■プロジェクトマネジメントの応用 5(ソフトウェア開発編)

  ◆概算見積をする

    @ 見積の基本は,仕様に基づいて,開発規模の大きさを算出することから始まる。

プロジェクトとしてのスコープが決まり,システム仕様書,機能仕様書ができた段階で,開発する規模見積が行われる。通常一般的には,前機種の実績データなどから,機能を分解して,その分解された単位の開発規模を大凡見積される。もちろん,システムの複雑さや,仕 様の暖味さで増加する可能性などは加味される。
この開発規模の見積がすべての見積の基本となるので,ある程度の精度が求められると同時に,どの程度早いタイミングで見積ができるかが,その組織の成熟度の目安にもなる。即ち,プロセスが確立,データ蓄積も十分な組織では,この概算見積がスピーディ,且つ精度が良いものができ,プロジェクトの計画が早い段階で,きっちりしたものに出来上がる。

  A 開発規模から,必要とされる工数を算出し,必要人員を見積もる。

開発規模の概算が出されると,その規模を開発する工数の見積が行われる。ここでも前機種の実績データや,これまでのプロジェクト実績の平均値的なパラメータ(標準パラメータと設定されている場合もある)が使われ,机上計算として工数が算出される。
分解された仕様書単位などで出された見積工数の合計を行い,必要人員を導き出す。
ここで,品質目標などから実施される品質施策など,必要とされる工数の見積は漏らさないようにしておかないと,実施しようとしたときにリソースが無い(要員不足)事態に陥るこ とになってしまうので,要注意である。つまり,ここで導き出された必要人員が,プロジェクトを完遂するに必要なコスト(人件費のウェートが大半)になることを知りつつ,きっちりした見積をすることが,プロジェクトの成否に関わることになる。

  B 見積もられた必要人員に対応できる要員計画が組まれなければならない。

上記プロセスで算出された必要人員に対して,準備するリソース,即ち要員計画としては,これを上回る要員確保が必要である(バッファ工程など若干の余裕が必要)。
また,ここでの必要工数は実質の工数であり,実際の稼働時間(8H/日の実質稼働時間を何時間で設定するか?)を考慮して要員計画を組まないと,稼働時間の関係で要員不足に陥るリスクがあるので要注意。
こうした一連の流れは,お互いが連携していることを十分知って行わないと,開発規模は規模だけ,工数は別途工数見積をして,また,要員計画は別のデータ,例えば,開発要員としてこれだけしかいないので,と単に計画書に必要だから計算してみた,と云うのではいけない。未熟なプロセスでは,計画書のサンプルにあるので,適当に計算して出してみただけ,と云うこともあるが,それでは何のための概算見積か,その目的が果たせていないことになる。

  C この概算見積が,改善計画作成の基となるデータになる。

プロジェクトとしての改善計画(生産性向上策など)は,上記必要工数が基本となって,それに対して改善施策が取られ,その効果をコミットメントすることになる。したがって,概算見積ではあるが,その根拠は明確にさせておくことが,後ほどの振り返りなどの際に,有効なデータとなる。
概算見積の精度を上げたい,と云った要求がときどき聞かれるが,大切なことは,見積の根拠が明確なことであって,結果的に精度が良かった,悪かったと一喜一憂するのでは,当たり外れの占いと同じで,プロジェクト・マネジメントをしているとは云えない。例え,計画と実績の差が大きくとも,はっきりとした理由があり,それらが論理的に説明が付くのであれば,そうした繰り返しをするプロセスが廻ることで,精度は確実に上がる。また,生産性なども,根拠が曖昧だと,その効果が判断できなくなる可能性が高いので,この時点で十分な根拠の明確さを出しておきたいものである。

[Reported by H.Nishimura 2011.05.02]


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