■G7広島サミット  (No.724)

G7の会合広島サミットが終了した。ウクライナのゼレンスキー大統領が来日するというトピックスがあったが,広島と云う地で,平和について十分な議論がなされたのだろうか?

  G7首脳の原爆慰霊碑献花と平和記念資料館見学

今回,地球上で唯一原爆が投下された広島で,G7の首脳が集まって開催されたことは意義があった。献花はG7なので7人かと思っていたが,9人だったので,誰がいるのかと。両端にEUの委員長と議長が参加していたのだった。

その様子はテレビなどの報道で知らされたが,詳しい内容は殆どわからない。平和記念資料館訪問の記帳があったので,それを掲載して,各々の首脳の感じたことの一端を知ることができよう。

  平和記念資料館の記帳内容(外務省のホームページから)

岸田総理大臣(記帳内容)
「歴史に残るG7サミットの機会に議長として各国首脳と共に「核兵器のない世界」をめざすためにここに集う」

マクロン仏大統領(記帳内容)(フランス語)
「Avec emotion et compassion, il nous appartient de contribuer au devoir de memoire des victimes d'Hiroshima et d’agir en faveur de la paix, seul combat qui merite d’etre mene.」
(注)仮訳:感情と共感の念をもって広島で犠牲となった方々を追悼する責務に貢献し、平和のために行動することだけが、私たちに課せられた使命です。

バイデン米大統領(記帳内容)(英語)
「May the stories of this Museum remind us all of our obligations to build a future of peace. Together-let us continue to make progress toward the day when we can finally and forever rid the world of nuclear weapons. Keep the faith!」
(注)仮訳:この資料館で語られる物語が、平和な未来を築くことへの私たち全員の義務を思い出させてくれますように。世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!

トルドー加首相(記帳内容)(英語)
「Canada pays solemn tribute to the many lives lost, the unspeakable grief of the Hibakusha, and the immense suffering of the people of Hiroshima and Nagasaki.Votre histoire restera a jamais gravee dans notre conscience collective.」
(注)仮訳:多数の犠牲になった命、被爆者の声にならない悲嘆、広島と長崎の人々の計り知れない苦悩に、カナダは厳粛なる弔慰と敬意を表します。貴方の体験は我々の心に永遠に刻まれることでしょう。

ショルツ独首相(記帳内容)(ドイツ語)
「Dieser Ort erinnert an unfassbares Leid. Heute erneuern wir hier gemeinsam mit unseren Partnern das Versprechen, Frieden und Freiheit mit aller Entschlossenheit zu schutzen. Ein nuklearer Krieg darf nie wieder gefuhrt werden.」
(注)仮訳:この場所は、想像を絶する苦しみを思い起こさせる。私たちは今日ここでパートナーたちとともに、この上なく強い決意で平和と自由を守っていくとの約束を新たにする。核の戦争は決して再び繰り返されてはならない。

メローニ伊首相(記帳内容)(イタリア語)
「Oggi ci fermiamo e restiamo in preghiera. Oggi ricordiamo che l’oscurita non ha avuto la meglio. Oggi ricordiamo il passato per costruire, insieme, un futuro di speranza.」
(注)仮訳:本日、少し立ち止まり、祈りを捧げましょう。本日、闇が凌駕するものは何もないということを覚えておきましょう。本日、過去を思い起こして、希望に満ちた未来を共に描きましょう。

スナク英首相(記帳内容)(英語)
「Shakespeare tells us to “give sorrow words”. Yet language fails in the light of the bomb’s flash. No words can describe the horror and suffering of the people of Hiroshima and Nagasaki. But what we can say, with all our hearts, and all our souls, is no more.」
(注)仮訳:シェイクスピアは、「悲しみを言葉に出せ」と説いている。しかし、原爆の閃光に照らされ、言葉は通じない。広島と長崎の人々の恐怖と苦しみは、どんな言葉を用いても言い表すことができない。しかし、私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ。

ミシェル欧州理事会議長(記帳内容)(英語)
「An immense tragedy took place here almost 80 years ago. It reminds us what we -as G7- are defending. And why we are defending it. Peace and freedom. Because it's what all human beings want most.」
(注)仮訳:80年近く前、この地は大いなる悲劇に見舞われました。このことは、われわれG7が実際何を守ろうとしているのか、なぜそれを守りたいのか、改めて思い起こさせます。それは、平和と自由。なぜならば、それらは人類が最も渇望するものだからです。

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(記帳内容)(英語)
「What happened in Hiroshima is still today haunting humanity. It is a stark reminder of the terrible cost of war - and our everlasting duty to protect and preserve peace.」
(注)仮訳:広島で起きたことは、今なお人類を苦しめています。これは戦争がもたらす重い代償と、平和を守り堅持するというわれわれの終わりなき義務をはっきりと思い起こさせるものです。

いずれの首脳も原爆の恐ろしさを身に沁みて感じ,戦争の悲惨さから繰り返すことが無いようにと綴っている。

  ゼレンスキー ウクライナ大統領の来日

来日されるとの報道は直前にあったが,緊迫した情勢下では当然のことである。被害に直面している大統領にあっては,G7の国々の支援をどれだけ頼りにされているか,この機会が各国の支援を要請する絶好の場面であり,直接訴えることができたことは,望外の喜びだったに違いない。一日も早くこの苦しみから抜け出した思いがよく判った。

ただ,被爆者の人々の見方は違っていて,一日も早く核の無い平和な世の中になって欲しい願いとは,現実的な対応の議論になってしまったことを,G7が広島で開催された意義がムダになったようで,大きな温度差があった。

 

[Reported by H.Nishimura 2023.05.22]


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