学のように単純に決まるものは少なく,複雑に絡み合っている。だから,原因として見つけ出したもの,即ちそれらをまた一つの事象(結果)として,更にその原因を見つけ出すのである。
こうしたことを5回程度繰り返すと殆どのものが,真の原因にまで辿り着くと云われている。もちろん,4回目で原因まで到達するものもある。こうした,なぜ,なぜを繰り返すことによって,問題の一つの事象から,深く潜んでいる真の原因に辿り着く非常に優れた方法なのである。何しろ,事象(結果)に対する原因と云った単純な図式を繰り返すだけなので,必要な知識は殆どいらず,言葉の理解ができさえすれば,誰でもできるすぐれものなのである。こうしたやり方は衆知を集めるのに容易であり,上手く使うことで非常に有効な使い方ができるのである。
具体的なやり方
まず,問題とされる事象(現象)をトップに書き出す。その事象(結果)を生み出していると思われる要因(原因)を列挙する。そうすると幾つかの原因が見つかる。これを第2事象(結果)として,またその事象を生み出している要因(原因)を書き出してみる。これらを,下図のように順番に繰り返し,第5事象まで繰り返す。ただし,簡単に書き出せるものでなく,途中で振り返ると,結果と原因がひっくり返っていたり,第3事象で出てきた事象がよく考え直してみると,第2事象に置いた方が適切だったり,慣れない間は右往左往することがある。基本的な,「結果を生み出している原因が何か」を事象を下げて繰り返すことである。
ここでは,できるだけ考えつくだけ多くの原因を挙げる。もちろん,MECEにロジックツリーに分解されるに越したことはないが,余り意識して展開が進まないより,思いついたことを挙げた方がよい。後から全体を見直して,漏れているところを補ったり,修正したりしてまとめるよう心掛ければよい。
次に,上図の表に挙がった内容を精査する。思いついたことをそのまま列挙しているので,その内容の重要さのいろいろなものが混じっている。重要性を度外視して項目のすべてを対策すれば,万全な対策になるが,いろいろな制約があってムリである。そこでその中から,真の原因と思われる重要なものを選び出す。つまり,発散させて抽出したアイディアから重要なものを選ぶという収束させることを行う。優先順位が付けられるならば,優先度の高いものから対策を講じる。(下図参照)
現象(原因)の裏返しでは真の対策にならず−−−コインの裏返し
起こった現象に対して単に裏返しただけで解決を図ろうとすることをよく見かける。端的に云えば,販売が落ちて利益が出なくなったと云う現象が出てきたとすると,直ぐに販売を上げろと指示を出す上司がいる。尤もなことであるが,本当の解決策につながらないことが殆どである。要はなぜ販売が落ちたのか,その原因を突き止めずに,単に販売を上げろと云ってもこれでは何の対策にもなっていない。ただ,起こった現象を裏返しただけである。
販売が低下した原因が何なのか,どの部門の販売が落ちたのか,落ちた要因は何か,業界全体と比較して低下度合いは大きいのか,など,その販売低下に到った原因分析をすることから始めなければならない。それをせずに,何とか販売を上げようと,思いつくままにいろいろ努力をすることは,起こった現象に注目する余りに的確な対応ができなくなってしまっているのである。この例は極端だが,このような対策が行われていることが結構多いのである。
上図で重要なものを選び,対策する項目を絞り込むことを行ったが,ここでも重要だからと云うだけで対策に原因(現象)を裏返した対策案を掲げようとする。折角,真の原因を追及しながら,詰めの段階でこうした対策案で終わることが無いようにしたい。もちろん,最終的な目的は,その原因が除去され,発生した事象が再発しないようにしたいのだから,原因が取り除かれるような,具体的な対策案を検討することにある。根本的なところにメスを入れなければならない。なぜ,なぜの単なる言葉遊びで終わってはいけないのである。
優先度を付けるように説明したのも,効果が高く,効率よく対策をするためである。時間や費用が限られた中での対応策であり,100%の完全な対応策などあり得ない。実際問題として,ベストが良いに決まっているが,ベターなことから素早く手を打つことが重要な場合が多い。
また,自分では現象(原因)の裏返しでは無いと思ってやっていることも,違った角度から見ると同様のことになっているケースもあるので,自分の思い込みにならないように,上司や仲間からのアドバイスにも素直に耳を傾けよう。
なぜ,なぜと問い掛けることから解決が始まる
[Reported by H.Nishimura 2013.03.04]
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