■輸出規制 (No.633)
日韓の問題の輸出規制に関することについて述べる。
輸出するにあたり(外為法)
日韓で輸出に関する話題が出ているが,何となく判っているようであるが,詳しくは判らないと云うのが一般人の心境であろう。安全保障貿易管理として,武器そのものや軍事転用可能な民生品の製品や技術が,テロ組織や大量破壊兵器の開発をしている国へ出て行かないように輸出を規制しているのである。
日本の安全保障貿易管理は,外国為替及び外国貿易法(外為法(ガイタメホウ))で行われており,規制貨物(製品・部品材料)と規制仕向地が決められており,それらに該当する場合には経済産業大臣の許可が必要であり,こうした仕組みによって国際平和と安全が担保されている。これらは,2002年4月にキャッチオール規制(補完的輸出規制)と呼ばれている。
キャッチオール規制
国際的な平和と安全を維持するために,国家による大量破壊兵器の開発や製造,通常兵器の過度な蓄積を阻止するもので,国際的に決められた制度で,昔のCOCOM(ココム)(後述)を継承したものである。
キャッチオール規制はリスト規制(明らかな破壊兵器など)以外のものでも,輸出しようとする貨物や提供使用とする技術が,大量破壊兵器などの開発・製造・使用・貯蔵,又は通常兵器の開発・製造・使用に用いられるおそれがある場合,経済産業大臣の許可が必要となる制度のことである。
対象製品が極めて広範囲に及び管理が大変であるが,輸出する製品には必ず製品分類のHSコードが付けられており(輸出統計を採る際に重要なので),このHSコード分類で規制の対象が第25類〜第40類など,以下数十分類になっており,これらで規制対象かどうかが判るようになっている。
今回の規制対象品,レジスト(HSコード:3707.90),エッチングガス(HSコード:2811.11),フッ化ポリイミド(HSコード:3911.90-300)であり,輸出統計から,エッチングガスが韓国向けシェア 91.2%でダントツであり,これによる影響が一番大きいとされている。
ここでホワイト国と云う国が出てくる。これは輸出管理優遇措置対象国で,アメリカを始め,ヨーロッパ21カ国など現在27カ国あり,アジアでは唯一韓国だけが入っている。このホワイト国には,キャッチオール規制が対象外となっており,国際輸出管理の枠組みで管理が厳格に行われており,兵器の拡散を行わないことが明白であるから,こうした優遇措置をとっているのである。
今回,韓国は国際輸出管理の枠組みで管理が厳格に行われていないことが判り,ホワイト国から除外,通常一般国の扱いとされるようになったのである。
COCOM(ココム)
私が技術者だった頃にあった制度で,対共産圏輸出統制委員会(ココム)で,冷戦期に資本主義諸国を中心に構成され,ソ連など共産主義諸国への軍事技術・戦略物資の輸出を規制したものである。日本は1952年に加盟している。
新しい製品(部品),特に高精度,高純度なものができると,製品品番を登録し,ココム対象品か否かの判定が必ず行われていた。大半の民生品は対象外だったが,部品はいろいろなものに活用されることから,注意が必要だった記憶がある。
冷戦が終結し1991年にソ連が崩壊するとココムの意義が薄れ,1994年に解散し,兵器輸出規制協定はワッセナー協約に引き継がれた。このワッセナー協約などの国際輸出管理の枠組みのもとで,キャッチオール規制が定められている。
安全保障管理は国際的にも非常に重要なものである
韓国への今回の処置は当然のことで,騒がれるようなものではない
[Reported by H.Nishimura 2019.08.05]
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