■プロジェクトマネジメントの内容 2(解説編・計画)
◆作業を分解する(WBS構築)
プロジェクトの目標が決まると,そのターゲットに対して,いつまでにどのようなことをしなければならないかについて検討することになる。
計画の良し悪しがプロジェクトの成否を決める
まず,プロジェクトリーダがプロジェクトの全貌を把握して,主なマイルストーンを定める。これが計画のスタートである。製品に組み込まれるモジュールや部品の開発の場合は,顧客の製品開発スケジュールが先に決まっていて,それに合致する計画を作らねばならないケースもある。ところが中には,プロジェクトの目標に対して全貌を見渡さず,目標はあくまでも目標であって出来ることから始めるリーダもいる。或いは,計画についても部下に丸投げのリーダもいる。後輩の育成のためとは名ばかりで,組織上では上司であっても,そんなリーダは少なくともプロジェクトリーダを返上すべきである。
計画は主なマイルストーンが決められた大日程が作られる。作るのはリーダであっても,或いはその補佐役であっても,メンバー全員がその作られた計画に同意していなければいけない。計画段階でみんなの同意が得られない計画は,必ず途中で頓挫してしまう。極端なケースはメンバーに周知徹底せずに進められるケースもあり,そうした場合にプロジェクトの進捗が上手く行かないのは明らかである。計画は初めから堅い出来る計画を立てても良いが,そうした場合,必ずしも市場や顧客の要求と一致するとは限らないことが多い。それよりも,市場や顧客ニーズを把握した中でベストな計画を立て,全員で果敢に挑戦することの方が志気を高められ結果として成果の大きなものが得られる。
大日程が決まればそれを基にして,中日程,小日程(個人ベースの計画まで)と落とし込まれて行くのが通常のやり方である。ところが,全貌できるはずのリーダが顧客の変動が多いとか,全体日程を立ててもなかなか思い通りに行かないので,大日程を立てることをせず,担当者にしきりに日程計画を押しつけるケースもある。プロジェクトから見れば,これらのケースは余程運が良ければ別だが,計画通りにプロジェクトは進まない。何故ならば,担当者の計画は必ずしもプロジェクトを全貌できる立場でもなく,個別での最適化を考えるからである。
WBS(Work Breakdown Structure)を作る
WBSは作業分解図と云い,プロジェクトが完了に必要なすべての作業を階層的に示した系統図である。即ち,個々の作業を見積もり,具体的な計画を立案し,実行する標準的な方法である。
WBSがなぜ必要なのかを理解しておくことが必要である。プロジェクトを進めるには,実際の作業活動レベルが具体的になっていなければならない。つまり,
- 業務全体の中に含まれる作業にはどんなものがあるのか。
- それらの作業を誰が,どの順序で,どのように行うのか。
- 各々の作業するに当たって必要なもの(Input)は何か。
- 各作業をやった結果(Output)はどのようなものか。
これらをWBSで明確にさせることで,プロジェクトに必要なリソースの割り出し,コスト見積もりなどができるようになるのである。つまり,WBSなしでプロジェクトを進めることは不可能なのである。
WBSを作るに当たっては,プロジェクトを先ず必要な作業を大きく分解し,さらに詳細分解して行く。順序,所要期間などは気にせず,作業日程が見積もりできる段階まで詳細に分解する。分解レベルが必ずしも均一でなくてもよい。目的は個々の作業に分解され,各々の作業の見積もりができればよい。同時に,その作業の担当者,責任者を決めておくとよい。
この一見何でもない作業をきっちりやらない,或いはできないリーダもいる。そんな計画に時間を費やしている位なら行動した方がましである,と云った考えの持ち主である。その理由は,考えることが億劫でやらないか,又は頭の中で判りきっているとタカを括っている。しかし,意外に計画でしっかり時間を掛けた方が予定通りに進むことは先人の教えの通りである。頭で判っていると云う人は,2,3人レベルの仕事ならともかく,数人以上のプロジェクトになれば各人の思いも異なり,確実に計画を立てる方が懸命である。
またその作業の分解も漏れがあっては,そこで止まってしまうことが発生する。必要な要件を漏らさぬようするには,みんなの意見を集約するやり方ではなく,大きな内容から順次分解して進める方が確実である。詳細分解するのもすべての計画(長期間にわたる計画)についてやるのは,状況が変化するなど無駄になることも多いので,まず大きなマイルストーンを決めて,その最初のマイルストーンに到達する部分のせいぜい2,3カ月分を詳細分解することが実用的である。これを2,3カ月毎に繰り返せばよい。
ただし,詳細な作業ばかりに気を取られて,全体スケジュールの中で肝心なプロセスが抜け落ちているケースがよくある。それは,プロジェクト内容が初めての経験であり,肝心なプロセスかどうかも判らない場合が多い。そうしたリスクを排除するには,同じようなプロジェクトを進めた経験者などのアドバイスを貰うのが最適である。そう言う意味でも,確実なWBS構築にはある程度の経験を要するのである。一般人の傾向としてWBSを作成すると得意なところは詳細に分解でき,不得意なところは詳細に分解ができない,或いは必要なプロセスが脱落していることが多い。
また,昨今はプロジェクトをアウトソーシング(外部委託)でやらせるケースが増えている。つまり,プロジェクト全体からWBSに分解され,その分解された部分だけを外部で請け負うパターンである。こうしたとき,WBSをきっちりやって,外部委託も含めて,全体のスケジュールがどのようになっているかを共有することが非常に重要になってきている。言われたことだけをやる外部委託から,プロジェクトを進める仲間としての仕事の進め方が重要なのである。その理由は,人が作業をしており,その効率はモチベーションに大きく左右される。つまり,外部委託も仲間として,同じようにモチベーションを高めておくことが,意義があるのである。そうした点で,WBSの構築をきっちりさせ,メンバー全員で共有しておくことが大いに役立つのである。
WBS構築の重要さをリーダはしっかりと認識してプロジェクトを進めよう!!
[Reported by H.Nishimura 2007.08.02]
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