■菅総理退陣  (No.686)

菅総理になった当初から,この人は一国の総理ではなく,官房長官までの人だったと述べてきたが,ピンチヒッターとしての1年,新型コロナ感染拡大の危機的な状況下で,不運だったとはいえ,総理としての言動が伴わない人だった。

  菅内閣の成り立ち

そもそも菅内閣の成立は,菅総理自身がやりたくて仕方がないほどの意欲はなく,突然の安倍総理の辞任に伴い,廻りの長老達に担ぎ上げられて,結果的に総理になった経緯がある。長年官房長官を務め,官僚達を支配下に置いたやり方でのし上がってきた人なので,総理の器としては不十分でも,ピンチヒッターとしての役割は十分果たせる人である。

成り立て当初から,発言が少なく,一国の総理としてと資質を疑っていたが,派閥の頭領などとのやりくりは官房長官時代に培ったもので一定の支持率を得ていた。デジタル庁の開設や携帯料金の値下げなど,実務的なことは上手くできていたと思うが,こと新型コロナ感染対策と云う難問,平時の時とは違う政局を乗り越えるには力不足だったと云えよう。

  菅総理の政治スタイル

菅政権での総理の特長を挙げてみると

  @ビジョンが無い

一国の総理として,日本をどのような国にしたいか,そして国民に夢を抱かせ,将来に希望を持たせるような振る舞いは,一切観られなかった。これは,そもそも何時か総理になって,日本のために何かを成し遂げたいと云った理想を持っていなく,目の前の現実を着実にこなすタイプの参謀的な振る舞いが得意な,或いは身に沁みた人で,そのことで大成したタイプだった。

  A人事権を振りかざして人を掌握

安倍政権のときからおかしくなったのは,官邸が人事権を持って,その権力で部下を掌握していたことである。良い意味で官邸が人事権を持って指示命令を統率することは良いが,安倍政権で起こったように,トップに忖度,それも悪いことと知りながらも従わざるを得ないような行動を取らせたのは,総理自身の資質である。その傘の下で,自由に振る舞ったのが菅官房長官で,それに対する批判も無視した態度で過ごせたのは官房長官だったからである。総理になった以上,矛先は総理に向かうが,自身では十分な論破はできず,間に入る官房長官も十分な力を持ち合わせていない状態だった。

人事権と云うものを身勝手に自由に振る舞うことで掌握することが,菅総理の大きな武器であったが,新型コロナ感染対策が後手後手の対応で,民意からどんどん外れ出し,支持率がどんどん下がり,来る総選挙の顔にならないと,自民党内の若手からも支持が得られなくなりつつあった。解散権と云う総理だけの権限も,廻りの長老から阻止され,四面楚歌に陥ってしまった。

  B言葉でのリーダシップが取れない

棒読み,読み間違い,最後の方は,自分の言葉での発言力が極端に悪くなっていた。元々,論客とは程遠い口べたである。無言のままやり通す手法が身に付いていたようである。官房長官時代は,上に総理がいたので,これが十分通じた。いろいろ突っ込みがあってもスルーして,最後は総理が答えるようになっていた。雄弁で無くても良いが,きっちり自分の言葉で発言し説得する力は,総理としては最低限必要なことである。

国会での答弁,ぶら下がり会見,記者団からの質問に対する応え,いずれに於いてもまともな自分の言葉での返答ができず,きまりきった言葉を繰り返すだけで,聞いている方もイライラするような答え方ばかりである。まるで,録音したかのような言葉を繰り返すだけで,まともな質疑応答になっていなかった。

  C他人(周囲)の意見を聞かない

自分の信じたことをやり通す能力には優れていたが,廻りの意見を十分受け止め,相手のことを良く理解して対応することに関しては十分だったといえるだろうか?実際に近くにいて,身を以て感じたわけではないが,報道による情報などから聞く限りに於いて,独善的な部分が目立っていた気がする。

特に,民意が判っていないと思われたのは,横浜市長選での支援した候補の大敗である。総理が応援すれば,普通は票が伸びるのが当たり前だが,応援すればするほど票が減る減少が如実に現れた。総理ともなれば,廻りからの意見などで,民意を掴むことができるはずだが,そうしたことができなかったのか?

最後には,バックにいた長老達も,十分なバックアップができないようになり,自分の意志が通じない局面に立たされてしまった。

  D強引なやり方に特長

コロナ禍が蔓延し,緊急事態になり,オリンピック・パラリンピックの開催に反対する声も大きかったが,無視して強引に強行開催に漕ぎつけた。オリンピック人気などで支持率の回復を目指したのかもしれないが,コロナ感染爆発の影響で,無観客での開催を余儀なくされ,不運だったようにも見えるが,開催意義を国民に納得させるような言動はなかった。

オリンピックでは,メダルラッシュなど,日本人の目覚ましい活躍で,コロナ禍を忘れるような感動をもたらせたが,そのようは感動の波は総理の信頼には届かず,感染の拡大だけが目立った結果に終わり,総理の期待とは裏腹な結果となってしまった。国民を納得させるような言動が無く,強引すぎるような強行突破だけが印象に残った。

  E総合的に総理の資質に欠けていた

官房長官を経て,総理の座に着く人も多い。しかし,官房長官と総理とは全く違う。それが判ってか,判らずか,総理になってもなお官房長官のままのやり方で押し通そうとし,地道な成果は多く見られたが,一国の総理としての物足りなさは,最初から最後まであった。要は総理としての資質が無かったのだと云える。

  次の総理に期待すること

いろいろな人が乱立しそうである。先ずは,自分の主義主張を十分に述べ,しっかりと総裁選を戦って欲しい。

そこで勝ち抜き,総裁になった人には,是非,国民を納得させる夢や希望(国家ビジョン)を鮮明にして,強いリーダシップでもって,この国難をみんなで乗り越える指導者になって貰いたい。安倍・菅政権での悪癖を一掃し,人事権を振り回し,官僚の忖度を求めるようなことは無くして欲しい。

野党がふがいないのが気に掛かるが,能力ある人(特に,優秀な官僚)が,その能力を最大限発揮できるような日本の政治を取り戻して欲しいものである。

次期総理に大いに期待したい!!!

 

[Reported by H.Nishimura 2021.09.06]


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