■日本の技術力  (No.636)

韓国との輸出規制の問題で,日本の半導体製造に関わる材料が日本の技術の高さを証明し,日本の材料無くしては半導体の製造の将来は危ういことを示してくれた。我々一般人は,GAFAに代表されるような世界を席巻している超優良企業に目が行き,日本の技術が遅れていることを心配しがちだが,必ずしもそうではない。

  GAFAの台頭

昨今の流行はGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)に代表されるIT産業の台頭である。デジタル化が進み,ネット社会になった今日ではGAFAの存在が大きく,我々の生活の一部を支配してしまっていると言えよう。しかも,アメリカだけではなく,世界中を席捲しており,その利益は莫大で,税金の徴収方法が問題になっている。

デジタル化が進む前,20世紀では未だネット社会にはなっておらず,日本固有のアナログの精巧な技術が優位性を持ち,日本の技術,特にAV機器などの素晴らしい先端技術が世界のトップを走り,経済大国の一翼を担う存在だった。しかし,デジタル化とネット社会に対応する技術,特にソフトウェア技術の部分での出遅れが致命傷となり,今日のGAFAに圧倒されてしまったと言える。

ハードウェアの優秀な技術を持って優位性を保っていたことが裏目となり,ソフトウェア技術への転換のスピードを見誤ったのである。そもそも,ハードウェア技術とソフトウェア技術とは根本的な違いがあり,またその新たな創造の仕方も異なり,日本人特有のコツコツ粘り強く技術の真髄を深める技術よりも,新たな発想,しかも広い視野で以て,将来を見通した技術を駆使したものへの対応が十分でなかったことによるものである。日本の特長が邪魔した結果とも云える。

  日本の技術の素晴らしさ

確かに,世界を見渡すとネット社会の拡がりは大きく,どこでも,誰でもが容易に参画でき,GAFAがここまで大きくなったのは当然の結末である。残念ながら,日本の企業の中でGAFAと競い合いができるところは無い。日本は完全にこの分野では遅れてしまっている。しかしながら,かといって日本の技術力が劣化して行ったと言うわけではない。日本の良さのハードウェアを中心とする技術は根深く,世界各国を見渡しても,まだまだ誇れるものは一杯残っている。

その一つが,今回韓国との関係で話題になった半導体製造に関する材料である。詳しく無いので,詳細は述べないが,半導体の製造,特に特殊な新しいものを作り出すには,日本でしか作れない高精度な材料を必要とし,半導体製造でトップを行く韓国は,現状量産されている製品には支障は無いようだが,日本の材料無しには高精度な半導体製造が困難なようである。こうした実態は,今回問題が発覚して初めて知ったことである。

組み立て方式の製造では,コモディティ化が行き渡り,賃金の安いところに太刀打ちはできず,日本が優位に立つことはなかなか難しく,電気製品などの製造は日本から離れてしまっている。自動車の組み立ては,随分ロボットが活用され,日本でなくても製造が可能になっているが,単なるアッセンブリ(組み立て)とは異なり,ノウハウを持った技能工が必要とされ,日本らしさの擦り合わせが残った製造であった。

また,部品を組み合わせる製造ではなく,原材料から高精度・小型化・高品質の材料や部品を創り出す分野では,まだまだ日本の技術力の高さを強調できるものがある。新しい製品の中心は高性能・高精度の半導体が占めることは多いが,その周辺に必ず電子部品が必要とされる。それらの多くは,まだまだ日本の技術力が活かされた小型・高精度な部品である。

材料分野でも,先端材料開発やナノテクノロジーなど,日本の特長を活かした技術開発が行われており,次世代の製品に必要とされる新たな材料開発が盛んに行われている。利益貢献と云う面ではまだまだ小さなものであるが,コツコツ地道な研究開発の裾野は広く,世の中への貢献では,まだまだ日本の技術力を必要とされている。

日本の技術者たちよ,まだまだ自信を持って技術に磨きを掛けて欲しい!!

 

[Reported by H.Nishimura 2019.09.16]


Copyright (C)2019  Hitoshi Nishimura