■接触確認アプリ「COCOA」の問題 (No.600)
新型コロナの感染拡大防止の一環で進められていた「COCOA」が,機能しないまま4カ月以上も放置されていたと云う,とんでもない問題が発生した。
国会でも取り上げられる大問題に
新型コロナ感染拡大が問題となっている最中,感染拡大防止に一役を担っているはずの「COCOA」が機能していなかったことが判明し,厚労大臣は基より,菅総理までもが謝る大きな問題になっている。感染者が発生したとき,「COCOA」に登録しておけば,Bluetoothを使って,「1m以内,15分以上」の利用者同士の接触をスマホに記録させ,感染した利用者が管理システムに登録すると,14日以内の接触履歴のある人に自動的に情報を伝達すると云う優れたアプリである。(Android版での不具合)
機能していなかった原因の詳細は調査中で,今月半ばまでには改善するとの報告であるが,よくも4カ月以上も放置するとは呆れ返る。そもそもこのアプリは厚労省がソフト会社に委託し,その孫請け会社が作ったそうである。ソフトウエアのバグが原因だが,9月末にバージョンアップした際の検証が不十分だったようである。簡易確認はしたが,実機での確認を怠っていたようである。
しかし,これまで使っていた人から,アプリが十分機能していない(コロナに感染した人の家族にも通知が届かないなど,不具合が指摘されていたそうである)との情報が上がっていながら,それを見過ごした責任は大きい。厚労省はアプリの設計製作はソフト会社に丸投げであっても,利用者からの問題点の指摘を放置したのは,責任は免れない。どうしてこんな最も関心の高いアプリで見過ごされたのか,大いなる疑問が残る。
ソフトウェアのバグ
ソフトウェアのバグは,あってはならないのだが,技術者が真剣になってバグが無いように作成しても,必ず見付かるもので,今回の原因は判らないが,ある条件になったときだけにエラーが発生することがよくある。それを見つけ出すのは並大抵ではなく,第三者や評価者などがあらゆる角度から検討して,世の中に出すのである。
しかし実態は,市場に出まわってから初めて発見されることがよくある。したがって,殆どのアプリは,バージョンアップなどと称して,バグに発生の対応した改良版を出し続けるのである。したがって,今回のアプリでも,実機を使った利用者からのクレームを素直に分析し,バグの修正をしておれば,何ら大きな問題になることは無かったはずである。
しかし,このような事態に陥ったのは,フィードバックが掛かる仕組みのどこかが欠落していたか,或いは孫請けの小さな会社で,バグの対応に当たる人が居なかったのか,いずれにしても一番関心の高いアプリで,バグが4カ月以上も放置されていたことは,大きな疑問として残る。技術者の確認ミスが発端かも知れないが,責任はそこではなく,バグが長期間放置されるようなことが起こった仕組みであり,それを取り仕切っていた厚労省が,どのような反省をし,再発防止に取り組めるかである。
デジタル庁ができ,益々ソフトウェアの比重が高くなってくるが,政府関係省庁でこのような事案が発生しない仕組みができるか否か,大いに関心がある。厚労省の関係者に,ソフトウェアの知識が乏しかったでは済まされない問題で,ソフトウェアの知識の有無ではなく,ソフトにはバグが付きもので,それを如何にして少なく,且つ素早いバグ対応ができる仕組みができているかを見抜く知識が重要なのである。設計の詳細は丸投げでも,仕組みの運用については全責任を持って当たって欲しいものである。
今回の問題を担当者ベースの過失に留めるのではなく,原因を深掘りして,徹底的に再発防止が図られるようにして欲しいものである。
ソフトウェアのバグは必ず発生する。その対応が重要!!
[Reported by H.Nishimura 2021.02.08]
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