■抽出法2.2 現象に惑わされず,その裏にある原因を考える
我々の認識は目に見えているものに大きく左右される。それが表面的な現象であっても,その奥に潜むものまでなかなか判らない。
よくやる失敗例
「もぐらたたき」と云うことを聞いたことがあるだろう。頭を出したもぐらの頭を叩いても,そのときは一旦引っ込めても,次の機会にまた頭を出す。それをまた叩く。このようなことが繰り返されて,いつまで経っても「らちがあかない」状態のことを云う。
この「もぐらたたき」現象が,課題解決においても繰り返されていることをよく見かける。即ち,見えている現象に囚われて,その奥にある大きな要因に気がついていないために起こるのである。要するに,見えていることを「氷山の一角」とは思わないのである。これを具体的に示したのが下図である。
このように,顕在化した現象に注目して,それに対する解決策を講じているようでは,潜在化している根本にある大きな要因を取り除くことができず,いつまで経っても次から次へと,もぐらたたきを繰り返すことになってしまう。
的確に課題を抽出するには,顕在化している現象だけに囚われず,潜在化している大きな要因を見つけ出すことが重要であることを理解いただけただろう。
現象(原因)の裏返し
起こった現象に対して単に裏返しただけで解決を図ろうとすることをよく見かける。端的に云えば,販売が落ちて利益が出なくなったと云う現象が出てきたとすると,直ぐに販売を上げろと指示を出す上司がいる。尤もなことであるが,本当の解決策につながらないことが殆どである。要はなぜ販売が落ちたのか,その原因を突き止めずに,単に販売を上げろと云ってもこれでは何の対策にもなっていない。ただ,起こった現象を裏返しただけである。
販売が低下した原因が何なのか,どの部門の販売が落ちたのか,落ちた要因は何か,業界全体と比較して低下度合いは大きいのか,など,その販売低下に到った原因分析をすることから始めなければならない。それをせずに,何とか販売を上げようと,思いつくままにいろいろ努力をすることは,起こった現象に注目する余りに的確な対応ができなくなってしまっているのである。この例は極端だが,このような対策が行われていることが結構多いのである。
起こった現象はあくまでも結果としての事象であって,その裏に必ずそれを引き起こした原因の事象がある。殆どの場合,単純に一対一で因果関係が明確なものは少ない。いろいろな要因が重なり合って結果の事象を引き起こしている。根本的な原因は簡単に見つからないことも多い。そうしたことを踏まえて,起こった現象に対する原因追及を,まるでパズルを解くかのごとく,一つひとつ丁寧に分析することが大切である。
なぜ,なぜ分析をしていて,原因を探って行く。ここでも,すぐに表面的な原因(現象)と推測される事象を裏返して,対策を取ろうとすることをよく見かける。事象を裏返しただけでは言葉遊びをしているようなもので,本当の対策には結びつかない。誰もが直ぐに思いつくような表面的な浅い解決策は,原因(現象)を単に裏返しただけであることが多いので気を付けよう。
これはコインの裏返しであって,根本的な対策では無いことを知っておこう。
[Reported by H.Nishimura 2013.02.12]
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