■プロジェクトマネジメントの内容 3(解説編・計画)

 ◆役割を分担し,所要時間を見積もる

WBSによってやるべき仕事内容が詳細に分解されたので,次はそれらをより具体的にしていく作業に入る。

役割分担をする

ここでは,WBSにて詳細に作業分解されたものについて,求められるスキルと作業量を加味して担当,及び責任者を決めることになる。会社を挙げてやるプロジェクトであれば,その能力を持った人を捜し,その担当をしてもらうことも可能であるが,通常一般では,先にメンバーが決められてしまっていることが殆どである。従って,リーダはその限られたメンバーの中での最適化を図らねばならない。時には,メンバーの中に適切な人がいないこともある。そうしたときは,早めにアウトソーシングする手を打つとか,或いはメンバーにその技術を習得させるなどの検討をしなければならない。それによって日程が大きく変わってくることを考慮しておかなければならない。

具体的な作業では,先ず第一は,ブレークダウンしたWBSに則って,タスク毎に担当者を割り付ける。通常は,限られたリソースで検討することになるので,タスクが順番に実施されるケースが多い。また,担当者が持ち合わせているスキルと合致するように割り当てなければならない。この作業自体は難しくないが,スキルを重視し過ぎると,一人にタスクが集中することにもなるので,プロジェクト全体を考えながら,リソースを配分することが必要である。次に続く,クリティカル・パスや負荷ならしがあるので,この時点では,まだ厳密な配分を考えなくてもよい。ただ,これが基本となるので,いい加減なリソース配分では困る。

作業の日程見積もりをする

次に,それらの作業に必要な日程を見積もる。役割分担により担当する人によって日程が変わるので,担当者を決めて日程を見積もる必要がある。

作業の見積もりには,作業量の把握と人を増やすことで日程が短縮できる可変時間作業と,人を増やしても日程が短縮できない固定時間作業とがあるので,それらにも配慮しながら見積もりをする必要がある。一番難しいことは,新しい技術(或いは過去に経験のない作業)への挑戦を日程見積もりするときである。日程が見積もれないとして除いてしまうと計画にならないので,これまでの経験をもとに推定日程を入れ,次に説明するクリティカル・パスなどで管理する方法をとるべきである。

或いは,新製品開発プロジェクトでは,顧客の開発スケジュールに合致しないとプロジェクトが成り立たないものもある。こうした場合は,先に顧客のスケジュールをマイルストーンとしておいて,その上で日程見積もりすることが実用的である。即ち,顧客の日程を厳守するためにリソースの配分をどのようにすれば最適化できるかを検討することになる。

具体的な作業としては,先ず分担したタスクの所要時間を見積る。リーダが担当者のスキルを考慮して,所要時間を見積もったり,前例を参考に計算したりして見積る。また,担当者に所要時間を申請させる場合もある。ここでは,開発プロジェクトなどのように同じサイクルの繰り返しのプロジェクトも多いので,前例のデータを参考にしながら見積もることは精度を上げる上では非常に役に立つ方法である。

次に,見積りされた所要時間とタスクの従属関係を明確にして,日程に割り当てる。普通一般には,上記二つの内容と同時に行われることが多い。つまり,タスクの所要時間からスケジュールを引き,続いて次のタスクを所要時間を入れて引く。並行して進められるタスクは,同時にスケジュールを引くなど,経験者であれば,自分の頭の中でスケジュールを組みながら,WBSを順番に置いていく作業になる。

また,MS−Projectのツールを活用すると,タスクと所要時間,それらに先行するタスクを入力すると,自動的にスケジュールに展開される便利なものである。このツールを使うと,初心者でもスケジュールが容易に立てられると謳い文句になっているが,使い慣れないと自分で引くスケジュールとの違和感がある場合もある。どちらかといえば初心者ではなく,ある程度スケジュール管理の経験のある人が使うことを勧めたい。

主な注意点

次に,ここで作業における注意点を述べておく。

1.部下,または実務担当者にWBSの作業をさせても良いが,リーダがその内容を吟味しておくこと

WBSの作業は細かくなる場合が殆どで,担当者に任せて作らせる場合がある。見るからに綿密なWBSが作られてくると,それだけで信用して任せ放しになることが多い。こうした場合,担当者は決してリスクのあるようなスケジュールを組むよりも,冗長性のあるスケジュールを組み立ててくる。決して自分の首を絞めるようなことは誰しもやりたくないので,当然そのような傾向になることは間違いない。そうしたとき,リーダは,立てられたスケジュールが適切かどうかをすぐさま見抜かなければならない。結果から云々するのではなく,計画段階できっちりと見極めなければいけない。このことは非常に重要なことである。

2.人が居るからそれに当てはめるような計画になっていないか

これも前述と同じ内容だが,きっちりしたWBSでも,厳密に人を割り当てることは難しい。つまり,0.7人の仕事でも,0.9人の仕事でも,或いは1.2人の仕事でも,人が居る状況で,すべて1.0人必要と丸めてしまうケースは往々にしてある。これは,人が居るからその人に充てるやり方であり,実際には微妙なところがある。この程度であれば,まだしも,人が居ることを前提に,2日でできる仕事を,他にやる仕事がないから,5日に変えてしまうようなやり方である。遊ばせる訳に行かないからそうするケースも多い。リーダはこうしたことの有無を含めて適正さを見抜かなければならない。この基本が狂っていると,後のクリティカル・パスや負荷ならしをやる意味がなくなってしまう。

3.WBSの詳細化は適切に

WBSは詳細なほどよいものではない。プロジェクトの内容にもよるが,1年程度のプロジェクトにあって,1年先まで人の割り当て時間単位での精密さがどれほど有効かを考えて欲しい。たぶん,作成することはできない話ではないが,その通り実行できるか否かを考えれば,まず否という答えになるだろう。1年も先だと,プロジェクトの環境変化などでどうなっているか判らない。変化に対応したスケジュールを立てて対応することの方が余程重要である。一般的には,リソースの人,時間など詳細なWBSは向こう3カ月程度がきっちりできておれば,それで十分だといえる。それ以上先は,詳細スケジュールまでは要らない。全く要らないのではなく,詳細版が要らないのであって,全体プロジェクトとして,どのくらいのリソースを使うのかを検討したり,人の補充を考える上では,概略のWBSは必要である。1,0の判断ではなく,その点は臨機応変に考えたいものである。

4.マージンを予め設定しておくこと

誰しも余裕のないギチギチの計画で自分の首を絞めたくない。つまり,作業に余裕を持たせたい。それが各人の作業の隅々に散りばめられると,とんでもない冗長な計画になってしまう。そうしたことを避けるためにも,リーダが全体計画の中で,はっきりとしてマージンを示すことが重要である。つまり,全員の共通のマージンである。そうすることによって,個々の作業がビッシリとした余裕が余りない計画でも全体でマージンを見てくれていると云う安心感がある。チーム運営なので,こうした些細な支えが在ると無いでは大きな差になる。リーダはプロジェクト全体から何をすべきかを考えてスケジュールを決めて欲しい。

[Reported by H.Nishimura 2008.03.30]


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