■選挙公約  (No.690)

選挙が終わり,各党の選挙公約の実行が始まっている。新型コロナ対策として,自民党と公明党の間での擦り合わせがようやく纏まったようである。

  困窮世帯への対応

自民党は,経済対策の一環として,非正規雇用者や女性,子育て世帯など,コロナで困っている人に経済的支援を行うと謳い,公明党は具体的に18歳までの子供を対象に,1人あたり一律10万円相当の「未来応援給付」を行うと謳い,与党間で調整が行われた。公明党の子供を対象に未来型の給付を主張したのに対し,自民党はコロナで困っている人を対象にした給付で,一律では無いと主張して調整が行われていた。

調整を長引かせることを嫌い,両者の主張を採り入れ,18歳の子供を対象に10万円と云うことを前提に,年収960万円以下の家庭を対象とし,裕福なコロナで困っていない家庭を除外することで,決着をみた。報道に依れば,960万円以下の家庭は,9割に及び,ほぼ給付されることだそうである。ただ,一括10万円給付ではなく,5万円の現金給付と,来春に5万円のクーポン券給付と云うことになった。

選挙目当てのバラマキと思われることを回避し,また前回の一律10万円全家庭に給付したお金が市場で使われることが少なく,貯蓄に廻ったことの反省から,半分をクーポン券とするように決められたようである。

自民党の主張するコロナで困窮している世帯への援助には,年収960万円以下とした言い訳のようなことを決めたが,これは本来の自民党が目指す主旨とは大きく違ってきている。選挙協力のお礼として公明党への配慮だが,納得できない自民党議員も多いようで,その他に,子供の対象にならない,単身者や,大学生などのコロナで生活苦に陥っている人を対象にした援助も考えられているようである。

国民全般に公平に支援することはなかなか難しいことで,コロナで休業し,倒産の憂き目にあった人が大勢居るかと思えば,その一方で休業支援金で潤って,営業している以上の儲けをしたところもあったようである。支援のスピード感と支援の公平さはなかなか簡単ではなさそうである。

  分配への期待?

岸田内閣は,安倍・菅内閣での経済対策が,企業を中心としたものに留まり,企業業績向上が,やがて国民全体の給料アップにつながるトリクルダウンが起こらなかったことの反省の基に,最大の経済対策の柱に,「成長と分配の好循環」の実現を約束している。アベノミクスの幻想を打ち破ることを掲げている。

成長なくして分配へは廻らないことは明らかで,先ずは経済成長を遂げることが優先される。つまりやろうとしていることは,アベノミクスがやったことと大きく変わりはないように見える。話題では,「1億円の壁」として,高額所得者の税率が必ずしも累進課税となっていない面を挙げ,金融所得課税を変更する検討が行われるようであるが,これだけで財源が大きくなるとはとても思えない。

また,一方,新しい資本主義として,賃上げした企業に対する優遇税制も検討対象になっていると聞くが,果たして岸田総理が描く分配がどこまで行きわたるか,まだまだ疑問も多い。ここのところ10年殆ど賃上げがなされていない日本の現状にどのようなメスが入れられ,実質的に働く人への恩恵が行きわたるようになるか,しっかり見極めたいものである。

 

選挙公約の実態?選挙対策に留まるのでは?

 

[Reported by H.Nishimura 2021.11.15]


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