■技術の進化 4 自動車の進化  (No.618)

自動車の進化も目を見張るものがある。すべてが機械で動く自動車だったが,計器類から始まり,どんどんエレクトロニクス化が進み,エンジンコントロールがコンピュータで行われるようになり,大容量の電池が搭載され,ハイブリッド化,更にはガソリンを使わない電気自動車が走る時代になった。

  エレクトロニクスが入り込む

機械中心で動いていた自動車業界に,エレクトロニクスが入り出した初期の頃(1970年代)に,自動車業界に携わる仕事をしていた経験がある。エレクトロニクス化の始まりは,当初からのバッテリーやランプを除くと,オルタネータ(交流発電機)の整流ダイオードが早くから採用されていたが,その程度で,電子機器の先駆けはインスツルメントパネル(表示メータ類)から始まっている。機械式のタコメータ(エンジン回転計)を電子式のメータにすることだった。エンジンプラグの火花を入力信号に取り込み,その回数を積算してメータとして表示させるものだった。

その電子式タコメータが普及すると,今度はフロントにあるスピードメータを含むインスツルメントパネル全体の電子化だった。現在電子部品としては主流のチップ型の抵抗器やコンデンサーは,初めはラジオなど民生機器には採用されていた。自動車業界ではエレクトロニクス化と云っても電子部品はリード線があるディスクリートタイプで構成された電子機器(メータ)だった。それを,インスツルメントパネル全体の電子化を思い切って,チップ型の電子部品を採用すると云う大胆な試みだった。これは上手く搭載され実用化された。

続いては私が担当はしていないが,当時排気ガス規制が叫ばれ,1970年代後半には,エンジンのコントロールパネルのエレクトロニクス化も着々と進み,エンジンコントロールにマイクロコンピュータが搭載されるようになり,エレクトロニクス化も本格的になって行った。1990年代には,安全・快適制御系のシステムとして,ABS(アンチロックシステム)・エアバック・カーナビゲーションなどの開発が進み,これにも一部ではあるが,私自身開発に携わっている。

  ハイブリッド化

排気ガスの削減を目指したものとして,1990年代にはハイブリッド車が開発され,「プリウス」に代表されるハイブリッド車が出回ったのは1997年である。この頃になると,機械式だった自動車が,エレクトロニクスが必要不可欠なものとなり,詳しい数字は判らないが,機械設計者だけでなく,電気・電子設計者が多く採用されるような時代へと移り,電気自動車へ進む道程が見えてくるようになっていった。

トヨタ自動車のデータでは,全体コスト占める電子部品の割合が,1980年代は僅か3%程度だったものが,2005年には20%にまで増加し,更に2015年以降には40%にまでなっていると云われている。要は,自動車に電子部品は必須のパーツになって行ったのである。

  電気自動車

未だ完全な電気自動車は少ないが,センサー類,制御システム,情報システム,車載LANなどのエレクトロニクスが,自動車全体を席捲してきており,自動車が機械中心だった時代は完全に過ぎ去ってしまっている。ネットに繋がった情報機器が走っている時代になってくるとも云われ,自動車の面影が大きく変わろうとしている時代である。クルマは「走るコンピュータ」と言ってよいほどになってきている。

進化はどんどん進み,繋がるクルマやコネクテッドカーを,「4つのタイヤが付いたスマートフォン」「走るスマートフォン」に例えられるようにまでなってきている。どこまで進むか,末恐ろしい感覚でもある。

  安全装備

また,安全面での充実も進んでいる。私が乗っている車も,安全装置として自動停止機能が搭載されており,車が衝突しそうになると,先ず警報音が鳴り,運転者に注意を促し,それでも気づかない場合は,スピードを落として止まる機能がある。もちろん,停止まで行ったケースには遭遇していないが,前の車が左折するときや急ブレーキを掛けたようなときは,警報音で気づかされるケースはある。

また,安全制御の一つとして,ウインカーを示さず車線を示す白線に近寄りすぎると警報が鳴るようになっており,これらも自動運転制御への一環のように感じている。自動運転走行の様子はマスコミなど通じて目にし,自動運転が公道で行われるのも間近なように感じている。

自動車の進化から目が離せない!!

 

[Reported by H.Nishimura 2019.02.25]


Copyright (C)2019  Hitoshi Nishimura