■プロジェクトマネジメントの応用 14(ソフトウェア開発編)

  ◆コミュニケーションを図る

  @コミュニケーションの重要性

プロジェクトを成功させるのは,リーダを中心とした協力体制が欠かせない。チームプレイが上手くできないようでは成就しないのは当たり前である。そうしたチームプレイの原点は,情報の共有であり,コミュニケーションが十分取れている状態でなければならない。

つまり,プロジェクト全体がどのように進んでいるか,どこに問題点があり,それがどのように解決する動きになっているかなど,プロジェクトメンバーは割り当てられた仕事を担当するだけでなく,プロジェクト全体の状況を知っているのと知らないのでは,身近な問題に対する判断一つにも影響を及ぼす。こうした小さな一つひとつの判断の積み重ねがプロジェクトの全体の進捗に大きく影響を及ぼす。

特に,十数人を超えるプロジェクトとなると全体像を把握するのは,リーダや限られたサブリーダでしかできなくなってしまう。そうした中で,リーダとサブリーダ間でのコミュニケーションが十分でないと,サブリーダ以下のメンバーの動きが統率が取れない状況になることがある。メンバーが一生懸命働いても,全体のベクトルが合っていないとムダな働きになってしまう。こうしたベクトルが一致していないプロジェクトは,間々見かけられる。

  Aリーダの役割

コミュニケーションの善し悪しは,リーダの振る舞いに依存することが多い。通常一般に,週1回程度ミーティングをしていても,全体の統率には差が出てくる。つまり,メンバー全員が毎週集まって会合しているのでコミュニケーションは十分取れているとは言い切れない。顔を突き合わせる方がコミュニケーションが取りやすいことは事実だが,それだけでは不十分なのである。

リーダはプロジェクト全体の進捗状況を把握しながら,判断し,指揮命令しなければならないが,それを毎週の会合で実施しなければ意味がない。毎週の会合で,メンバーからの状況報告だけの繰り返しだけでコミュニケーションを図っているつもりではダメである。毎週集まる目的,内容を明確にして,メンバーのベクトルが一致して,プロジェクトの目標に向かうように,相互の意見交換ができなければならない。そして言い合うだけでなく,必要に応じて,適切な判断をし,それをメンバーに指揮命令して,統率が取れた状態にしなければならない。

プロジェクトにおいて問題が次々発生するような場合,メンバー個人のスキルに課題がある場合も無きにしもあらずだが,往々にしてメンバー間相互のコミュニケーションが十分でなく,齟齬が生じて,そこで問題になっていることがある。互いのメンバーは自分は良かれと思っている場合が多く(部分最適な状態),メンバー同士ではなかなか解決が図りづらいことがある。こうしたケースでは,リーダが双方の言い分を聞きながら,双方の話し合いの場を設け,互いが納得する解決策を講じなければならない。そうしないと,悪循環が繰り返され,プロジェクトが空回りする状態に陥ってしまう畏れがある。

プロジェクトが成功するか否かは,リーダに依存するのは当然で,毎週集まって会話しているだけのリーダと,必要なことは先送りせず素早く判断し,間違いがあればすぐ正す姿勢をもって臨んでいるリーダとは雲泥の差である。経験の差ではなく,適切な(適当な,いい加減なではなく)判断を下すことができているか否かである。

  Bメンバーの役割

リーダの指揮命令の下,与えられた役割を計画に沿って実行することが求められている。しかし,メンバーとして単に言われたことをやるだけでは十分ではなく,自ら感じ取り,やらなければならないと判断したことは,現場第一線としてきっちりやり,その内容をリーダ始め,上司に報告することは大切なことである。

自分としてやるべきことと判断しても,プロジェクト全体では優先度が低かったり,或いは部分的にやっても全体としてムダだったりすることもあるので,報告もせず自分勝手に行動することは慎まなければならない。どちらかと云えば,常に待ちの姿勢より,多少オーバーランであっても,自ら考え行動することを心掛けた方が成長する意味では有意義である。私は,開発メンバーには,前に転んで失敗するのは大いに結構,じっとして何もせず後から叩かれる,或いはタイミングを逸してしまうようなことではいけない,と常に言っている。

リーダの姿勢にもよるが,メンバー同士,プロジェクトに対して感じたこと,或いは意見など,互いに議論し合うことが必要で,そうした議論の中から解決策が見つかったり,協力し合って共に前に進んだりすることができる。自由闊達な話し合いができる雰囲気が必要である。リーダにすべて任せるのではなく,メンバー同士でリーダをバックアップするチーム作りが必要である。

  C実態把握をする

コミュニケーションの重要な役割は,話し合いの中で実態が把握できることである。いくら体裁が整った報告書でも,実態にそぐわない,わざと実態を曲げる意図はなくとも,実態が話し合いの中に出てこないようでは上手くことが進まない。

特に,コミュニケーションとして毎週テレビ会議や電話会議など,離れた委託先に依頼している内容については実態把握がなかなか難しい。ベテランのリーダといえども,現場を見ていないで上がって来る情報を基に判断しようとすると,大きな過ちを侵すことがある。大きなプロジェクトになるほど,現場から遠くなり実態把握が困難になる。こうしたとき,リーダは加工された情報だけを扱うのではなく,必要と感じたことには生のデータを要求し,そのデータから実態把握することも重要なやり方である。前回に述べた1次情報を捉えることである。

  

[Reported by H.Nishimura 2011.10.02]


Copyright (C)2011  Hitoshi Nishimura