■抽出法2.1 負のサイクルを見つけ出す

前回のなぜ,なぜと問い掛けることをしていると,元に戻ってしまう場合がある。ここでは,こうしたサイクルになる事例について考えてみよう。

  なぜ,サイクルになるのか?

なぜ,なぜの問い掛けに慣れ親しんでいない初心者のケースは別として,熟知したベテランでも根本原因を探っていて,これはと云うところに突き当たる前に,元に戻ってしまうことが起こる。これは何故だろう。

二つの原因があると云われている。先ず一つめは,抽出された各々の事象が独立しているとは限らないからである。社会事象は複雑に絡み合っていることは既に述べた通りである。したがって,ベテランでも困惑するように,結果と原因の因果関係がはっきりしていない場合が多いのである。つまり,一対一で結果と原因が双方向になることはなくても,二つ三つ事象が挟まると,結果だった事象が原因になっていることが起こる。即ち,それらの間にループが描かれ,サイクルになっている状態が出来上がる。

二つめは,結果と原因の関係が同時ではなく,時間遅れが生じて発生することがよくある。これは社会事象ではしばしばお目に掛かる出来事である。ところが,なぜ,なぜと問い掛けている状態では,結果と原因の因果関係にこうした時間軸を考慮していない。だから,実際のできごとをまとめようとすると,結果に対する原因がある一定時間前に起こっている。その原因の事象のさらに原因を突き詰めると,次の原因がこれもまたある一定時間前に起こっている。このように時間軸が入ると,最終結果の事象と,幾つかの事象を経て辿り着いた事象が時間軸ではかなり離れたものであっても,事象としては現在の結果と同じことである場合が起こりうるのである。

このように社会事象は,独立事象ではなく,且つ時間軸が入ってくるので,元の事象に戻るというサイクルが生じることが起こるのである。

  負のサイクルの事例紹介

典型的な例は,儲かっていない会社や新製品がなかなか出ないとか云ったときの例である。こうした場合,真の原因がどれだと云う決め手がなく,すべてが何らかの原因になっている。

下図の例では,大きな事象を捉えて検討しているので複数個の事象が並列に並べて表現してあるが,課題抽出でなぜ,なぜと繰り返してやる場合,一つひとつ単独事象で,サイクルになってしまう

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上図をいろいろな人に見せて意見を聞いたが,皆さん口を揃えて,自分の会社の事情をよく表していると言われた。特に,景気の良い状態では気づかないが,景気が低迷していたり,どうも新製品開発に行き詰まりが見えると云った状況下では,必ずと云ってよいほど,上図のような状態になっている。しかし,本人達はなかなか気づかず,上図を見て改めて認識を新たにするのである。

皆さんの会社は如何ですか?

  負のサイクルの重要ポイント

各々の事象が一連の関連性を保っているので,このサイクルに現れた個々の事象の中から,重要課題として抽出することは困難である。課題の解決策に繋がってしまうが,この連鎖を断ち切ることを課題として抽出することが必要になってくる。つまり,連鎖の状況をよく理解して,そのチェーンでつながれたものの中で,断ち切ることができる,或いは違った事象のトリガをどこかの部分に加えることで,サイクルを封じてしまうことを検討するのである。

そのためにも,こうした負のサイクルになっている症状を先ずはしっかり認識することから始めなければならない。

 

[Reported by H.Nishimura 2013.02.12]


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