■抽出法6 顧客の立場で考えてみる
顧客重視は企業人としての基本原則である。
顧客の立場で
顧客尊重,顧客重視など,企業活動の中に,顧客は重要な位置を占める。顧客を無視するようでは,企業は成り立たない。ところが,実際に企業活動をしていると,技術者であれば開発業務に従事していると,技術そのものには関心が高いが,顧客に関心を示すことは少ない。事実,開発が遅れても,上司に叱られるとか,自信を無くすとか,関心事は自己中心的であることが殆どである。顧客に迷惑を掛けたと反省する技術者は少ない。
ゴールを目指した課題を考えるときも,技術的な観点ばかりで見ることが多い。技術的な障壁を乗り越えることは必要条件であるが,これだけでは十分とは云えない。なぜなら,技術障壁を乗り越えた商品は,必ず売れるとは限らない。基礎技術や要素技術を開発している立場では,直ぐに商品化には結びつかないが,新製品開発の多くが商品化を目指している。それは市場に受け容れられることが重要である。「売れてなんぼ」とは,大阪弁の言い回しだが,商売の基本なのである。
つまり,技術要件だけでなく,顧客視点の考慮も,商品化には重要なものであり,この顧客視点からの課題も見極めておくことが必要である。決して顧客の言いなりになることではないが,顧客が訴求しているポイントを外してはならない。技術者が意外と見落としやすいことである。
顧客目線で物事を見る
新製品開発では,売れる商品開発をすることが求められる。つまり,いくら技術的に優れたものであっても,顧客が買ってくれなければ商品として市場に出回ることはない。そこで大切なことは,顧客要求を如何に的確に把握するかであり,新製品開発の最大の課題である。そこで欠かせないのは,顧客目線でものを見ることである。
顧客目線でものを見るとはどんなことか?顧客が商品を買うのは,自分のやりたいことができる,或いは快適な時間が過ごせる,など購入した商品を使ってみて,期待していた効果があるためである。顧客はそこに価値を見出し,その価値にお金を払う。その期待を裏切るようでは,商品は長続きしない。つまり,顧客がどのような期待を持って購入するのか,使い方を十分把握しておくことが大切である。開発者が製品をこのように扱って欲しいと思っていても,顧客は使い勝手が悪ければ,そうはしないことが多い。つまり,使い方は顧客に選ぶ権利がある。もちろん,誤った使い方で危険性があるようなものは,製品として成り立たない。
技術者は商品の性能を一番気にする。性能が高いこと,イコール,技術力が高いこととすることが多い。しかし,顧客にとっては,性能と同様,使い勝手が優れていることも,技術力が高いことと認識する。つまり,顧客の身になって,製品開発をしてくれていると感じる。この顧客の感覚を技術者はなかなか理解しようとしない。技術力を示すこと,即ち性能比較で優っていることしか頭にない技術者が多い。こうした,技術者の意識改革が新製品開発では大きな課題であることもよくあることである。
顧客満足度を考える
顧客満足度を一つの指標にして活動する企業もある。つまり,企業が作った製品が顧客にどのように評価されているかを知る指標の一つである。顧客満足度とは,顧客が感じ取る感覚なので,相対的な値である。その対比が,前の製品であったり,他社製品であったり,そのときの雰囲気だったり,様々なものである。だから,どちらかと云えば,絶対値的な扱いよりも,相対的な,対前年比でどうなったか,と云った見方をする方が適切だろう。
だから,傾向として顧客満足度が上昇傾向であれば,顧客に対する見方,顧客重視の姿勢など,企業として応えていることであり,逆の下降傾向であることは,顧客重視が行き届いていない,顧客要求に応じられていないことと認識すべきだろう。このことは,全社の営業や企画が把握していれば十分と云うものではない。技術者としても,市場での製品の反応がどうなのか,気にしなければいけないことである。或いは,次期製品に顧客の声を反映させ顧客満足度を上げることも必要なことである。
顧客重視とは,口で言うほど簡単ではない
企業がこぞって顧客重視を強調するのは,重要なことである以上に,顧客を重視することができていないからでもある。言葉で言うのは簡単なのだが,実際に行動することは容易ではない。企業にとって大切な顧客だが,社員一人ひとりにとっては,顧客は遠い存在である場合が多い。営業など第一線に出ている人はともかく,企業内で働いている人は,なかなか顧客の顔が見えない。だから,ついつい顧客よりも自分たちの立場のことを第一に考えることが多くなってしまうのである。
目標に対する課題を挙げるときでも,技術目標など手近なものは明確にできやすいが,顧客要求など目標の背景にあるものまではなかなか目が届かない。だから,ついなおざりにするつもりではなくとも,考える範囲からは外してしまっている。だが,本当は,ゴール(目標)の背景となる顧客の要求にも十分考慮すべきなのである。なかなか,そうはなっていないのが現状である。
顧客の立場,要求から課題を見出すことも重要なことである
[Reported by H.Nishimura 2013.02.18]
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