■新型コロナウイルス  (No.646)

新型コロナウイルスが世界中を恐怖に貶めている。中国武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎患者が15000人を超え,死者も350人を超えたとの報道がある。死亡率は低いとはいえ,どこまで拡がるか心配である。

  対応の拙さ

マスコミの報道でしか判らないが,発生元の中国武漢での対応が適性だったのか,疑問を抱く。当初,武漢の市場で原因不明の肺炎が発生し,これまでに無いウイルスから,動物からの感染であると報じられ,人から人への感染は報じられなかった。昨年末から発生し出したようだが,どうも中国の情報がなかなか正確に伝わらないようで,実際の発生状況と報道されている状況とに乖離があったようである。

SARSのときも,中国での情報が抑えられていた経緯と同じである。WHOも状況を把握し,緊急会議を開催したが,1回目は世界的な拡がり,人から人への感染拡大について,もう少し状況をみてからと指定感染症への判断を先送りにしている。ここでも,WHO自体が中国の圧力を受け,指定を延期している。明らかに,中国の顔を伺った判断であり,科学的根拠による判断ではなく,政治的な思惑を含んだ判断になっている。

最初の時点で,指定感染症との判断が下っていれば,もう少し,早目に手を打てたことも多い。習近平国家主席が緊急対応を指示して,中国国内の患者が一気に増えたのは,明らかに国家統制下で自由な発言ができない現れの何者でもない。本来,発生時点から正確な情報が共有されていれば,対応策も早く手を打つことができ,春節の大移動による伝染の拡散を抑えることができたと想定される。

テレビで観る中国の状況は異様で,感染が拡大することが必然のような病院の混雑をみるにつけ,世界の大国にのし上がってきたとはいえ,まだまだ未発展な部分があからさまである。マスクを求める大行列も,日本の昔のオイルショックのときの様子を思い起こさせ,未成熟な国民であると思わざるを得ない。

  日本人の救出

日本政府の今回の対応は,日本人の救出に向け素早くチャーター機を手配させ,今日までに3便,直ぐにも帰国したい人達に応えたことはすごく良かったと思われる。そうではなく,中国に取り残された状態であれば,感染者も多く出て,且つ被害者も発生したかも知れないことを考えれば,適切な対応だったといえる。

今までにないことが起こったときは,多少の混乱は生じる。検査をすり抜けて帰宅した人が出たり,ホテルの部屋数が足りなく,相部屋になってしまったことなど,後から見れば何故そんな対応をと言うことになるが,緊急時の対応で不十分な部分が出たとみなしても良いのではないか。他の国の隔離状況などを聞くと,かなり厳重に行われているようだが,日本として初めて発生した事例であって,まずまずの対応だったのではなかろうか?

むしろ,済んでしまったことよりも,これからの感染者拡大を防止する策を十分に検討することが大切である。感染した菌を持ちながら無症状の人が居るなど,感染が拡大する不安要素が除けていない。如何に,これ以上の感染,2次感染から3次感染へと拡散することに対して,マスク・うがい・手洗いなどの予防注意喚起だけでは十分ではない。如何に,感染者を閉じこめ,拡散させない方法が十分なのかどうか,もっと具体的な対策方法が論じられても良いのではなかろうか?

収束するまで数カ月を要すると云われているが,7月には東京オリンピックも控え,日本での感染拡大が酷くならずに納まることを願ってやまない。

  政治主導の判断の怖さ

今回の一連の騒動を冷静に考えてみると,科学者(医療従事者)の適正な判断よりも,政治的な判断による対応の遅れが大きな要因の一つである。中国の国家統制下では致し方ないことと言ってしまえばそれまでだが,もっと正確な情報を元に科学的な判断が優先されなければならないのではなかろうか。今回の発生による分析が,科学者(医療従事者)もっと前線に出て,正確な情報を把握し,素早い的確な対応ができていれば,感染拡大はもっと少なくて抑えられたはずである。

中国の経済への影響,中国のWHOへの圧力など,政治的な圧力がどれだけあったのか定かでは無いが,トップの一声で発生者の数値が一気にはね上がる状況からして,専門家による正確な情報を元にした対応が適切に行われたとは言い難い。今回の件は,科学的な症状を科学者が適切に素早く対応できる世の中にならねばならない。最終判断は総合的な見地から政治家が判断するのは当然であるが,経済優先的な政治的判断よりも,人命優先の科学者の適切な意見が述べられ素直に反映されることが大切である。

 

新型コロナウイルス感染が大きく拡がらないで納まることを願う

 

[Reported by H.Nishimura 2020.02.03]


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