■プロジェクトマネジメントの内容 5(解説編・計画)

 ◆負荷ならしをする

役割分担を決め,日程を見積もり,クリティカル・パスを短く検討すると同時に,リソースに対する負荷の掛かり方についてもよく見ておく必要がある。

スケジュールチャートの重要性

ネットワーク化されたスケジュールチャートは,プロジェクトリーダには必要なものであり,それを上手く活用することがプロジェクトを成功させる根元にもなる。特に,スケジュールチャートの重要性は次のようなものがある。

  1. 目標までを可視化できる
  2. 予定と実績の対比が出来る
  3. すべての作業が明確になる
  4. プロジェクトの全体像が判る
  5. 重点管理がし易くなる

これらの重要性を十分認識したマネージャーは,目標を定かにした計画を基に,全体のスケジュールチャートを作り,進捗度合いをこのスケジュールチャートで管理しているし,一方,このスケジュールチャートを活用して,プロジェクトメンバー全員に全体計画が徹底され,結果として上手くマネジメントができている。最近では,コンピュータ上で簡単に,日程表が作成できるソフトもできている。

マイルストーン

スケジュールチャートの中で,いくつかの重要な期日や通過点がある。このようなポイントを「マイルストーン」と云う。一つの作業の完了すべてを取り込む必要はなく,スケジュールを簡略化し,重要な期日のみを取り込んだ要約で,トップへの報告のポイントを示し,プロジェクトメンバーには,絶対に動かせない通過点としてマイルストーンを位置づけするとプロジェクトの進捗には効果的である。

リソースに掛かる負荷の検討

クリティカル・パスを明確にし,短くする検討をする中で,担当者についても並行して全体像から見直しをする必要がある。即ち,担当者のバランスが十分取れているか,吟味が必要である。

それでは実際に負荷がどの程度掛かっているか推測するには,スケジュールチャート上に各パートの仕事にどの程度掛かるかを記入する(人・日)。その際はプロジェクトリーダが推測して入れる場合もあり,各担当者に推測させて入れる場合もある。そのようにして,各人の並行する仕事がその人の仕事量をオーバーしている期間がないかを見つけ出し,負荷がオーバーしている場合は調整をする。

例えば,全体のプロジェクトを見渡してみるとMr.Aさんが重複して,2つも3つも作業を分担することが起こっていることがある。しかし,現実にAさんの仕事量が120%程度であれば,残業などでカバーもできるが,200%を超えるような仕事量の負荷が掛かっていれば,Aさんが2人も3人もいるわけではないので,別の人に作業を担当してもらうなどの検討が必要である。

一般的に仕事の出来る人に仕事が集中する事実がある。しかし,スケジュールチャートを作っていないとそうした事実が判っていても感覚的であって,なかなか手を打つことができない。つまり,仕事を出来る人自身がクリティカル・パスになってしまっていて,プロジェクトの日程が人でコントロールされてしまっていることが起こってくる。(こういう事態はよく起こる)他の人に振り向けるだけではなく,補助者を付けることで,より効率が上がるケースもあるので,ケース・バイ・ケースでの判断が必要である。(もう一人Aさんがいてくれたら・・ マネージャーの嘆きでもある)

負荷の調整方法

  1. 作業をクリティカルでない余裕のある部分に移して,過度な負荷を取り除く。この場合,他のメンバーに過度な負荷とならないように注意すること。
  2. 作業期間をクリティカルでない余裕のある部分にまで延長調整し,過度な負荷を取り除く。この場合,他のメンバーの過度な負荷とならず,最も遅い完了日を超えないようにする。
  3. 作業期間内での負荷の軽重を調整する。
  4. 時間に余裕がある他のメンバーと担当を代える。この場合,引き受けるメンバーに適切なスキルがあることを確認する。
  5. 依存関係を組み直し,開始を早める。または,終了を遅らせる。この場合,それに伴うリスクを十分に確認する。
  6. 要員の増加,残業や時間外勤務,新技術の導入を行う。予算の増額の承認を得ることが条件。
  7. スコープ,品質を削減する。またはプロジェクトの終了期間を延期する。プロジェクトの依頼者の同意を得ることが条件。

上記1〜5の調整はプロジェクトメンバー内での調整で済むが,6,7の調整は他部門の合意を得なければならない。

調整の難しさ

新製品開発を進める中で担当者の負荷ならしの難しさは,技術難易度による負荷の度合いが容易に計数化できないことである。ベテランと新人とでは,明らかに同じ一人でも担当する者で難易度の差が出てくる。特に,新たな技術開発に於ける難易度の負荷はやっている担当者すら推測でしかないケースが多い。難易度が高くなればなるほど,その推測精度も落ちてくる。したがって,負荷ならしができたようでできていないのが実態である。この難しさはプロジェクトリーダが経験することであるが,その勘所は開発経験と技術力に依ることになる。プロジェクトを進める中でのリスク(日程が守れない)にも大いに影響ある点である。

 

[Reported by H.Nishimura 2008.03.30]


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