■なぜ,「組織責任者のあり方」と云うコーナーを設けたのか?
MOTの中に敢えてこのコーナーを設けたのはなぜか? それは私の経験からして,「企業経営」とは,組織責任者の行動の反映に他ならないからであって,組織責任者がしっかりしていない優良な会社と云うのはあり得ないからである。トップの経営者が優秀であることは企業経営の要で非常に重要なことではあるが,それを支える組織責任者(ここでは中間管理職を指す)がもっと重要であると感じている。
長年の会社勤めの経験から,真に優秀な組織責任者にはなかなか巡り会わさなかった。大企業と云われ,世間一般では超優良企業と云われる組織でも,その中で実情を具に経験して振り返ってみると,なかなか理想型にはほど遠い感じがする。全くそうでないかとも云えない。それぞれいくつかの特長はあるのだが,完全なバランスの取れた人はなかなか居ない。生身の人間がやることだから,と居直ってしまえばそれまでであるが,これから組織責任者を目指している人には,目指す理想型がどんなものかをよく理解した上で,自分のオリジナルな組織責任者になるのは有意義だろうと考えている。
組織責任者になる前後に,どの企業でも新任研修と称して,組織責任者の心得のような教育を1,2日,或いは,項目を変えて2,3回やるところが多い。もちろん,これは非常に大切な研修であるが,受ける本人の意識が,「この忙しいのにくだらん研修を人事制度で作って,とにかく受ければ良いのだろう」と云った感覚が結構多い。自ら進んで受ける人は少なく,「牛に引かれて善光寺参り」(古い例え話だが)的なところがある。そうした若者を多く見てきた。これでは研修の中身が優良であっても,その効果は推して知るべしである。
本当に必要としている人は,時間がなくても書籍や先輩からそのノウハウを学ぶ。また,研修のタイミングが合えば,効果も大きい。研修制度があれば良いが,中小の企業では必ずしもそうした制度があるとは限らない。外部機関の研修を受けたくても,時間と費用の折り合いが付かない。大企業よりも,中小の組織責任者の方が,会社の発展の運命を握っている可能性が高いかも知れない。
そこで,一部は書籍に書かれている内容でもあるが,できるだけ経験した生の声を混ぜながら,「組織責任者のあり方」を論じてみたいと考えて,このコーナーを設けたのである。
しかし,これから組織責任者になろうとしている諸君,或いはなり始めの諸君にとって,これから述べることは,頭で理解することは容易であっても,なかなか実践することは難しいことである。また,「こんな立派なことは,自分たち中小企業の人間には無理だ」とか,「こんなこと,とてもできる環境にもない」と,頭ごなしにできないことを言わないで欲しい。そもそも私の経験からしても,なかなかできていなかったことが多い。周辺を見渡してもしかりであった。ただ,云えることは,こうした基本的なことを系統立って研修,教育してもらった記憶はない。自らが,実践を通じて学び,壁にぶち当たっては先輩諸氏に学び,或いは関連した書籍から学んだのである。言い換えれば,座学だけではなかなか身に付かないと云うことである。
したがって,このコーナーは,「組織責任者としてのあり方」をまとめて紹介し,これから会社を担う重要な仕事をする諸君に,頭を整理するために利用してもらおうと考えている。昨今流行の,やり方だけを理解するHow-toではなく,考えながら実践するやり方を伝授できればと考えている。
[Reported by H.Nishimura 2007.03.19]
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