■プロジェクトマネジメントの応用 8(ソフトウェア開発編)
◆WBSを作成する
@トップダウンでのWBSを作成する。
WBSはいきなり詳細なものが作れる訳ではない。システム仕様が決まりつつある段階では,全体日程から,主なマイルストーンを設定して,概略日程としてのWBSを設定する。これは,メンバーー人ひとりの詳細なWBSの設定は必要ではなく,トップダウンとして,全体日程と整合が取れていることが重要である。
この段階では,大まかな要員計画が立てられ,リソース確保の見通しが立っていて,プロジェクトとして,成り立つ見通しが立っていることが必要である。この大日程を基に,次の詳細WBSへ進むことになる。
DRなどプロセスが決められているが,各段階のWBSがどのレベルで必要なのか明確にさせておくことが必要で,要求仕様から企画仕様が決まった段階でのWBSでは,トップダウンレベルのもので十分である。
A ボトムアップでのWBSを作成する。
これは,メンバーー人ひとりの日々の活動が展開されたWBSのことである。日々の進捗管理として利用するもので,WP(WorK Package)としての長さは2W以内であることが望ましい。その理由は,遅れなどの管理をWP単位で管理するやり方があり,WPが大きすぎると,WPの数での遅れの管理の意味が無くなることになる。
評価など2W以上に亘るWPができるWBSを作成する場合,その部分の進捗が,別途グラフ化して進捗状況が見える化できるなど,進捗管理方法が明確になっておれば,WPが2W以上のものがあっても良い。
期間としてどの程度が必要かについては,これまでの経験知による部分が大きい。計画段階で,すべての詳細WBSができる(1年以上の期間でも)ことが,理想ではあるが,1年先のWBSが有効活用されるかとの疑問はあり,事実そのまま変更もせず利用できる例の方が珍しい。
でも,そこまでWBSができることは,工程として全工程でやるべきことが明らかになっていることで,多少の日程のズレはあっても,そのまま実行される可能性があることを意味していて,遅れが生じた場合,この初期の詳細WBSを多少の日程を修正させることで済むことになる。
このように,どの期間までの詳細なWBSを作成するかについては,正解は無い。一般的な見方としては,日程まで決まったWBSが有効なのは3カ月程度で,3カ月毎に詳細WBSは見直しするのが,実際には有効なのではないかと思われる。
B漏れ,ダブリ,偏った負担などの無いこと。
WBSに漏れやダブリがあると,折角作ったものが役立たないことが起こるので,先ずタスクの分解は,漏れやダブリの無いように慎重にやらねばならない。そして,各々のタスクに従属関係(前のタスクが終わらないと開始できないタスク)の有無についても,確実にチェックしておくことが大切である。
また,プロジェクトメンバーは限られており,メンバーの負担に偏り,或いは負荷オーバーなどがあると,計画したWBSの通りに進まないことが起こってしまう。そういう意味で,負荷ならしをして,ある程度均一した負荷がメンバー全員に掛かるようにしておくことが望ましい。ただ,何でも一律というのではなく,リーダの判断で,メンバー間で多少の負荷の違いが出ることは致し方ない
[Reported by H.Nishimura 2011.05.29]
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