■リーダーとしての役割
リーダーシップに関する書籍は,本屋に行けば必ず10数冊は見かける。いろいろな角度からリーダーとしてのあり方。役割が書かれているので,敢えて説明する必要は無いが,これまで技術者・責任者として感じたリーダーとしての役割とはどんなものか,述べてみたい。リーダーとは一言では表せない種々様々な立場があるが,ここでは技術責任者としてのリーダー像に焦点を当てよう。
○ビジョンで牽引する
リーダーとして必要不可欠なものは,ビジョンを持っていることである。ビジョンというと大袈裟に聞こえるかも知れないが,自分が目指そうとしている姿を明確に持っていることである。即ち,リーダーとは仲間や部下を鼓舞して牽引する役割を担っており,それには進むべき方向,将来の姿を明確に示すことが必要なのである。
リーダーになる前から,将来像を明確に持っている人も居れば,そうではなく,リーダーに選出されてから,じっくり考え,仲間と共に進むべき道を決める人も居る。どちらだって構わない。ただ,リーダーとなって振る舞う以上,目指す姿を明確に指し示すことは必要なことである。その姿とは,プロジェクトの目標達成でもよいし,組織としての理想の姿でもよいし,仲間や部下が目指す姿を共有して頑張れるようであれば十分である。
仕事の内容の指示をしたり,叱咤激励して仕事を効率よく進める,そして仲間同士が和気藹々に仕事ができる状態にする,と云ったことだけではリーダーとは云えない。仕事が上手く廻ることは必要なことだが,それだけがリーダーの役割ではない。そこには,少なくとも目指す姿,目標が明確になっており,みんながそれに向かっていることがリーダーとしては最低限必要なことなのである。
○率先垂範・統率する
リーダーは自分のビジョン・目指す方向を仲間や部下に示し,それに向かって進むように指示する。ただ指示するだけではなく,自らもその姿勢で行動し,仲間や部下を牽引する役割を果たさなければならない。
ビジョンを語り,戦略練り,部下に指揮命令を下すことは,リーダーとしての重要な役割ではあるが,それだけでは不十分である。部下が指示通り動いていても,その人物の恐怖や畏怖で動いているようでは長続きしない。リーダーの行動を見て,信頼して共に行動しているようにならねばならない。それにはリーダー自らが,ときには前線の部隊で実践の指揮をとり,自らが模範を示すことも重要なことなのである。口先だけのリーダーでは,部下も人間であり,直ぐに人柄を見抜くようになる。これでは,良き指導者にはなれない。
もちろん,何でもすべて模範を示す必要はない。時と場合,そのTPO・タイミングはある。ただ,いつでも実践で行動して指し示す心掛けは必要なことである。仲間や部下は人柄で付いていくこともある。その人柄を示すのに率先垂範することが一番適っている。
○素早い決断をする
リーダーとして一番求められるものは,素早い決断力である。リーダーの下には多くの仲間や部下が居る。進むべき方向や問題解決に当たり,どちらを選ぶべきか決めなければならない出来事はよく起こる。そのとき,リーダーが逡巡して決定を遅らせるようなことがあっては,多くの者が行く先を迷い立ち止まる。これは大きなロスである。
素早く決断することは,多くの仲間や部下を立ち止まることなく,次の行動に移すことができる。このことは,決断がたとえ間違ったとしても,直ぐ修正すれば良いのであって,リーダーが決断をせず先送りするようなことで,多くの仲間や部下が右往左往して統率が取れなくなることよりも,ずっと良いのである。
現実には,決断を渋るリーダーが多い。それだけ自分に自信が無い証拠でもある。自信の無いリーダーほど頼りないものはない。素早い判断ができることは,日頃から大局的見地に立って物事を観察できているので,それらに関する情報収集もきっちりできている。だから,判断も適切にできるのである。
○先見力・洞察力を有して前進する
リーダーは進むべき方向を的確に示さなければならない。そのためには,全体把握をした深い洞察力を以て,将来を見通さなければならない。それができないようでは,リーダーが務まらない。
特に,技術者は今までにない新しいものへの挑戦や発見・発明と云った誰もが手を付けていないことに関する仕事が多くある。新しい分野・仕事を切り拓いて行くことが重要な任務でもある。そうした技術者にリーダーに相応しいのは,先見性を持った人である。行き当たりばったりのやり方では,進むものの上手く進まず,的確な指示を出すこともままならない。行く先を素早く見通し,仲間や部下と共に目指す目標に確実に進むことができる人であらねばならない。
○部下からの信頼を得る
リーダーは仲間や部下が居て初めて成り立つ。つまり,部下からの厚い信頼を得られないような人ではリーダーは務まらない。
すべてのことに長けていることに越したことはないが,なかなかそう言った聖人君子は居ない。仲間や部下と共に目指す目標に対して,この人に付いていけば,或いは任せておけば大丈夫だと思われるようなことで十分である。もちろん,目標達成に対して,成功させる自信があることは必要条件である。
すべての仕事は人の努力で成り立っている。だから,部下がこの人のために頑張ろうと云う気持が強ければ強いほど,能力が発揮でき,目標は達成し易くなる。
[Reported by H.Nishimura 2013.04.22]
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